ステージ4非小細胞肺がんに対するアベマシクリブの治験

治験名

JUNIPER:KRAS変異を有し、白金製剤を含む化学療法後に増悪した4期の非小細胞肺がん患者を対象として、ベスト・サポーティブ・ケア併用下でアベマシクリブとエルロチニブを比較する無作為化 第3相試験

治験概要:

ステージ4の非小細胞肺がんの治験。KRAS遺伝子変異があり、プラチナ製剤を含む化学療法後に増悪した患者さんが対象です。
ベスト・サポーティブ・ケア併用化で、アベマシクリブとエルロチニブを比較して、全生存期間と無増悪生存期間により有効性を評価する第3相試験です。
ベストサポーティブケアは、抗がん剤など積極的な治療を行わず、痛みや苦痛などの症状をやわらげ、QOLを高める医療のことをいいます。
登録予定数は450人。
試験デザインは、ランダム化、パラレル割付。
フェーズは、第3相臨床試験。
比較する対象は
治験群:アベマシクリブ+ベスト・サポーティブ・ケア
対照群:エルロチニブ+ベスト・サポーティブ・ケア
で主要評価項目は、全生存期間、副次的な評価項目は、無増悪生存期間などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:アベマシクリブ

アベマシクリブは、細胞分裂の制御を不能にしているサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6を選択的に阻害する分子標的薬です。
細胞の分裂は、S期→G2期→M期→G1期というサイクルで行われています。がん細胞ではこのG1期からS期への移行が過剰に活性化されているため、無限に増殖していきます。
この活性にかかわるのがCDK4/6という酵素です。CDK4/6とサイクリンDという因子で複合体を形成することで、活性化するため、アベマシクリブがCDK4/6を阻害することで、この複合体の形成も阻害し、がんの増殖を抑制します。

治験薬:エルロチニブ

エルロチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシキナーゼ(TKI)を標的とした分子標的薬です。
細胞の表面に発現しているEGFRと上皮成長因子(EGF)が結合することで、チロシンキナーゼという酵素が活性化しシグナルが伝達され細胞が増殖します。
EGFRに変異が起こり常に活性化していると無秩序な細胞の増殖が起きます。
エルロチニブは、EGFR-TKIを選択的に阻害することで、がん細胞の増殖を抑え抗腫瘍効果を発揮します。
EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対するEGFR-TKIは、現在4剤あります。ゲフィチニブ、エルロチニブは第1世代、アファチニブは第2世代、オシメルチニブは第3世代のEGFR-TKIです。

主な治験参加条件

対象となる人
  • ステージ4期の非小細胞肺がん患者
  • KRAS遺伝子のコドン12または13に検出可能な変異がある患者
  • 白金製剤を含む化学療法後に増悪し、進行および/または転移性病変に対して、さらに別の1種類の化学療法による治療を受けた、または医師により追加の標準化学療法を2次治療として実施することが不適格であると判定された患者
  • 固形がん治療効果判定基準で測定可能病変がある患者
  • 全身状態(performance status:PS)スコアが0~1 の患者
  • すべての抗がん治療(化学療法、放射線療法、免疫療法、および治験治療など)を終了し、治験薬の投与開始日までに骨髄抑制作用のある薬剤の場合21日以上、骨髄抑制作用のない薬剤の場合14日以上経過している患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 適応症を問わず未承認であり、骨髄抑制作用のない薬剤または骨髄抑制作用のある薬剤の投与をそれぞれ治験薬の初回投与前14または21日以内に受けた患者
  • 原因不明または心血管に起因する失神または失神に至る寸前の状態、心室性不整脈、または突然心停止のいずれかの既往がある患者
  • 中枢神経系転移がある患者。中枢神経系転移歴または状態の安定した中枢神経系転移は許容される(ステロイド剤などの積極的治療をこれ以上必要としない)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称JUNIPER:KRAS変異を有し、白金製剤を含む化学療法後に増悪したIV 期の非小細胞肺癌患者を対象として、ベスト・サポーティブ・ケア併用下でabemaciclibとエルロチニブを比較する無作為化 第III相試験
試験の概要KRAS遺伝子変異を有するステージ4の非小細胞肺癌の患者を対象として、LY2835219の薬効を評価
疾患名非小細胞肺癌
試験薬剤名LY2835219
用法・用量LY2835219 200mgをカプセル剤として12時間ごとに経口投与する
対照薬剤名エルロチニブ
用法・用量エルロチニブ150mgを錠剤として24時間ごとに経口投与する
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン
目標症例数
適格基準
  • American Joint Committee on Cancer癌病期分類ハンドブックに基づくIV期NSCLCの確定診断を有する患者
  • JPBK試験の集中測定機関で用いられる診断キットによりKRAS遺伝子のコドン12又は13に検出可能な変異を有すると判定された患者
  • 白金製剤を含む化学療法[維持療法の有無は問わない]後に増悪し、進行及び/又は転移性病変に対して、さらに別の1種類の化学療法による治療を受けた、又は医師により追加の標準化学療法を二次治療として実施することが不適格であると判定された患者
  • 固形がん治療効果判定基準(RECIST v1.1)に定義される測定可能病変を有する患者
  • Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のperformance status(PS)スコアが0~1の患者
  • すべての抗癌治療(化学療法、放射線療法、免疫療法、及び治験治療など)を終了し、治験薬の投与開始日までに骨髄抑制作用のある薬剤の場合21日以上、骨髄抑制作用のない薬剤の場合14日以上経過している患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 適応症を問わず未承認であり、骨髄抑制作用のない薬剤又は骨髄抑制作用のある薬剤の投与をそれぞれ治験薬の初回投与前14又は21日以内に受けた患者
  • 原因不明又は心血管に起因する失神又は失神に至る寸前の状態、心室性不整脈、又は突然心停止のいずれかの既往を有する患者
  • 中枢神経系転移を有する患者。CNS転移歴又は状態の安定したCNS転移は許容される(ステロイド剤などの積極的治療をこれ以上必要としない)
主要な評価項目
主要な評価方法
副次的な評価項目
副次的な評価方法
予定試験期間

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより