65歳以上の急性骨髄性白血病に対するアザシチジンの治験

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治験名

高齢者急性骨髄性白血病に対するアザシチジンの臨床第2相試験

治験概要:

急性骨髄性白血病に対する治験。骨髄芽球が30%以上で65歳以上の日本人患者さんが対象です。 アザシチジンとシタラビン単剤、シタラビン+ダウノルビシンまたはイダルビシン併用を比較して、全生存期間で評価する臨床試験です。 登録予定数は、50人。 フェーズは、2相臨床試験。 試験デザインは、ランダム化、非盲検、並行群間比較試験。 比較する対象は 試験群:アザシチジン 対照群:シタラビン単剤 対照群:シタラビン+ダウノルビシンまたはイダルビシン併用 で主要評価項目の全生存期間で評価します。

疾患解説:急性骨髄性白血病

白血病は、血液細胞ががん化する血液のがんです。 白血病は、造血幹細胞のうち骨髄系とリンパ系の2つと症状の違いによる急性と慢性の2つの分類から、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分類されます(表1)。 国立がん研究センターのがん統計によると2014年に白血病に罹患した人は、約12000人です。 急性骨髄性白血病は、年間10万人に2~3人程度が発症するといわれ、高齢になるほど増加します。 急性骨髄性白血病は、未熟な血液細胞が何らかの原因の遺伝子異常によりがん化し、無制限に増加することで発症します。骨髄中の白血病細胞がWHO分類で20%以上、FAB分類で30%以上になると急性骨髄性白血病と診断されます。 急性骨髄性白血病の主な症状は、正常な血液が作られなくなることで起こるものと腫瘍化した細胞が臓器に浸潤して現れるものがあります。 正常な白血球が作られなくなるとウイルスや細菌などに対する抵抗力が低下し感染症にかかりやすくなります。赤血球の減少は、倦怠感、動悸、息切れといった症状がでます。血小板の減少は、鼻血がでたりあざができやすくなり、出血しやすくなります。 臓器に浸潤すると、肝臓や脾臓が腫れ、お腹が張ったり痛みが起こります。骨に浸潤すると、腰痛や関節痛、髄膜への浸潤では頭痛がおこります。

表1 白血病の主な分類

骨髄性 リンパ性
急性 急性骨髄性白血病 (AML: acute myeloid leukemia) 急性リンパ性白血病 (ALL: acute lymphoblastic leukemia)
慢性 慢性骨髄性白血病 (CML: chronic myelogenous leukemia) 慢性リンパ性白血病 (CLL: chronic lymphocytic leukemia)

治験薬:アザシチジン

アザシチジンは、DNAメチル化阻害薬です。 がん細胞では、DNAのメチル化が活性しているため、がん抑制遺伝子が抑制されています。アザシチジンは、DNAのメチル化を誘導することで、がん抑制遺伝子を発現させることで、抗腫瘍効果を発揮します。また、細胞の基となるたんぱく質の合成を妨げることで、異常細胞の増殖を抑制します。

対照薬:シタラビン

シタラビンは、細胞増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)です。 細胞増殖を行うためにはDNAの合成が必要です。DNAは主にアデニン、グアニン、シトシン、ミチン、ウラシルという5つの成分で構成されています。 シタラビンは、このうちシトシンという物質と似た構造をしています。がん細胞が増殖するため、DNA合成を行うとき、シトシンと間違えてシタラビンを取り込むことで、DNA合成が正しく行えず、がん細胞の増殖が阻害されます。

対照薬:ダウノルビシン

ダウノルビシンは、アントラサイクリン系の殺細胞性の抗がん剤です。 細胞の増殖には、遺伝情報伝えるためにDNAやRNAの合成が必要です。アントラサイクリン系の抗がん剤は、細胞内のDNAに結合することで、DNAやRNAの合成を阻害し、DNA鎖を延長させる酵素であるDNAポリメラーゼを阻害したり、DNA鎖を切断します。こうした作用により、抗腫瘍効果発揮します。

対照薬:イダルビシン

イダルビシンは、アントラサイクリン系の殺細胞性の注射剤タイプの抗がん剤です。 細胞の増殖には、遺伝情報伝えるためにDNAやRNAの合成が必要です。アントラサイクリン系の抗がん剤は、細胞内のDNAに結合することで、DNAやRNAの合成を阻害し、DNA鎖を延長させる酵素であるDNAポリメラーゼを阻害したり、DNA鎖を切断します。こうした作用により、抗腫瘍効果発揮します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 以下のいずれかに該当する急性骨髄性白血病患者 新規に診断され、組織学的に確認された急性骨髄性白血病患者 骨髄異形成症候群から移行した二次性急性骨髄性白血病 悪性腫瘍に対して使用された白血病誘発性の治療または薬剤により発症した二次性急性骨髄性白血病患者
  • 骨髄芽球が≧30%の患者
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0~2の患者
  • 年齢:65歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 急性骨髄性白血病に対する抗腫瘍療法の治療歴のある患者
  • 脱メチル化剤またはシタラビンの投与歴がある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称 高齢者急性骨髄性白血病に対するNS-17の臨床第II相試験
試験の概要 65歳以上の日本人急性骨髄性白血病(高齢者AML)患者を対象に、NS-17を皮下又は静脈内投与した時の有効性及び安全性を確認する
疾患名 急性骨髄性白血病
試験薬剤名 NS-17
用法・用量 75mg/m2を1日1回7日間皮下又は10分かけて静脈内投与した後、21日間休薬(1サイクル)し、サイクルを繰り返す
対照薬剤名 シタラビン
用法・用量 20mgを1日2回10日間皮下投与した後、18日間休薬(1サイクル)し、サイクルを繰り返す
対照薬剤名 シタラビン、ダウノルビシン、イダルビシン
用法・用量 シタラビン100~200mg/m2/dayを7日間持続静脈内投与、ダウノルビシン45~60mg/m2/dayあるいはイダルビシン 9~12mg/m2/dayを1日1回day 1~3に静脈内投与する
試験のフェーズ フェーズ2(第2相臨床試験)
試験のデザイン ランダム化、非盲検、並行群間比較試験
目標症例数 50
適格基準
  • 以下のいずれかに該当するAML患者 新規に診断され、組織学的に確認されたde novo AML 骨髄異形成症候群(MDS)から移行した二次性AML 悪性腫瘍に対して使用された白血病誘発性の治療又は薬剤により発症した二次性AML
  • 骨髄芽球が≧30%の患者
  • ECOGのPSスコアが0~2の患者
  • 年齢:65歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • AMLに対する抗腫瘍療法の治療歴のある患者
  • 脱メチル化剤又はシタラビンの投与歴を有する患者
主要な評価項目 全生存期間
主要な評価方法
副次的な評価項目
副次的な評価方法
予定試験期間 2017年11月1日~2021年9月30日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより