尿路上皮がんに対するアテゾリズマブ単剤および化学療法との併用に関する治験

治験名

未治療の局所進行又は転移性尿路上皮癌患者を対象とした,ATEZOLIZUMAB(抗PD-L1抗体)単剤及びプラチナベース化学療法との併用の第III 相多施設共同ランダム化プラセボ対照試験

治験概要

未治療進行性の尿路上皮がん患者さんを対象に、アテゾリズマブの化学療法併用と単剤投与を化学療法と比較する、第3相ランダム化試験です。

疾患解説尿路上皮がん

尿路がんは、膀胱、尿管、腎盂、尿道にできたがんの総称です。このうち最も発生頻度の高いのが、膀胱がんです。尿路がんの約95%は尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生し、尿路上に多発したり、再発を繰り返すのが特徴です。尿路上皮組織から発生するがんを尿路上皮がんといいます。

厚生労働省大臣官房統計情報部の人口動態統計によると、膀胱がんによる死亡数は、2002年に5138人、2006年に6126人、2010年に6804人、腎盂がんによる死亡数は2002年に781人、2006年に1200に人、2010年に1558人、尿管がんの死亡数も2002年に852人、2006年に1105人、2010年に1593人と増加傾向にあります。

膀胱がんの主な自覚症状は、血尿と頻尿、排尿時の痛みなどがありますが、早期にはこうした症状がないこともあります。

腎盂・尿管がんで最も多い症状も血尿です。尿管がふさがったり、がんが周囲へ浸潤した場合は、腰、背中、脇腹などに痛みがおこることがあり、尿管結石に似た症状が起こることがあります。

低リスク単発、初発、3cm未満、Ta、ローグレード、上皮内がん併発なしのすべてを満たす
中リスクTa-1、ローグレード、上皮内がん併発なし、多発性あるいは大きさが3cm以上
高リスクT1、ハイグレード、上皮内がん(上皮内がん併発も含む)、多発、再発のいずれかを含む

出典:日本泌尿器学会,編:膀胱がん診療ガイドライン2015年版,医学図書出版,2015.

出典:日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011 年4月(第1版),金原出版.より作成

治験薬アテゾリズマブ

アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。

免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。

がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • プラチナベースの化学療法に適応だと治験責任(分担)医師に判断された患者さん
  • ECOG PS <= 2の患者さん
  • 組織学的に確認された局所進行(T4b、Nは問わない;またはTを問わず、N2-3)または転移性(M1、IV期)の尿路上皮がん(腎盂、尿管、膀胱、尿道を含む尿路のTCCまたはUCC とも呼ばれる)を有している患者さん
  • 代表的なホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍検体を含むパラフィンブロック(推奨)または未染色スライド15枚以上を、関連する病理報告書とともに中央検査用に提供でき、それらが試験登録前の腫瘍PD-L1発現スコアの評価に使用可能と判断された患者さん
  • 手術不能な局所進行/転移性尿路上皮がんに対する化学療法の前歴がない患者さん
    尿路上皮がんに対する術前/術後補助化学療法または化学放射線療法の施行歴がある患者さんの場合、転移に対する治療歴なしとみなされるには、最後の治療日から再発を認めた日までの間に12か月を超える無治療期間がなくてはいけません。膀胱内投与による局所化学療法または局所免疫療法の施行歴は、それらが治験薬投与開始の4週間以上前に終了していれば、許容されます。
  • RECIST v1.1の定義による測定可能病変がある患者さん
  • 治験薬初回投与の前28日以内の主要臓器機能が基準を満たす患者さん
  • 妊娠可能な女性患者さん:投与期間中およびカルボプラチン、シスプラチン、またはゲムシタビンの最終投与後少なくとも6か月間、およびアテゾリズマブの最終投与後少なくとも5か月間は、異性間性交を控えること、または年間失敗率1%未満の避妊法を使用することに同意する患者さん
  • 男性患者さん:異性間性交を控えること、または避妊方策を講じること、および精子提供を控えることに同意する患者さん
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:男女
対象とならない人
  • 治験薬の投与開始前3週間以内に既承認の抗がん療法(化学療法、ホルモン療法を含む)を受けた患者さん
  • 登録前の28日間に何らかの治験薬を投与された患者さん、あるいは治療を目的とした別の臨床試験に参加している患者さん
  • スクリーニング時またはそれ以前の画像検査で、コンピューター断層撮影法(CT)/磁気共鳴画像法評価により確認された、活動性または未治療の中枢神経系(CNS)転移がある患者さん
  • CD137アゴニスト、抗CTLA-4/抗PD-1/抗PD-L1抗体薬、または経路標的薬の投与歴がある患者さん
  • サイクル1、Day1の前2週間以内に副腎皮質ホルモンの全身投与、またはその他の免疫抑制剤(例:プレドニゾン、デキサメサゾン、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイド、抗腫瘍壊死因子[TNF]薬等)の全身投与を受けたか、治験期間中に免疫抑制剤の全身投与が必要になると予想される患者さん
  • 度重なるドレナージ(月1回以上)を必要とするコントロール不能な胸水、心嚢液貯留、腹水を有する患者さん
  • コントロール不能な腫瘍関連疼痛のある患者さん
  • 左室駆出率(LVEF)< 40%のが既知である場合を含む、重大な心血管系疾患のある患者さん
  • ランダム化前4週間以内の重度の感染症または2週間以内の経口/静脈内抗生物質の治療的投与歴がある患者さん
  • ランダム化前4週間以内に大手術を受けたか、治験期間中に診断以外の目的による大手術が必要になると予想される患者さん
  • サイクル1、Day1の前5年以内の尿路上皮がん以外の悪性腫瘍の既往がある患者さん
  • 12週間以上の生存が期待できない患者さん
  • 妊娠中、授乳中、または治験期間中に妊娠する意思がある患者さん
  • 血清アルブミン<25g/Lの患者さん
  • キメラ抗体、ヒト化抗体、または融合タンパク質に対する高度のアレルギー反応、アナフィラキシー反応、その他の過敏症反応の既往歴のある患者さん
  • CHO細胞内で産生されるバイオ医薬品あるいはアテゾリズマブ製剤の成分に対する既知の過敏症またはアレルギーのある患者さん
  • 自己免疫疾患の既往歴のある患者さん
  • 同種幹細胞移植または臓器移植の前歴がある患者さん
  • 特発性肺線維症(肺臓炎を含む)、薬剤誘発性肺臓炎、器質化肺炎(閉塞性細気管支炎、特発性器質化肺炎)の既往歴、またはスクリーニング時の胸部CTスキャンによる活動性肺臓炎の所見がある患者さん
  • HIV検査陽性の患者さん
  • 活動性のB型肝炎またはC型肝炎を有する患者さん
  • 活動性結核を有する患者さん
  • サイクル1Day1の前4週間以内に弱毒生ワクチンを投与された患者さん

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、米国の腫瘍学の団体(ECOG)が決めた全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。

PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、日本国内では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP) 」という厳しいルールに基づき、行われています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで進められます。治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを正しく理解しましょう。

試験詳細

試験の名称未治療の局所進行又は転移性尿路上皮癌患者を対象とした,ATEZOLIZUMAB(抗PD-L1抗体)単剤及びプラチナベース化学療法との併用の第III 相多施設共同ランダム化プラセボ対照試験
試験の概要未治療進行性尿路上皮癌患者を対象とし,atezolizumab の化学療法併用と単剤投与を化学療法と比較する,第III相ランダム化試験である。
疾患名尿路上皮癌
試験薬剤名MPDL3280A
用法・用量1200 mgを21日サイクルの1日目に点滴静注
試験薬剤名パラプラチン
用法・用量AUC 4.5 mg/mL*minとなるように21日サイクルの1日目に点滴静注
試験薬剤名ジェムザール
用法・用量1000 mg/m^2を21日サイクルの1,8日目に点滴静注
試験薬剤名ブリプラチン
用法・用量70 mg/m^2を21日サイクルの1日目に点滴静注
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン多施設共同ランダム化プラセボ対照
目標症例数1200
適格基準
  • プラチナベースの化学療法に適応であると治験責任(分担)医師により判断されること
  • ECOG PS <= 2
  • 組織学的に確認された局所進行(T4b,N は問わない;又はT を問わず,N2-3)又は転移性(M1,IV 期)の尿路上皮癌(腎盂,尿管,膀胱,尿道を含む尿路のTCC 又はUCC とも呼ばれる)を有していること
  • 代表的なホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍検体を含むパラフィンブロック(推奨)又は未染色スライド15枚以上を,関連する病理報告書とともに中央検査用に提供でき,それらが試験登録前の腫瘍PD-L1発現スコアの評価に使用可能と判断されること
  • 手術不能な局所進行/転移性尿路上皮癌に対する化学療法の前歴がないこと
    尿路上皮癌に対する術前/術後補助化学療法又は化学放射線療法の施行歴がある患者の場合,転移に対する治療歴なしとみなされるには,最後の治療日から再発を認めた日までの間に12カ月を超える無治療期間がなくてはならない。膀胱内投与による局所化学療法又は局所免疫療法の施行歴は,それらが治験薬投与開始の4週間以上前に終了していれば,許容される。
  • RECIST v1.1の定義による測定可能病変があること
  • 治験薬初回投与の前28日以内の主要臓器機能が基準を満たすこと
  • 妊娠可能な女性:投与期間中及びカルボプラチン,シスプラチン,又はゲムシタビンの最終投与後少なくとも6カ月間,及びatezolizumab の最終投与後少なくとも5カ月間は,禁欲(異性間性交を控えること)するか又は年間失敗率1%未満の避妊法を使用することに同意すること
  • 男性:禁欲(異性間性交を控えること)又は避妊方策を講じること,及び精子提供を控えることに同意すること
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 治験薬の投与開始前3週間以内に既承認の抗癌療法(化学療法,ホルモン療法を含む)を受けた患者
  • 登録前の28日間に何らかの治験薬を投与された患者,あるいは治療を目的とした別の臨床試験に参加している患者
  • スクリーニング時又はそれ以前の画像検査において,コンピューター断層撮影法(CT)/磁気共鳴画像法評価により確認された,活動性又は未治療の中枢神経系(CNS)転移を有する患者
  • CD137アゴニスト,抗CTLA-4/抗PD-1/抗PD-L1抗体薬,又は経路標的薬の投与歴がある患者
  • サイクル1,Day 1の前2週間以内に副腎皮質ホルモンの全身投与,又はその他の免疫抑制剤(例:プレドニゾン,デキサメサゾン,シクロホスファミド,アザチオプリン,メトトレキサート,サリドマイド,抗腫瘍壊死因子[TNF]薬等)の全身投与を受けたか,治験期間中に免疫抑制剤の全身投与が必要になると予想される患者
  • 度重なるドレナージ(月1回以上)を必要とするコントロール不能な胸水,心嚢液貯留,腹水を有する患者
  • コントロール不能な腫瘍関連疼痛を有する患者
  • 左室駆出率(LVEF)< 40%のが既知である場合を含む,重大な心血管系疾患を有する患者
  • ランダム化前4週間以内の重度の感染症又は2週間以内の経口/静脈内抗生物質の治療的投与歴がある患者
  • ランダム化前4週間以内に大手術を受けたか,治験期間中に診断以外の目的による大手術が必要になると予想される患者
  • サイクル1,Day 1の前5年以内の尿路上皮癌以外の悪性腫瘍の既往を有する患者
  • 12週間以上の生存が期待できない患者
  • 妊娠中,授乳中,又は治験期間中に妊娠する意思がある患者
  • 血清アルブミン < 25 g/L である患者
  • キメラ抗体,ヒト化抗体,又は融合蛋白質に対する高度のアレルギー反応,アナフィラキシー反応,その他の過敏症反応の既往歴のある患者
  • CHO 細胞内で産生されるバイオ医薬品あるいはatezolizumab 製剤の成分に対する既知の過敏症又はアレルギーを有する患者
  • 自己免疫疾患の既往歴を有する患者
  • 同種幹細胞移植又は臓器移植の前歴がある患者
  • 特発性肺線維症(肺臓炎を含む),薬剤誘発性肺臓炎,器質化肺炎(閉塞性細気管支炎,特発性器質化肺炎)の既往歴,又はスクリーニング時の胸部CT スキャンによる活動性肺臓炎の所見がある患者
  • HIV 検査陽性である患者
  • 活動性のB 型肝炎又はC 型肝炎を有する患者
  • 活動性結核を有する患者
  • サイクル1 Day1の前4週間以内に弱毒生ワクチンを投与された患者
主要な評価項目
  • 無増悪生存期間(PFS)
  • 全生存期間(OS)
  • 有害事象発現率
  • 主要な評価方法RECIST v1.1, NCI-CTCAE v4.0
    副次的な評価項目
  • 奏効率(ORR)
  • 奏効期間(DOR)
  • 1年生存率
  • 1年無増悪生存(PFS)率
  • 全体的健康状態の悪化までの期間
  • 身体機能悪化までの期間
  • Atezolizumabの薬物動態パラメータ
  • 抗薬物抗体発現率
  • 主治医評価によるPFS
  • 副次的な評価方法RECIST v1.1, EORTC QLQ-C30
    予定試験期間2016年6月~2020年7月

    出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより