急性骨髄性白血病に対するキザルチニブの治験
治験の募集状況は、「医薬品情報データベース 臨床試験情報」ページでご確認ください。
治験名
初発FLT3-ITD陽性急性骨髄性白血病の患者を対象とした寛解導入療法・地固め療法とキザルチニブとの併用およびキザルチニブによる維持療法を検討する第3相、二重盲検、プラセボ対照試験
治験概要:
初発の急性骨髄性白血病に対する治験。骨髄異形成症候群あるいは骨髄増殖性腫瘍に続発する急性骨髄性白血病の患者さんも対象です。寛解導入療法・地固め療法とキザルチニブとの併用および、キザルチニブによる維持療法をプラセボと比較して、無イベント生存期間や全生存期間などで評価する臨床試験です。
登録予定数は、35人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照試験。
比較する対象は
試験群:キザルチニブ
対照群:プラセボ
で主要評価項目は無イベント生存期間、副次的評価項目は全生存期間などで評価します。
疾患解説:急性骨髄性白血病
白血病は、血液細胞ががん化する血液のがんです。
白血病は、造血幹細胞のうち骨髄系とリンパ系の2つと症状の違いによる急性と慢性の2つの分類から、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分類されます(表1)。
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に白血病に罹患した人は、約12000人です。
急性骨髄性白血病は、年間10万人に2~3人程度が発症するといわれ、高齢になるほど増加します。
急性骨髄性白血病は、未熟な血液細胞が何らかの原因の遺伝子異常によりがん化し、無制限に増加することで発症します。骨髄中の白血病細胞がWHO分類で20%以上、FAB分類で30%以上になると急性骨髄性白血病と診断されます。
急性骨髄性白血病の主な症状は、正常な血液が作られなくなることで起こるものと腫瘍化した細胞が臓器に浸潤して現れるものがあります。
正常な白血球が作られなくなるとウイルスや細菌などに対する抵抗力が低下し感染症にかかりやすくなります。赤血球の減少は、倦怠感、動悸、息切れといった症状がでます。血小板の減少は、鼻血がでたりあざができやすくなり、出血しやすくなります。
臓器に浸潤すると、肝臓や脾臓が腫れ、お腹が張ったり痛みが起こります。骨に浸潤すると、腰痛や関節痛、髄膜への浸潤では頭痛がおこります。
表1 白血病の主な分類
骨髄性 | リンパ性 | |
急性 | 急性骨髄性白血病 (AML: acute myeloid leukemia) | 急性リンパ性白血病 (ALL: acute lymphoblastic leukemia) |
慢性 | 慢性骨髄性白血病 (CML: chronic myelogenous leukemia) | 慢性リンパ性白血病 (CLL: chronic lymphocytic leukemia) |
治験薬:キザルチニブ
キザルチニブは、FLT3を標的とした分子標的薬です。
FLT3は、造血前駆細胞の増殖と生存、早期B前駆細胞の分化にかかわる受容体チロシンキナーゼです。
キザルチニブは、FLT3の受容体を阻害することで、シグナル伝達を抑制し、がん細胞の増殖を抑制します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータスPS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
スコア | 患者の状態 |
---|---|
0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 初発FLT3-ITD陽性急性骨髄性白血病の患者を対象とした寛解導入療法・地固め療法とキザルチニブとの併用及びキザルチニブによる維持療法を検討する第III相、二重盲検、プラセボ対照試験 |
試験の概要 | 初発のFLT3-ITD変異陽性AML患者を対象として、キザルチニブとプラセボ(標準的寛解導入療法及び地固め療法に併用投与後、維持療法)の無イベント生存期間(event-free survival: EFS)に対する効果を比較する |
疾患名 | 初発の急性骨髄性白血病 |
試験薬剤名 | キザルチニブ |
用法・用量 | 経口投与 |
対照薬剤名 | プラセボ |
用法・用量 | 経口投与 |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 多施設共同、二重盲検、プラセボ対照試験 |
目標症例数 | 35 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 無イベント生存期間(event-free survival: EFS) 無作為割付から以下のうちいずれかが最初に起こったときまでの期間: 寛解導入期終了時の判定が治療抵抗性(又は治療失敗) CR又はCRi達成後の再発 本治験中の死亡(死因及び時期を問わない) |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | 全生存期間(overall survival: OS)、など OS:無作為割付から死因を問わない死亡までの期間 |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2017年4月27日~2020年11月30日 |