切除不能・転移性ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんに対するイパタセルチブ併用の治験

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治験名

切除不能な局所進行性または転移性のホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん患者を対象とした、イパタセルチブ+パルボシクリブ+フルベストラント併用療法をプラセボ+パルボシクリブ+フルベストラント併用療法と比較する第1b/3相試験

治験概要:

切除不能な局所進行性または転移性乳がんに対する治験。ホルモン受容体陽性HER2陰性の患者さんが対象です。
イパタセルチブ+パルボシクリブ+フルベストラント併用療法とプラセボ+パルボシクリブ+フルベストラント併用療法を比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、370人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、ランダム化、多施設共同、二重盲検。
試験群:イパタセルチブ+パルボシクリブ+フルベストラント併用療法
対照群:プラセボ+パルボシクリブ+フルベストラント併用療法
有効性、安全性、薬物動態などで評価します。

疾患解説:乳がん

国立がん研究センターのがん統計によると、2014年に乳がんと診断された女性は78529人です。日本人女性の12人に1人がかかるといわれ、女性のがん死亡予測数では5位と罹患数に比べると死亡数は少なくなっています。40代から徐々に増加し50代でいったん減少しますが、60代から70代にかけ増加していき、その後は減少していきます。35歳未満の乳がんは、若年性乳がんといわれ、全体でみると2.7%と少数です。
早期の乳がんでは自覚症状がすくなく、症状の進行とともに症状が現れます。自覚症状の1つが、乳房のしこりで、特徴は、硬かったり動かないことです。そのほかの症状としては、乳頭や乳輪の湿疹やただれ、乳頭からの血が混じった分泌物、えくぼのような乳房のへこみ、皮膚の赤身や腫れ、熱っぽさ、腋の下の腫れやしこり、痛みなどがあります。
乳房は、母乳をつくる小葉と母乳を乳頭まで運ぶ乳管でできていますが、約95%の乳がんは乳管の上皮細胞にできる乳管がんです。
乳がんの診断は、がんの進行度合いで分類するステージ分類とがんの性質で分類するサブタイプ分類で総合的に行われます。ステージ分類は、がんの大きさ、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移によって、0期、Ⅰ期、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC)、Ⅳ期に分類されます。
サブタイプ分類は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、HER2、Ki67の4つの要素で分類されます。ERとPgRは女性ホルモンで、この女性ホルモンに対して陽性の場合、ホルモンの刺激によってがんが増殖する性質があり、陰性の場合はホルモンには反応しません。HER2は、がん細胞に発現しているたんぱく質で、陽性だとこの受容体に反応してがんが増殖します。Ki67は、がんが増えようとする力の程度を示す指標で、高いほどがん細胞の増殖活性が高くなります。この4つの要素によって、5つのタイプに分類され、タイプによって薬物療法の種類が異なります。
乳がんや卵巣がんの中には、BRCA1、BRCA2の遺伝子の異常が原因で発生するものがあり、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と呼ばれています。この遺伝子に異常があっても、必ず乳がんや卵巣がんになるわけではありませんが、発症するリスクが高くなります。

サブタイプ分類

サブタイプ分類 ホルモン受容体 HER2 Ki67
ER PgR
ルミナルA型 陽性 陽性 陰性
ルミナルB型
(HER2陰性)
陽性または陰性 弱陽性または陰性 陰性
ルミナルB型
(HER2陽性)
陽性 陽性または陰性 陽性 低~高
HER2型 陰性 陰性 陽性
トリプルネガティブ 陰性 陰性 陰性

治験薬:イパタセルチブ

イパタセルチブは、PI3K/Akt経路のAktを阻害する分子標的薬です。
PI3K/Akt経路は、生存増殖シグナルの伝達経路の1つです。正常細胞では、細胞の増殖や細胞死(アポトーシス)が調整されていますが、がん細胞では、この調整機能に異常が起きており、異常な増殖やアポトーシスが起こらなくなっています。
細胞が増殖因子の刺激を受けるとPI3Kという酵素が活性化され、さらにAktという酵素を活性化します。活性化されたAktは、細胞内のシグナル伝達に関わるたんぱく質を調整することで、細胞の増殖やアポトーシスを調整しています。
イパタセルチブは、このAktを阻害することで、シグナル伝達を抑制し、抗腫瘍効果を発揮します。

治験薬:パルボシクリブ

パルボシクリブは、CDK4/6を標的とした分子標的薬です。
CDK4/6は、細胞周期のタンパク質の一種で、細胞分裂を制御しています。
パルボシクリブは、このCDK4/6を相買いすることで、細胞周期の進行を停止させ、がん細胞の増殖を抑制します。

治験薬:フルベストラント

フルベストラントは、エストロゲン受容体の分解を促進するステロイド性抗エストロゲン薬です。
エストロゲン感受性のがんでは、エストロゲンががんの増殖因子になります。
フルベストラントは、エストロゲンとエストロゲン受容体の結合を阻害することで、がんの増殖を抑制します。
非ステロイド性抗エストロゲン薬のなかには、部分的に受容体と結合するアゴニスト活性が薬剤もあるが、フルベストラントは、部分アゴニスト作用がなく、より強いエストロゲン拮抗作用を示します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 局所進行または転移性のHR+HER2-乳腺がん患者
  • 妊娠可能な女性の場合、禁欲を保つか避妊策を講じること、および卵子提供を控えることに同意すること
  • 男性の場合は、禁欲またはコンドームの使用に同意し、精子提供を控えることに同意した患者
  • 術後補助内分泌療法中に放射線学的/客観的な再発が認められた、または切除不能な局所進行性または転移性乳がんに対する一次治療としての内分泌療法の開始後12か月以内に放射線学的/客観的な病勢進行が認められた患者
  • 測定可能病変が少なくとも1つある患者
  • ランダム化第3相部分のみ:直近で採取した利用可能な腫瘍組織の腫瘍検体を提供することに同意する患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 妊娠中または授乳中の患者、もしくは妊娠する意図がある患者
  • フルベストラントまたは他のSERDによる前治療を受けた患者
  • PI3K阻害剤、mTOR阻害剤またはAKT阻害剤による前治療を受けた患者
  • 第1b相部分のみ:CDK4/6阻害剤による治療歴のある患者
  • 転移性乳がんに対する細胞傷害性化学療法による前治療を受けた患者
  • インスリンを必要とする1型または2型糖尿病の病歴がある患者
  • 活動性炎症性腸疾患または活動性腸炎の病歴がある患者
  • 肺疾患患者:肺臓炎、間質性肺疾患、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、アスペルギルス症、活動性結核、もしくは日和見感染

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

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※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称切除不能な局所進行性又は転移性のホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌患者を対象とした,イパタセルチブ + パルボシクリブ + フルベストラント併用療法をプラセボ + パルボシクリブ + フルベストラント併用療法と比較する第Ib/III 相試験
試験の概要本治験のオープンラベル第Ib相部分では、パルボシクリブ及びフルベストラントと併用したときのイパタセルチブの安全性及び薬物動態を評価し、パルボシクリブ及びフルベストラントと併用可能なイパタセルチブの用量を特定する
本治験のランダム化第III相部分では、術後補助内分泌療法中に再発したか、切除不能な局所進行性又は転移性乳癌に対する一次治療としての内分泌療法の開始後12カ月以内に進行した切除不能な局所進行性又は転移性のホルモン受容体陽性(HR+)ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2−)乳癌患者を対象として、イパタセルチブ + パルボシクリブ + フルベストラントをプラセボ + パルボシクリブ + フルベストラントと比較して、有効性、安全性及び患者報告アウトカム(PRO)を評価する
疾患名乳癌
試験薬剤名イパタセルチブ
用法・用量第Ib相:28日間を1サイクルとして、イパタセルチブ300mgを1日1回21日間経口投与する。イパタセルチブのみ、1サイクル目の開始7~5日前から単剤で経口投与を開始する。第Ib相のイパタセルチブの用量は、試験途中で得られるデータに基づき、400mg以下の他の用量が選択される可能性がある。第III相:28日間を1サイクルとして、第Ib相で得られたデータに基づき決定された用量のイパタセルチブを1日1回21日間経口投与する
試験薬剤名パルボシクリブ
用法・用量パルボシクリブ125mgを1日1回21日間経口投与する
試験薬剤名フルベストラント
用法・用量フルベストラントは、サイクル1 Day1及びDay15、サイクル2以降は各サイクルのDay1に500mgを筋肉内注射する
対照薬剤名プラセボ
用法・用量第III相:28日間を1サイクルとして、 プラセボを1日1回21日間経口投与する
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザインランダム化、多施設共同、二重盲検
目標症例数370
適格基準
  • 局所進行又は転移性のHR+HER2-乳腺癌患者
  • 妊娠可能な女性の場合、禁欲を保つか避妊策を講じること、及び卵子提供を控えることに同意すること
  • 男性の場合は、禁欲又はコンドームの使用に同意し、精子提供を控えることに同意した患者
  • 術後補助内分泌療法中に放射線学的/客観的な再発が認められた、又は切除不能な局所進行性又は転移性乳癌に対する一次治療としての内分泌療法の開始後12カ月以内に放射線学的/客観的な病勢進行が認められた患者
  • Response Evaluation Criteria in Solid Tumors、 Version1.1(RECIST)v1.1に基づく測定可能病変が少なくとも1つある患者
  • ランダム化第III相部分のみ:直近で採取した利用可能な腫瘍組織の腫瘍検体を提供することに同意する患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 妊娠中又は授乳中の患者、若しくは妊娠する意図がある患者
  • フルベストラント又は他のSERDによる前治療を受けた患者
  • PI3K阻害剤、mTOR阻害剤又はAKT阻害剤による前治療を受けた患者
  • 第Ib相部分のみ:CDK4/6阻害剤による治療歴のある患者
  • 転移性乳癌に対する細胞傷害性化学療法による前治療を受けた患者
  • インスリンを必要とする1型又は2型糖尿病の病歴がある患者
  • 活動性炎症性腸疾患又は活動性腸炎の病歴がある患者
  • 肺疾患患者:肺臓炎、間質性肺疾患、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、アスペルギルス症、活動性結核、若しくは日和見感染
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法RECISTv1.1
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
薬物動態/pharmacokinetics
副次的な評価方法RECISTv1.1、EORTC QLQ-C30、観察
予定試験期間2019年10月10日~2026年1月30日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより