切除不能なトリプルネガティブ乳がんに対するイパタセルチブ+アテゾリズマブ+パクリタキセル併用の治験

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治験名

切除不能な局所進行性または転移性のトリプルネガティブ乳がん患者さんを対象とした、イパタセルチブ+アテゾリズマブ+パクリタキセル併用療法の第3相ランダム化プラセボ対照二重盲検試験

治験概要:

トリプルネガティブ乳がんに対する治験。切除不能な局所進行性または転移性の患者さんが対象です。
イパタセルチブ、アテゾリズマブとプラセボを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、1155人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、ランダム化、多施設共同、二重盲検比較試験。
コホート1
試験群:イパタセルチブ+アテゾリズマブ+パクリタキセル
試験群:イパタセルチブ+アテゾリズマブ(プラセボ)+パクリタキセル
対照群:イパタセルチブ(プラセボ)+アテゾリズマブ(プラセボ)+パクリタキセル
コホート2
試験群:イパタセルチブ+アテゾリズマブ+パクリタキセル
対照群:イパタセルチブ(プラセボ)+アテゾリズマブ+パクリタキセル
無増悪生存期間、全生存期間、客観的奏効率、奏効期間、臨床的有用率、有害事象を発現した患者数、全般的健康状態、生活の質などで評価します。

疾患解説:乳がん

国立がん研究センターのがん統計によると、2014年に乳がんと診断された女性は78529人です。日本人女性の12人に1人がかかるといわれ、女性のがん死亡予測数では5位と罹患数に比べると死亡数は少なくなっています。40代から徐々に増加し50代でいったん減少しますが、60代から70代にかけ増加していき、その後は減少していきます。35歳未満の乳がんは、若年性乳がんといわれ、全体でみると2.7%と少数です。
早期の乳がんでは自覚症状がすくなく、症状の進行とともに症状が現れます。自覚症状の1つが、乳房のしこりで、特徴は、硬かったり動かないことです。そのほかの症状としては、乳頭や乳輪の湿疹やただれ、乳頭からの血が混じった分泌物、えくぼのような乳房のへこみ、皮膚の赤身や腫れ、熱っぽさ、腋の下の腫れやしこり、痛みなどがあります。
乳房は、母乳をつくる小葉と母乳を乳頭まで運ぶ乳管でできていますが、約95%の乳がんは乳管の上皮細胞にできる乳管がんです。
乳がんの診断は、がんの進行度合いで分類するステージ分類とがんの性質で分類するサブタイプ分類で総合的に行われます。ステージ分類は、がんの大きさ、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移によって、0期、Ⅰ期、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC)、Ⅳ期に分類されます。
サブタイプ分類は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、HER2、Ki67の4つの要素で分類されます。ERとPgRは女性ホルモンで、この女性ホルモンに対して陽性の場合、ホルモンの刺激によってがんが増殖する性質があり、陰性の場合はホルモンには反応しません。HER2は、がん細胞に発現しているたんぱく質で、陽性だとこの受容体に反応してがんが増殖します。Ki67は、がんが増えようとする力の程度を示す指標で、高いほどがん細胞の増殖活性が高くなります。この4つの要素によって、5つのタイプに分類され、タイプによって薬物療法の種類が異なります。
乳がんや卵巣がんの中には、BRCA1、BRCA2の遺伝子の異常が原因で発生するものがあり、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と呼ばれています。この遺伝子に異常があっても、必ず乳がんや卵巣がんになるわけではありませんが、発症するリスクが高くなります。

サブタイプ分類

サブタイプ分類 ホルモン受容体 HER2 Ki67
ER PgR
ルミナルA型 陽性 陽性 陰性
ルミナルB型
(HER2陰性)
陽性または陰性 弱陽性または陰性 陰性
ルミナルB型
(HER2陽性)
陽性 陽性または陰性 陽性 低~高
HER2型 陰性 陰性 陽性
トリプルネガティブ 陰性 陰性 陰性

治験薬:イパタセルチブ

イパタセルチブは、PI3K/AKT経路のAKTを阻害する分子標的薬です。
PI3K/AKT経路は、生存増殖シグナルの伝達経路の1つです。正常細胞では、細胞の増殖や細胞死(アポトーシス)が調整されていますが、がん細胞では、この調整機能に異常が起きており、異常な増殖やアポトーシスが起こらなくなっています。
細胞が増殖因子の刺激を受けるとPI3Kという酵素が活性化され、さらにAKTという酵素を活性化します。活性化されたAKTは、細胞内のシグナル伝達に関わるたんぱく質を調整することで、細胞の増殖やアポトーシスを調整しています。
イパタセルチブは、このAKTを阻害することで、シグナル伝達を抑制し、抗腫瘍効果を発揮します。

治験薬:アテゾリズマブ

アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:パクリタキセル

パクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。パクリタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • PRO評価を含む、治験関連のすべての評価を完了する意思と能力があると治験責任医師により判断されている
  • 十分な血液学的機能および臓器機能がある
  • 予想される余命が6か月間以上である
  • 測定可能病変がある
  • 全身状態(performance status:PS)が0または1
  • 妊娠可能な女性:禁欲または避妊方策を講じること、および卵子提供を控えることに同意すること
  • 男性:禁欲を保つか、避妊法を使用すること、および精子提供を控えることに同意すること
  • 腫瘍のPD-L1発現状況が不明または陽性でない場合は、パクリタキセル単剤療法の適切な候補であること、また腫瘍のPD-L1発現状況が陽性の場合は、パクリタキセル+アテゾリズマブ併用療法の適切な候補であること
  • 根治目的の切除術の対象とならない局所進行または転移性トリプルネガティブ乳がん
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 妊娠中または授乳中であるか、治験期間中もしくはイパタセルチブ/プラセボの最終投与後28日以内、アテゾリズマブ/プラセボの最終投与後5か月以内またはパクリタキセルの最終投与後6か月以内に妊娠する意思がある患者
  • BRCA1/2生殖細胞系列変異が判明している
  • 組織型が腺がんな切除不能な局所進行性または転移性トリプルネガティブ乳がんに対して全身療法を受けたことがある患者
  • サイクル1Day1の前5年以内に発症した乳がん以外の悪性腫瘍の既往がある
  • 治験薬のいずれかの成分に対して過敏症または禁忌がある
  • インスリンを必要とする1型または2型糖尿病の病歴がある
  • 活動性炎症性腸疾患または活動性の腸管炎症の既往がある
  • 前治療でAkt阻害剤の投与を受けたことがある
  • 活動性の自己免疫疾患もしくは免疫不全またはその病歴がある

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。

試験概要詳細

試験の名称切除不能な局所進行性又は転移性のトリプルネガティブ乳癌患者を対象とした,イパタセルチブ + アテゾリズマブ + パクリタキセル併用療法の第III相ランダム化プラセボ対照二重盲検試験
試験の概要本治験では、未治療の切除不能な局所進行性又は転移性のトリプルネガティブ乳癌患者を対象として、イパタセルチブをアテゾリズマブ及びパクリタキセルと併用投与したときの有効性、安全性及び薬物動態を評価する。PD-L1非陽性及びPD-L1陽性の癌患者はそれぞれコホート1及びコホート2にそれぞれ登録される。イパタセルチブ、アテゾリズマブ及びパクリタキセルの併用投与はコホート1及びコホート2で、イパタセルチブ及びパクリタキセルの併用投与はコホート1で評価される
疾患名乳癌
試験薬剤名イパタセルチブ
用法・用量イパタセルチブ又はプラセボは、開始用量を400mgとして、各28日サイクルのDay1~21(21日間)に1日1回経口投与する
試験薬剤名アテゾリズマブ
用法・用量アテゾリズマブ又はプラセボは、各28日サイクルのDay1及び15に固定用量840mgを点滴静注にて投与する
対照薬剤名パクリタキセル
用法・用量パクリタキセルは、各28日サイクルのDay1、8、15に80mg/m2を点滴静注にて投与する
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザインランダム化、多施設共同、二重盲検比較試験
目標症例数1155
適格基準
  • PRO評価を含む、治験関連のすべての評価を完了する意思と能力があると治験責任(分担)医師により判断されている
  • 十分な血液学的機能及び臓器機能を有する
  • 予想される余命が6カ月間以上である
  • RECISTv1.1に基づく測定可能病変がある
  • Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)performance statusが0又は1である
  • 妊娠可能な女性:禁欲(異性間性交を控えること)又は避妊方策を講じること、及び卵子提供を控えることに同意すること
  • 男性:禁欲(異性間性交を控えること)を保つか、避妊法を使用すること、及び精子提供を控えることに同意すること
  • 腫瘍のPD-L1発現状況が不明又は陽性でない場合は、パクリタキセル単剤療法の適切な候補であること、また腫瘍のPD-L1発現状況が陽性の場合は、パクリタキセル+アテゾリズマブ併用療法の適切な候補であること
  • 根治目的の切除術の対象とならない、組織型が腺癌である組織学的に確認された局所進行又は転移性トリプルネガティブ乳癌患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 妊娠中又は授乳中であるか、治験期間中若しくはイパタセルチブ/プラセボの最終投与後28日以内、アテゾリズマブ/プラセボの最終投与後5カ月以内又はパクリタキセルの最終投与後6カ月以内に妊娠する意思がある患者
  • BRCA1/2生殖細胞系列変異が判明している患者(PARP阻害剤が適切ではない患者を除く)
  • 組織型が腺癌である切除不能な局所進行性又は転移性トリプルネガティブ乳癌に対して全身療法を受けたことがある患者
  • サイクル1Day1の前5年以内に発症した乳癌以外の悪性腫瘍の既往がある患者
  • 治験薬のいずれかの成分に対して過敏症又は禁忌がある患者
  • インスリンを必要とする1型又は2型糖尿病の病歴がある患者
  • 活動性炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎等)又は活動性の腸管炎症(憩室炎等)の既往がある患者
  • 前治療でAkt阻害剤の投与を受けたことがある患者
  • 活動性の自己免疫疾患若しくは免疫不全又はその病歴がある患者
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法無増悪生存期間(PFS)
全生存期間(OS)
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
薬物動態/pharmacokinetics
薬力学/pharmacodynamics
ファーマコゲノミクス/pharmacogenomics
副次的な評価方法客観的奏効率(ORR)
奏効期間(DOR)
臨床的有用率(CBR)
全般的健康状態(GHS)/生活の質(QOL)の患者報告アウトカム(PRO)
有害事象を発現した患者数
イパタセルチブ及びその代謝物(G-0377720)の血漿中濃度
アテゾリズマブの血清中濃度
アテゾリズマブに対する抗薬物抗体(ADA)の陽性率
予定試験期間2020年2月6日~2025年10月10日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより