ステージ1B~3AのALK陽性非小細胞肺がんに対するアレクチニブの治験

治験名

1B(腫瘍径4cm以上)~3A期の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性非小細胞肺がんの完全切除患者を対象に、術後補助療法におけるアレクチニブとプラチナ製剤併用化学療法の有効性および安全性を比較する第3相非盲検ランダム化試験

治験概要:

ALK陽性の非小細胞肺がんを対象とした治験。ステージ1B~3Aで、がんを完全切除した患者さんが対象です。
術後補助療法としてアレクチニブとプラチナ製剤併用の化学療法を比較して、無病生存期間や全生存期間などで評価する第3相試験です。
登録予定数は255人。
試験デザインは、ランダム化、実薬対照、多施設共同、非盲検試験。
フェーズは、フェーズ3(第3相臨床試験)。
比較する対象は
治験群:アレクチニブ
対照群:シスプラチン、ビノレルビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、カルボプラチン
で主要評価項目は、無病生存期間、副次的評価項目は全生存期間などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。 肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。 特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:アレクチニブ

アレクチニブは、ALK融合遺伝子を選択的に阻害する分子標的薬です。ALK融合遺伝子は、非小細胞肺がんの約5%の患者さんにみられます。ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんで、ALK阻害薬に対して抵抗性や不耐容がある患者さんに対して承認された第2世代のALK阻害薬です。
ALK融合遺伝子は、ALK遺伝子とほかの遺伝子が融合してできる特殊な遺伝子で、ALK融合たんぱくをつくります。このたんぱく質の作用により、がん細胞を刺激することでがんの増殖、生存、血管新生が起こります。アレクチニブは、ALK活性を抑制することで、がんの増殖や生存、血管新生を抑制します。
ALK遺伝子転座陽性の非小細胞肺がんに対する1次治療では、パフォーマンスステータス(PS)の違いによりクリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブの使い分けが「肺癌診療ガイドライン」で推奨されています。
PS0-1の場合、3剤使用可能ですが、推奨度はアレクチニブ、クリゾチニブ、セリチニブの順です。PS2-4の場合は、アレクチニブが推奨されています。

対照薬:シスプラチン

シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

対照薬:カルボプラチン

カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。

対照薬:ビノレルビン

ビノレルビンは、細胞分裂に必要な微小管という成分に作用して抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。微小管を構成するチュブリンとうたんぱく質の結合を阻害することで、がん細胞の増殖を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。

対照薬:ゲムシタビン

ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。
ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。

対照薬:ペメトレキセド

ペメトレキセドは、細胞分裂に必要な葉酸に構造が類似している葉酸代謝拮抗薬です。
葉酸代謝拮抗薬の中でも、3つの酵素を阻害し主要な葉酸代謝酵素経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑え強い抗腫瘍効果を発揮します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 4~12週間前に非小細胞肺がんの完全切除を受けている
  • ステージ1B(腫瘍径4cm以上)~3A期(T2-3 N0、T1-3 N1、T1-3 N2、T4 N0-1)の非小細胞肺がん
  • ALK陽性が確認されている
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0または1
  • 造血器機能および腎機能が保たれている
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 妊娠中または授乳中の女性
  • 全身化学療法の投与歴がある
  • ALK阻害剤の投与歴がある
  • 最近5年間に他の悪性腫瘍の既往歴がある
  • 吸収不良症候群または大規模な腸切除後の状態などの胃腸障害がある
  • 症候性徐脈がある
  • 臓器移植の既往歴がある
  • HIV陽性またはAIDS関連疾患が確認されている

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称IB(腫瘍径4cm以上)~IIIA期の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性非小細胞肺癌の完全切除患者を対象に、術後補助療法におけるアレクチニブとプラチナ製剤併用化学療法の有効性及び安全性を比較する第III相非盲検ランダム化試験
試験の概要未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性非小細胞肺癌の完全切除患者を対象に、プラチナ製剤併用化学療法を対照群として、術後補助療法におけるアレクチニブの有効性及び安全性を評価する
疾患名非小細胞肺癌
試験薬剤名アレクチニブ
用法・用量1回600mg 1日2回経口投与(24カ月間)
試験薬剤名シスプラチン、ビノレルビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、カルボプラチン
用法・用量プラチナ製剤併用化学療法レジメンの1つを、1サイクル21日間として4サイクル投与する。 シスプラチン;第1日目に75mg/m^2を静脈内投与 ビノレルビン;第1日目及び第8日目に25mg/m^2を静脈内投与 ゲムシタビン;第1日目及び第8日目に1250mg/m^2を静脈内投与 ペメトレキセド;第1日目に500mg/m^2を静脈内投与 カルボプラチン;シスプラチンに忍容性の認められない患者にて使用
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザインランダム化、実薬対照、多施設共同、非盲検試験
目標症例数255
適格基準
  • 登録の4~12週間前にNSCLCの完全切除を受けている
  • 組織学的にIB(腫瘍径4cm以上)~IIIA期(T2-3 N0、T1-3 N1、T1-3 N2、T4 N0-1)のNSCLCと診断されている
  • FDA承認及びCEマークのある検査に従いALK陽性が確認されている
  • ECOG PS 0又は1
  • 造血器機能及び腎機能が保たれている
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 妊娠中又は授乳中の女性
  • 全身化学療法の投与歴を有する
  • ALK阻害剤の投与歴を有する
  • 最近5年間に他の悪性腫瘍の既往歴を有する
  • 吸収不良症候群又は大規模な腸切除後の状態などの胃腸障害を有する
  • 症候性徐脈を有する
  • 臓器移植の既往歴を有する
  • HIV陽性又はAIDS関連疾患が確認されている
主要な評価項目無病生存期間 (DFS)
主要な評価方法主治医判定
副次的な評価項目全生存期間(OS)
薬物動態
安全性:有害事象の発現率
副次的な評価方法 OS:観察
安全性:NCI CTCAE v5.0
予定試験期間2018年7月~2026年9月

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより