局所進行または転移性トリプルネガティブ乳がんに対するカピバセルチブの治験

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治験名

CAPItello-290

組織学的に確認された手術不能な局所進行または転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象に一次治療としてのカピバセルチブとパクリタキセル投与の有効性および安全性をプラセボとパクリタキセル投与と比較して評価する第3相二重盲検無作為化試験

治験概要:

局所進行または転移性トリプルネガティブ乳がんに対する治験。手術不能な患者さんが対象です。
カピバセルチブ+パクリタキセル併用とプラセボ+パクリタキセル併用を比較して、有効性、安全性、薬物動態で評価する臨床試験です。
登録予定数は、80人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、並行群間、二重盲検試験。
試験群:カピバセルチブ+パクリタキセル併用
対照群:プラセボ+パクリタキセル併用
有効性、安全性、薬物動態などで評価します。

疾患解説:乳がん

国立がん研究センターのがん統計によると、2014年に乳がんと診断された女性は78529人です。日本人女性の12人に1人がかかるといわれ、女性のがん死亡予測数では5位と罹患数に比べると死亡数は少なくなっています。40代から徐々に増加し50代でいったん減少しますが、60代から70代にかけ増加していき、その後は減少していきます。35歳未満の乳がんは、若年性乳がんといわれ、全体でみると2.7%と少数です。
早期の乳がんでは自覚症状がすくなく、症状の進行とともに症状が現れます。自覚症状の1つが、乳房のしこりで、特徴は、硬かったり動かないことです。そのほかの症状としては、乳頭や乳輪の湿疹やただれ、乳頭からの血が混じった分泌物、えくぼのような乳房のへこみ、皮膚の赤身や腫れ、熱っぽさ、腋の下の腫れやしこり、痛みなどがあります。
乳房は、母乳をつくる小葉と母乳を乳頭まで運ぶ乳管でできていますが、約95%の乳がんは乳管の上皮細胞にできる乳管がんです。
乳がんの診断は、がんの進行度合いで分類するステージ分類とがんの性質で分類するサブタイプ分類で総合的に行われます。ステージ分類は、がんの大きさ、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移によって、0期、Ⅰ期、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC)、Ⅳ期に分類されます。
サブタイプ分類は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、HER2、Ki67の4つの要素で分類されます。ERとPgRは女性ホルモンで、この女性ホルモンに対して陽性の場合、ホルモンの刺激によってがんが増殖する性質があり、陰性の場合はホルモンには反応しません。HER2は、がん細胞に発現しているたんぱく質で、陽性だとこの受容体に反応してがんが増殖します。Ki67は、がんが増えようとする力の程度を示す指標で、高いほどがん細胞の増殖活性が高くなります。この4つの要素によって、5つのタイプに分類され、タイプによって薬物療法の種類が異なります。
乳がんや卵巣がんの中には、BRCA1、BRCA2の遺伝子の異常が原因で発生するものがあり、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と呼ばれています。この遺伝子に異常があっても、必ず乳がんや卵巣がんになるわけではありませんが、発症するリスクが高くなります。

サブタイプ分類

サブタイプ分類 ホルモン受容体 HER2 Ki67
ER PgR
ルミナルA型 陽性 陽性 陰性
ルミナルB型
(HER2陰性)
陽性または陰性 弱陽性または陰性 陰性
ルミナルB型
(HER2陽性)
陽性 陽性または陰性 陽性 低~高
HER2型 陰性 陰性 陽性
トリプルネガティブ 陰性 陰性 陰性

治験薬:カピバセルチブ

カピバセルチブは、PI3K/AKT経路のAKTを阻害する分子標的薬です。
PI3K/AKT経路は、生存増殖シグナルの伝達経路の1つです。正常細胞では、細胞の増殖や細胞死(アポトーシス)が調整されていますが、がん細胞では、この調整機能に異常が起きており、異常な増殖やアポトーシスが起こらなくなっています。
細胞が増殖因子の刺激を受けるとPI3Kという酵素が活性化され、さらにAKTという酵素を活性化します。活性化されたAKTは、細胞内のシグナル伝達に関わるたんぱく質を調整することで、細胞の増殖やアポトーシスを調整しています。
カピバセルチブは、このAKTを阻害することで、シグナル伝達を抑制し、抗腫瘍効果を発揮します。

治験薬:パクリタキセル

パクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。パクリタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • トリプルネガティブ乳がんと確認された患者
  • 転移性がんまたは治癒切除不能な局所進行がんがある患者
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0または1
  • 評価可能病変があるおよび/または測定可能病変を有しない場合は、CTまたはMRIにより評価された溶骨性または混合性骨病変がある
  • 原発/再発病変のFFPE腫瘍サンプルが提供できる
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 術前/術後補助化学療法を受け、同治療の完了から本治験への組入れまで12か月以上経過していない患者
  • 手術不能な局所進行または転移性がんに対する全身療法を受けた患者
  • 以下のいずれかの治療を受けたことがある患者
    AKT、PI3Kおよび/またはmTOR阻害剤
    本治験のカピバセルチブの投与を受けた患者
    治験薬の投与開始前3週間以内に他の化学療法、免疫療法、免疫抑制剤または抗がん剤の投与を受けた患者。半減期が長い薬剤については、治験依頼者の合意の上で、より長いウォッシュアウト期間が必要となる場合がある
    治験薬の投与開始前2週間以内にシトクロムP450(CYP)3A4の強力な阻害剤または誘導剤、もしくは治験薬の投与開始前1週間以内にCYP3A4、CYP2C9および/またはCYP2D6基質に対する感受性があり治療域が狭い薬剤の投与を受けた患者
  • 治験薬投与開始前4週間以内に広範囲照射の放射線療法を受けた患者
  • グレード2以上の感覚性または運動性多発性神経系ニューロパチーを以前より有している患者
  • 治験薬の投与開始時に、前治療が原因であるグレード2以上の毒性が継続している患者
  • スクリーニング時、下記のいずれかの心機能に関する基準に該当する患者
    3回連続して測定した心電図データで算出した平均安静時補正QT間隔(QTc)が470msecを超える患者
    安静時心電図において、調律、伝導または波形に臨床的に重大な異常が認められる患者
    QTc延長または不整脈誘発のリスクを高める要因がある患者。例えば、心不全、低カリウム血症、トルサード・ド・ポワント発現の可能性、先天性QT延長症候群が認められる患者、QT延長症候群の家族歴がある患者または40歳未満での予想外の突然死の家族歴がある患者、QT間隔を延長させることが知られている併用薬を使用する患者
    過去6か月に次に挙げる処置を受けたことがある、または状態であった患者:冠動脈バイパス移植術、血管形成術、血管ステント、心筋梗塞、狭心症、ニューヨーク心臓協会グレード2以上のうっ血性心不全
    コントロール困難な低血圧がある患者
    心エコー検査で測定された心駆出率が実施医療機関の基準値範囲外または50%未満である患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称組織学的に確認された手術不能な局所進行又は転移性トリプルネガティブ乳癌(TNBC)患者を対象に一次治療としてのカピバセルチブとパクリタキセル投与の有効性及び安全性をプラセボとパクリタキセル投与と比較して評価する第III相二重盲検無作為化試験
試験の概要局所進行又は転移性トリプルネガティブ乳癌(TNBC)患者を対象に一次治療としてのカピバセルチブ+パクリタキセル併用投与をプラセボ+パクリタキセル投与と比較する第3相試験
疾患名トリプルネガティブ乳癌
試験薬剤名カピバセルチブ
用法・用量カピバセルチブとして 1日2回400mgを週4回、3週間(2~5日目、9~12日目及び16~19日目)経口投与した後、9日間休薬(20~28日目)する。この4週間を1サイクルとし、投与を繰り返す
対照薬剤名プラセボ
用法・用量プラセボはカピバセルチブ錠と外観上区別がつかない錠剤であり、カピバセルチブ錠と同じ用法・用量で経口投与する
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン無作為化、並行群間、二重盲検試験
目標症例数80
適格基準
  • 採取した最新の腫瘍サンプルにより組織学的にトリプルネガティブ乳癌と確認された患者
  • 転移性癌、又は治癒切除不能な局所進行癌を有する患者(ただし、治験薬の投与によるダウンステージング後に外科手術又はアブレーションによる治療の適応となると考えられる患者は不適格)
  • ECOG/WHO Performance Statusが0-1
  • RECIST1.1による評価可能病変を有する及び/又は測定可能病変を有しない場合は、CT又はMRIにより評価された溶骨性又は混合性(溶骨性+硬化性)骨病変がある
  • 原発/再発病変のFFPE腫瘍サンプルが提供できる
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 術前/術後補助化学療法を受け、同治療の完了から本治験への組入れまで12カ月以上経過していない患者
  • 手術不能な局所進行又は転移性癌に対する全身療法を受けた患者
  • 以下のいずれかの治療を受けたことがある患者
    AKT、PI3K及び/又はmTOR阻害剤
    本治験のカピバセルチブの投与(すなわち、過去に本治験に参加したことによるカピバセルチブの投与)を受けた患者
    治験薬の投与開始前3週間以内に他の化学療法、免疫療法、免疫抑制剤(コルチコステロイドを除く)又は抗癌剤の投与を受けた患者。半減期が長い薬剤(生物学的製剤等)については、治験依頼者の合意の上で、より長いウォッシュアウト期間が必要となる場合がある
    治験薬の投与開始前2週間(セント・ジョンズ・ワートは3週間)以内にシトクロムP450(CYP)3A4の強力な阻害剤又は誘導剤、もしくは治験薬の投与開始前1週間以内にCYP3A4、CYP2C9及び/又はCYP2D6基質に対する感受性があり治療域が狭い薬剤の投与を受けた患者
  • 治験薬(カピバセルチブ/プラセボ)投与開始前4週間以内に広範囲照射の放射線療法を受けた患者
  • NCI CTCAE v5でのCTCAEグレード2以上の感覚性又は運動性多発性神経系ニューロパチーを以前より有している患者
  • 治験薬の投与開始時に、前治療が原因であるCTCAEグレード2以上の毒性(脱毛症を除く)が継続している患者
  • スクリーニング時、下記のいずれかの心機能に関する基準に該当する患者
    3回連続して測定した心電図データで算出した平均安静時補正QT間隔(QTc)が470msecを超える患者
    安静時心電図において、調律、伝導又は波形に臨床的に重大な異常(完全左脚ブロック、第3度AVブロック等)が認められる患者
    QTc延長又は不整脈誘発のリスクを高める要因を有する患者。例えば、心不全、低カリウム血症、トルサード・ド・ポワント発現の可能性、先天性QT延長症候群が認められる患者、QT延長症候群の家族歴を有する患者又は40歳未満での予想外の突然死の家族歴を有する患者、QT間隔を延長させることが知られている併用薬を使用する患者
    過去6カ月に次に挙げる処置を受けたことがある、又は状態であった患者:冠動脈バイパス移植術、血管形成術、血管ステント、心筋梗塞、狭心症、ニューヨーク心臓協会(NYHA)グレード2以上のうっ血性心不全
    コントロール困難な低血圧を有する患者(収縮期血圧が90mmHg未満、及び/又は拡張期血圧が50mmHg未満)
    心エコー検査(心エコー検査を実施できない又は結果を確定できない場合は、マルチゲート収集法[MUGA]スキャン)で測定された心駆出率が実施医療機関の基準値範囲外又は50%未満(いずれか高い方)である患者
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
薬物動態/pharmacokinetics
副次的な評価方法
予定試験期間2019年8月29日~2022年6月30日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより