急性骨髄性白血病に対するグアデシタビンの治験
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治験名
前治療歴を有する成人の急性骨髄性白血病(AML)患者を対象としたグアデシタビン(SGI-110)と医師選択による治療法の治療効果を比較する第3相、多施設共同、無作為化、非盲検試験
治験概要:
前治療歴がある急性骨髄性白血病に対する治験。シタラビンやアントラサイクリンなどによる標準的な化学療法を用いた初回寛解導入療法による治療を受け、難治性または再発した成人患者さんが対象です。
グアデシタビンと医師の選択による治療法を比較して、全生存期間で評価する臨床試験です。
登録予定数は400人。
試験デザインは、多施設共同、非盲検、無作為化試験。
フェーズは、第3相臨床試験。
比較する対象は
試験群:グアデシタビン
対照群:医師の選択による治療法
で主要評価項目は全生存期間、副次的な評価項目は、無イベント生存率などで評価します
疾患解説:急性骨髄性白血病
白血病は、血液細胞ががん化する血液のがんです。
白血病は、造血幹細胞のうち骨髄系とリンパ系の2つと症状の違いによる急性と慢性の2つの分類から、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分類されます(表1)。
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に白血病に罹患した人は、約12000人です。
急性骨髄性白血病は、年間10万人に2~3人程度が発症するといわれ、高齢になるほど増加します。
急性骨髄性白血病は、未熟な血液細胞が何らかの原因の遺伝子異常によりがん化し、無制限に増加することで発症します。骨髄中の白血病細胞がWHO分類で20%以上、FAB分類で30%以上になると急性骨髄性白血病と診断されます。
急性骨髄性白血病の主な症状は、正常な血液が作られなくなることで起こるものと腫瘍化した細胞が臓器に浸潤して現れるものがあります。
正常な白血球が作られなくなるとウイルスや細菌などに対する抵抗力が低下し感染症にかかりやすくなります。赤血球の減少は、倦怠感、動悸、息切れといった症状がでます。血小板の減少は、鼻血がでたりあざができやすくなり、出血しやすくなります。
臓器に浸潤すると、肝臓や脾臓が腫れ、お腹が張ったり痛みが起こります。骨に浸潤すると、腰痛や関節痛、髄膜への浸潤では頭痛がおこります。
表1 白血病の主な分類
骨髄性 | リンパ性 | |
急性 | 急性骨髄性白血病 (AML: acute myeloid leukemia) | 急性リンパ性白血病 (ALL: acute lymphoblastic leukemia) |
慢性 | 慢性骨髄性白血病 (CML: chronic myelogenous leukemia) | 慢性リンパ性白血病 (CLL: chronic lymphocytic leukemia) |
治験薬:グアデシタビン
グアデシタビンは、次世代の低分子DNAメチル化阻害薬です。注射用デシタビンと比べ、体内で長く作用するようにデザインされている少量を皮下注射する薬剤です。
がん細胞では、DNAのメチル化が活性しているため、がん抑制遺伝子が抑制されています。グアデシタビンは、DNAの低メチル化を誘導することで、がん抑制遺伝子を発現させることで、抗腫瘍効果を発揮します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
---|---|
0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
Child-Pugh分類
Child-Pugh分類は、肝障害度を示す指標です。脳症、腹水、血清ビリルビン濃度、血清アルブミン濃度、プロトロンビン活性値の5項目を1~3点で評価し、その合計点によりA~Cの3段階に分類します。もっとも障害度が低いのがA、高いのはCです。
ポイント | 1点 | 2点 | 3点 |
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脳症 | ない | 軽度 | ときどき昏睡 |
腹水 | ない | 少量 | 中等量 |
血清ビリルビン値(mg/dL) | 2.0未満 | 2.0~3.0 | 3.0超 |
血清アルブミン値(g/dL) | 3.5超 | 2.8~3.5 | 2.8未満 |
プロトロンビン活性値(%) | 70超 | 40~70 | 40未満 |
A | 5~6点 |
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B | 7~9点 |
C | 10~15点 |
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 前治療歴を有する成人の急性骨髄性白血病(AML)患者を対象としたグアデシタビン(SGI-110)と医師選択による治療法の治療効果を比較する第3相、多施設共同、無作為化、非盲検試験 |
試験の概要 | 前治療歴を有する成人急性骨髄性白血病(AML)患者を対象に、 グアデシタビンと医師選択による治療法(TC)の全生存期間(OS)を比較し評価する |
疾患名 | 急性骨髄性白血病 |
試験薬剤名 | グアデシタビン |
用法・用量 | 60mg/m2を1日1回1~5日目及び8~12日目(初回サイクル)に皮下投与する |
対照薬剤名 | 中用量又は高用量のキロサイド |
用法・用量 | 1~1.5g/m2を12時間ごとに投与又は最高6g/m2/日を最長6日間投与し、1サイクルで最大36g/m2とする |
対照薬剤名 | ノバントロン+サンド+キロサイド |
用法・用量 | ミトキサントロン6~12mg/m2を静脈内投与(推奨用量8mg/m2)、エトポシド80~200mg/m2を静脈内投与(推奨用量100mg/m2)、シタラビン1000mg/m2を静脈内投与。いずれも1日1回5日間(1~5日目)投与 |
対照薬剤名 | 低用量のキロサイド |
用法・用量 | 20mgを1日2回(1~10日目)皮下又は静脈内投与 |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 多施設共同、非盲検、無作為化試験 |
目標症例数 | 400 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 全生存期間:無作為化日から死亡日までの日数 |
主要な評価方法 | Kaplan-Meier法により示し、無作為化層別因子で層別したlog-rank検定を用いて全体の両側αレベル0.05で2つの治療群間を比較する |
副次的な評価項目 | EFS:無作為化から原疾患の悪化、治療中止、代替の白血病治療(HCTは除く)開始、又は死亡のうち最も早いイベントまでの日数 無作為化から1年後の生存率(また、被験者の長期追跡調査を実施して2年生存率を推定する) NDAOH 輸血非依存率:治験治療開始後のいずれかの時期で8週間にわたり赤血球(RBC)輸血若しくは血小板輸血を受けなかった被験者の数に基づき算出 国際ワーキンググループ(IWG)2003年修正版AML効果判定規準によるCR率 CRc(CR + CRi + CRp)率 HCT率(HCTを受けた被験者は、幹細胞生着までの期間、HCT後100日目死亡率についても評価する) CR持続期間(初回CR到達から再発までの期間) EQ-5D-5Lによる健康関連QOL[EQ-5D-5L記述システム及びEQ視覚的疼痛評価スケール(EQ VAS)] 有害事象の発現率及び重症度 30日目及び60日目の全死因を含む死亡率 |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2017年10月~2019年6月 |