転移性トリプルネガティブ乳がんを対象にペムブロリズマブと化学療法を比較する治験

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治験名

転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)の患者を対象とした治験担当医師選択治療群の化学療法に対するMK-3475の非盲検、無作為化、第III相試験(KEYNOTE-119)

治験概要

この治験は、転移性トリプルネガティブ乳がん(mTNBC)の患者に、MK-3475(ペムブロリズマブ)または治験担当医師選択化学療法(TPC)として、各国の規制およびガイドラインに従って、カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビンまたはビノレルビンのいずれかを無作為に投与する試験です。同治験の主要仮説は、MK-3475はTPCと比較して、無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を延長するというものです。

疾患解説乳がん

国立がん研究センターのがん統計によると、2014年に乳がんと診断された女性は78529人です。日本人女性の12人に1人がかかるといわれ、女性のがん死亡予測数では5位と罹患数に比べると死亡数は少なくなっています。40代から徐々に増加し50代でいったん減少しますが、60代から70代にかけ増加していき、その後は減少していきます。35歳未満の乳がんは、若年性乳がんといわれ、全体でみると2.7%と少数です。

早期の乳がんでは自覚症状がすくなく、症状の進行とともに症状が現れます。自覚症状の1つが、乳房のしこりで、特徴は、硬かったり動かないことです。そのほかの症状としては、乳頭や乳輪の湿疹やただれ、乳頭からの血が混じった分泌物、えくぼのような乳房のへこみ、皮膚の赤身や腫れ、熱っぽさ、腋の下の腫れやしこり、痛みなどがあります。

乳房は、母乳をつくる小葉と母乳を乳頭まで運ぶ乳管でできていますが、約95%の乳がんは乳管の上皮細胞にできる乳管がんです。

乳がんの診断は、がんの進行度合いで分類するステージ分類とがんの性質で分類するサブタイプ分類で総合的に行われます。ステージ分類は、がんの大きさ、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移によって、0期、I期、II期(IIA、IIB)、Ⅲ期(IIIA、IIIB、IIIC)、IV期に分類されます。

サブタイプ分類は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、HER2、Ki67の4つの要素で分類されます。ERとPgRは女性ホルモンで、この女性ホルモンに対して陽性の場合、ホルモンの刺激によってがんが増殖する性質があり、陰性の場合はホルモンには反応しません。HER2は、がん細胞に発現しているたんぱく質で、陽性だとこの受容体に反応してがんが増殖します。Ki67は、がんが増えようとする力の程度を示す指標で、高いほどがん細胞の増殖活性が高くなります。この4つの要素によって、5つのタイプに分類され、タイプによって薬物療法の種類が異なります。

乳がんや卵巣がんの中には、BRCA1、BRCA2の遺伝子の異常が原因で発生するものがあり、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と呼ばれています。この遺伝子に異常があっても、必ず乳がんや卵巣がんになるわけではありませんが、発症するリスクが高くなります。

サブタイプ分類

サブタイプ分類 ホルモン受容体 HER2 Ki67
ER PgR
ルミナルA型 陽性 陽性 陰性
ルミナルB型
(HER2陰性)
陽性または陰性 弱陽性または陰性 陰性
ルミナルB型
(HER2陽性)
陽性 陽性または陰性 陽性 低~高
HER2型 陰性 陰性 陽性
トリプルネガティブ 陰性 陰性 陰性

治験薬ペムブロリズマブ

MK-3475(ペムブロリズマブ)は、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。

免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。

がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 中央検査機関でmTNBCと確認された患者さん
  • 転移性の腫瘍部位から、新たに生検検体を採取可能な患者さん
  • 中央評価機関によるPD-L1バイオマーカー解析のために腫瘍検体が提出可能な患者さん
  • 転移性乳がんに対して、1または2レジメンの全身性の前治療を実施した患者さん
  • 直近の治療において疾患進行の記録がある患者さん
  • 術前/術後補助療法または転移病変に対する治療として、アントラサイクリン系またはタキサン系薬剤による前治療歴を有する患者さん
  • ECOG Performance Statusが0または1の患者さん
  • 適切な臓器機能が保持された患者さん
  • 18歳以上
  • 男女
対象とならない人
  • 4週間以内に他の治験に参加した患者さん
  • 治験薬投与開始前4週間以内に、抗がん剤治療としてモノクローナル抗体を使用した患者さん
  • 治験薬投与開始前2週間以内に、化学療法、低分子分子標的薬療法、放射線療法を実施した患者さん
  • 活動性の自己免疫疾患で、過去2年以内に全身性の治療を必要とした患者さん
  • 免疫不全状態と診断された患者さん、または治験薬投与開始前7日以内に全身ステロイド療法や他の免疫抑制剤による治療を受けた患者さん
  • 過去5年以内に、進行したまたは治療が必要であった他の悪性腫瘍を有する患者さん
  • 活動性の中枢神経系への転移またはがん性髄膜炎を有する患者さん
  • 抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、または他の共抑制性のT細胞受容体(CTLA-4、OX-40、CD137など)を直接標的とした薬剤の治療歴を有するまたはMK-3475の他の治験に参加した患者さん

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、米国の腫瘍学の団体(ECOG)が決めた全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。

PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、日本国内では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP) 」という厳しいルールに基づき、行われています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで進められます。治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを正しく理解しましょう。

試験詳細

試験の名称転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)の患者を対象とした治験担当医師選択治療群の化学療法に対するMK-3475の非盲検、無作為化、第III相試験(KEYNOTE-119)
試験の概要本治験は、転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)の患者に、MK-3475又は治験担当医師選択化学療法(TPC)として、各国の規制及びガイドラインに従って、カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン又はビノレルビンのいずれかを無作為に投与する試験である。 本治験の主要仮説は、MK-3475はTPCと比較して、無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)を延長することである。
疾患名転移性トリプルネガティブ乳癌
試験薬剤名MK-3475
用法・用量MK-3475群:200mg静脈内投与、3週間間隔(Q3W)、35回まで投与
対照薬剤名MK-3475群:200mg静脈内投与、3週間間隔(Q3W)、35回まで投与
対照薬用法・用量TPC群:各国の規制及びガイドラインに従い、カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、ビノレルビンのいずれか一つを投与
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン無作為化、非盲検、並行群間比較試験
目標症例数600
適格基準
  • 中央検査機関でmTNBCと確認された患者
  • 転移性の腫瘍部位から、新たに生検検体を採取可能な患者
  • 中央評価機関によるPD-L1バイオマーカー解析のために腫瘍検体が提出可能な患者
  • 転移性乳癌に対して、1又は2レジメンの全身性の前治療を実施した患者
  • 直近の治療において疾患進行の記録がある患者
  • 術前/術後補助療法又は転移病変に対する治療として、アントラサイクリン系又はタキサン系薬剤による前治療歴を有する患者
  • ECOG Performance Statusが0又は1の患者
  • 適切な臓器機能が保持された患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 4週間以内に他の治験に参加した患者
  • 治験薬投与開始前4週間以内に、抗がん剤治療としてモノクローナル抗体を使用した患者
  • 治験薬投与開始前2週間以内に、化学療法、低分子分子標的薬療法、放射線療法を実施した患者
  • 活動性の自己免疫疾患で、過去2年以内に全身性の治療を必要とした患者。
  • 免疫不全状態と診断された患者、又は治験薬投与開始前7日以内に全身ステロイド療法や他の免疫抑制剤による治療を受けた患者
  • 過去5年以内に、進行した又は治療が必要であった他の悪性腫瘍を有する患者
  • 活動性の中枢神経系への転移又は癌性髄膜炎を有する患者
  • 抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、又は他の共抑制性のT細胞受容体(CTLA-4、OX-40、CD137等)を直接標的とした薬剤の治療歴を有する又はMK-3475の他の治験に参加した患者
主要な評価項目全生存期間(OS)
主要な評価方法治験開始から37か月までのOSを調査する
副次的な評価項目奏効率(ORR)
副次的な評価方法治験開始から37か月までのORRを調査する
副次的な評価項目病勢コントロール率(DCR)
副次的な評価方法治験開始から37か月までのDCRを調査する
副次的な評価項目無増悪生存期間(PFS)
副次的な評価方法治験開始から37か月までのPFSを調査する
副次的な評価項目全奏効期間(DOR)
副次的な評価方法治験開始から37か月までのDORを調査する
予定試験期間2015年10月~2019年5月

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより