FGFR2遺伝子再構成を伴うステージ4の胆管がんに対するペミガチニブの治験
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治験名
FIGHT-302
FGFR2遺伝子再構成を伴う切除不能または転移性の胆管がん患者を対象に、1次治療としてのペミガチニブの有効性および安全性をゲムシタビン+シスプラチン併用化学療法と比較して評価する非盲検、ランダム化、実薬対照、多施設共同、第3相試験
治験概要:
切除不能または転移性の胆管がんに対する治験。FGFR2遺伝子再構成が記録されている患者さんが対象です。
ペミガチニブとゲムシタビン+シスプラチン併用化学療法を比較して、有効性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、432人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、非盲検、ランダム化、実薬対照、多施設共同、第III相試験、治療。
試験群:ペミガチニブ
対照群:ゲムシタビン+シスプラチン併用化学療法
無増悪生存期間、全奏効率、全生存期間などで評価します。
疾患解説:胆道がん
国立がん研究センターのがん統計によると2016年に胆のう・胆管がんに罹患した人は、17962人です。男女差はほぼなく、60代後半から増加し始めます。
胆管がんは、胆管の上皮ががん化する悪性腫瘍です。どこの胆管にできたかで、肝内胆管がん、肝外胆管がんにわけられ、肝内胆管がんは肝臓がんとして扱われます。
胆のうがんは、胆のうや胆のう管にできるがんです。
肝外胆管がんと胆のうがん、十二指腸乳頭部がんをあわせて胆道がんといいます。
主な症状は、黄疸、腹痛、体重減少や発熱、食欲不振、全身倦怠感などです。黄疸は、がんにより胆汁が流れにくくなることで起こり、皮膚や白目部分が黄色くなります。
治験薬:ペミガチニブ
ペミガチニブは、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の活性を阻害する分子標的薬です。
FGFは、血管新生など成長因子の一種で、細胞の増殖や分化において重要な役割を担っています。
また、FGFR3変異がある腫瘍では、免疫活性化の兆候を示さないようで免疫療法に反応しない可能性が示唆されています。
ペミガチニブは、FGFR1/2/3に選択的に結合することでFGFR1/2/3に関連のシグナル伝達を阻害することで、抗腫瘍効果を発揮します。
対照薬:ゲムシタビン
ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。
ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。
対照薬:シスプラチン
シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | FGFR2遺伝子再構成を伴う切除不能又は転移性の胆管癌患者を対象に、1次治療としてのPemigatinibの有効性及び安全性をゲムシタビン + シスプラチン併用化学療法と比較して評価する非盲検、ランダム化、実薬対照、多施設共同、第III相試験(FIGHT-302) |
試験の概要 | 本治験の目的は、FGFR2遺伝子再構成を伴う切除不能又は転移性の胆管癌患者を対象に、1次治療としてのPemigatinibの有効性及び安全性をゲムシタビン+シスプラチン併用化学療法と比較して評価する |
疾患名 | 胆管癌 |
試験薬剤名 | Pemigatinib |
用法・用量 | Pemigatinib(13.5mg1日1回[QD])を連日投与(1サイクルは3週間) |
対照薬剤名 | ゲムシタビン |
用法・用量 | 25mg/m2、3週間1サイクルとして、1日目及び8日目に併用投与し、最大8サイクルまで継続 |
対照薬剤名 | シスプラチン |
用法・用量 | 1000mg/m2、3週間1サイクルとして、1日目及び8日目に併用投与し、最大8サイクルまで継続 |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 非盲検、ランダム化、実薬対照、多施設共同、第III相試験、治療 |
目標症例数 | 432 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | 無増悪生存期間(PFS):ランダム化の日から疾患進行日(固形がんの治療効果判定基準[RECIST]v1.1に基づいて独立中央判定機関[ICR]が評価)又は死亡日のいずれか早い方までの期間と定義 |
副次的な評価項目 | 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | 全奏効率(ORR):最良総合効果として完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)(RECISTv1.1に基づいてICRが評価)を達成した患者の割合と定義 全生存期間(OS):ランダム化の日からあらゆる原因による死亡日までと定義 |
予定試験期間 | 2018年12月13日~2022年3月30日 |