未治療の急性骨髄性白血病に対するグラスデキブの治験
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治験名
未治療の急性骨髄性白血病患者を対象としたグラスデキブと強力化学療法またはアザシチジンの併用と強力化学療法またはアザシチジン単剤療法を評価する無作為化、二重盲検、多施設共同、プラセボ対照試験
治験概要:
未治療の急性骨髄性白血病に対する治験。強力な化学療法による寛解導入の適応となる患者さんが対象です。
強力化学療法として、グラスデキブ+シタラビン+ダウノルビシン併用療法とプラセボを比較して評価します。さらに、強力化学療法による寛解導入が適応とならない患者さんに対しては、非強力化学療法としてグラスデキブ+アザシチジン併用療法とプラセボを比較して評価する臨床試験です。
登録予定数は720人。
試験デザインは、無作為化、二重盲検、他施設共同、プラセボ対照試験。
フェーズは、第3相臨床試験。
比較する対象は
治験群1:グラスデキブ+シタラビン+ダウノルビシン併用療法
治験群2:グラスデキブ+アザシチジン併用療法
対照群:プラセボ
で主要評価項目は全生存期間などで評価します。
疾患解説:急性骨髄性白血病
白血病は、血液細胞ががん化する血液のがんです。
白血病は、造血幹細胞のうち骨髄系とリンパ系の2つと症状の違いによる急性と慢性の2つの分類から、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分類されます(表1)。
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に白血病に罹患した人は、約12000人です。
急性骨髄性白血病は、年間10万人に2~3人程度が発症するといわれ、高齢になるほど増加します。
急性骨髄性白血病は、未熟な血液細胞が何らかの原因の遺伝子異常によりがん化し、無制限に増加することで発症します。骨髄中の白血病細胞がWHO分類で20%以上、FAB分類で30%以上になると急性骨髄性白血病と診断されます。
急性骨髄性白血病の主な症状は、正常な血液が作られなくなることで起こるものと腫瘍化した細胞が臓器に浸潤して現れるものがあります。
正常な白血球が作られなくなるとウイルスや細菌などに対する抵抗力が低下し感染症にかかりやすくなります。赤血球の減少は、倦怠感、動悸、息切れといった症状がでます。血小板の減少は、鼻血がでたりあざができやすくなり、出血しやすくなります。
臓器に浸潤すると、肝臓や脾臓が腫れ、お腹が張ったり痛みが起こります。骨に浸潤すると、腰痛や関節痛、髄膜への浸潤では頭痛がおこります。
表1 白血病の主な分類
骨髄性 | リンパ性 | |
急性 | 急性骨髄性白血病 (AML: acute myeloid leukemia) | 急性リンパ性白血病 (ALL: acute lymphoblastic leukemia) |
慢性 | 慢性骨髄性白血病 (CML: chronic myelogenous leukemia) | 慢性リンパ性白血病 (CLL: chronic lymphocytic leukemia) |
治験薬:グラスデキブ
グラスデキブは、ヘッジホッグ経路に関わるSMOを標的とするヘッジホッグ経路阻害薬です。
ヘッジホッグシグナル伝達経路は、生体にとって形態形成や細胞増殖をコントロールする重要な経路です。受容体のPTCHに特異的に結合するヘッジホッグと隣接するたんぱくのSMO、経路の下流にあるGLIで構成されています。ヘッジホッグ経路の異常な活性化は、がん幹細胞の発生と持続にかかわるとかんがえられています。
グラスデキブは、この経路のうちSMOを標的とすることで、ヘッジホッグ経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。
治験薬:シタラビン
シタラビンは、細胞増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)です。
細胞増殖を行うためにはDNAの合成が必要です。DNAは主にアデニン、グアニン、シトシン、ミチン、ウラシルという5つの成分で構成されています。
シタラビンは、このうちシトシンという物質と似た構造をしています。がん細胞が増殖するため、DNA合成を行うとき、シトシンと間違えてシタラビンを取り込むことで、DNA合成が正しく行えず、がん細胞の増殖が阻害されます。
治験薬:ダウノルビシン
ダウノルビシンは、アントラサイクリン系の殺細胞性の抗がん剤です。
細胞の増殖には、遺伝情報伝えるためにDNAやRNAの合成が必要です。アントラサイクリン系の抗がん剤は、細胞内のDNAに結合することで、DNAやRNAの合成を阻害し、DNA鎖を延長させる酵素であるDNAポリメラーゼを阻害したり、DNA鎖を切断します。こうした作用により、抗腫瘍効果発揮します。
治験薬:アザシチジン
アザシチジンは、DNAメチル化阻害薬です。
がん細胞では、DNAのメチル化が活性しているため、がん抑制遺伝子が抑制されています。アザシチジンは、DNAのメチル化を誘導することで、がん抑制遺伝子を発現させることで、抗腫瘍効果を発揮します。また、細胞の基となるたんぱく質の合成を妨げることで、異常細胞の増殖を抑制します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 未治療の急性骨髄性白血病(AML)患者を対象としたグラスデキブ(PF-04449913)と強力化学療法またはアザシチジンの併用と強力化学療法またはアザシチジン単剤療法を評価する無作為化、二重盲検、多施設共同、プラセボ対照試験 |
試験の概要 | 強力化学療法による寛解導入の適応となる未治療のAML患者を対象に、グラスデキブとシタラビンおよびダウノルビシンの併用を評価する(強力化学療法コホート) 強力化学療法による寛解導入の適応とならない未治療の成人急性骨髄性白血病(AML)患者を対象に、グラスデキブとアザシチジンの併用を評価する(非強力化学療法コホート) |
疾患名 | 急性骨髄性白血病 |
試験薬剤名 | グラスデキブ |
用法・用量 | 強力化学療法コホート1サイクルを28日間とし、グラスデキブと強力化学療法(シタラビン/ダウノルビシン)を併用する 寛解導入療法期:グラスデキブは100mgを1日1回連日投与する。シタラビン/ダウノルビシンは、’7+3’療法(ダウノルビシン60mg/m2/日をDay1~Day3に投与、シタラビン100mg/m2/日をDay1~Day7に投与)または’5+2’療法(ダウノルビシン60mg/m2/日をDay1~Day2に投与、シタラビン100mg/m2/日をDay1~Day5に投与)を行う。・地固め療法期:グラスデキブは100mgを1日1回連日投与する。シタラビン3g/m2(60歳未満)または1g/m2(60歳以上)を1日2回、Day1、3、5に投与する。または、実施国の処方情報に従って別のスケジュールで単剤のシタラビンによる地固め療法を行うこともできる。適宜幹細胞移植を実施する 地固め療法後:グラスデキブを100mgを1日1回連日投与する(無作為化後最長2年間、MRD陰性達成まで) 非強力化学療法コホート1サイクルを28日間とし、グラスデキブと非強力化学療法(アザシチジン)を併用する。グラスデキブは100mgを1日1回連日投与する。アザシチジンは75g/m2をDay1~Day7に投与する |
対照薬剤名 | プラセボ |
用法・用量 | グラスデキブの用法・用量と同様にプラセボを投与する |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化、二重盲検、他施設共同、プラセボ対照試験 |
目標症例数 | 720 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 全生存期間 |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | ・ELN推奨判定基準(2017)によるCR(CR MRD-negを含む)およびCRi率、MLFS、PRおよびCRh(非強力化学療法コホートのみ)の割合 ・奏効持続期間 ・奏効までの期間(非強力化学療法コホートのみ) ・無イベント生存期間 ・患者報告アウトカム ・有害事象、臨床検査値異常 ・薬物動態 ・QTc間隔 |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2018年4月20日~2025年7月8日 |