転移性乳がんの骨転移に対する塩化ラジウム-223の治験

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治験名

転移性HER2陰性、ホルモン受容体陽性の骨転移を有する乳癌患者に対するエキセメスタンとエベロリムス併用下での塩化ラジウム-223の第2相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験

治験概要:

手術や放射線療法による治療が不可能な転移性乳がんに対する治験。HER2陰性、ホルモン受容体陽性の骨転移のある患者さんが対象です。 エキセメスタンとエベロリムスを併用しながら、塩化ラジウム223とプラセボを比較して、骨関連事象の無発生存率で評価する第2相試験です。 登録予定数は20人。 試験デザインは、国際共同、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、並行群間試験。 フェーズは、第2相臨床試験。 比較する対象は 試験群:塩化ラジウム223 対照群:プラセボ で主要評価項目は症候性骨関連事象無発症生存期間、副次的な評価項目は、全生存期間などで評価します。

疾患解説:乳がん

国立がん研究センターのがん統計によると、2014年に乳がんと診断された女性は78529人です。日本人女性の12人に1人がかかるといわれ、女性のがん死亡予測数では5位と罹患数に比べると死亡数は少なくなっています。40代から徐々に増加し50代でいったん減少しますが、60代から70代にかけ増加していき、その後は減少していきます。35歳未満の乳がんは、若年性乳がんといわれ、全体でみると2.7%と少数です。 早期の乳がんでは自覚症状がすくなく、症状の進行とともに症状が現れます。自覚症状の1つが、乳房のしこりで、特徴は、硬かったり動かないことです。そのほかの症状としては、乳頭や乳輪の湿疹やただれ、乳頭からの血が混じった分泌物、えくぼのような乳房のへこみ、皮膚の赤身や腫れ、熱っぽさ、腋の下の腫れやしこり、痛みなどがあります。 乳房は、母乳をつくる小葉と母乳を乳頭まで運ぶ乳管でできていますが、約95%の乳がんは乳管の上皮細胞にできる乳管がんです。 乳がんの診断は、がんの進行度合いで分類するステージ分類とがんの性質で分類するサブタイプ分類で総合的に行われます。ステージ分類は、がんの大きさ、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移によって、0期、Ⅰ期、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC)、Ⅳ期に分類されます。 サブタイプ分類は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、HER2、Ki67の4つの要素で分類されます。ERとPgRは女性ホルモンで、この女性ホルモンに対して陽性の場合、ホルモンの刺激によってがんが増殖する性質があり、陰性の場合はホルモンには反応しません。 HER2は、がん細胞に発現しているたんぱく質で、陽性だとこの受容体に反応してがんが増殖します。 Ki67は、がんが増えようとする力の程度を示す指標で、高いほどがん細胞の増殖活性が高くなります。この4つの要素によって、5つのタイプに分類され、タイプによって薬物療法の種類が異なります。 乳がんや卵巣がんの中には、BRCA1、BRCA2の遺伝子の異常が原因で発生するものがあり、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と呼ばれています。この遺伝子に異常があっても、必ず乳がんや卵巣がんになるわけではありませんが、発症するリスクが高くなります。

治験薬:塩化ラジウム223

塩化ラジウム223は、放射性物質を含んだ放射性医薬品です。 ラジウム223は、カルシウムと同じように骨に集まりやすい性質があります。がんが骨に転移した部位は代謝が活発になっているため、静脈注射で体内に投与されたラジウム223が集まり、放射線であるアルファ線を放射することで、骨転移のがん細胞の増殖を抑制します。

治験薬:エキセメスタン

エキセメスタンは、アロマターゼを阻害する内分泌療法に使われる薬剤です。 女性モルモンの一種であるエストロゲンを生成するために必要なアロマターゼ酵素の活性を阻害することで、エストロゲンの生成を抑制し、がん細胞の増殖を抑制します。

治験薬:エベロリムス

エベロリムスは、mTORというたんぱく質を選択的に阻害する分子標的薬です。 がん細胞の増殖を抑制する働きと血管新生を阻害する2つの働きがある薬剤です。 mTORを阻害することで、がん細胞の増殖に関わる細胞内のシグナル伝達に働きかけ、がん細胞が増殖を抑制します。また、細胞内のシグナル伝達を抑制することで、血管新生も抑制されます。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 手術や放射線療法による治療が不可能な転移性乳がんがある女性患者
  • エストロゲン受容体陽性、HER2陰性乳腺腺がん患者
  • 閉経状態が書面にて確認されている患者。閉経後の患者。卵巣放射線照射またはLH-RHアゴニスト/アンタゴニスト併用療法を行っている閉経前の患者は、無作為割付け前7日以内のスクリーニングにおける血漿/血清中エストラジオール値20pg/mL未満であること。また、スクリーニング時の妊娠検査が陰性で、医師が推奨する適切な避妊法を用いることに同意しなければならない
  • 骨への転移を主体とし、ベースライン時に少なくとも2か所の骨転移が骨シンチグラフィーで認められ、かつCT/MRIで確認された患者。なお、リンパ節転移を含む軟部組織への転移および/または内臓転移はあっても許容される
  • 転移時の治療として少なくとも1回のホルモン療法を受けている患者
  • エキセメスタンとエベロリムスを転移時のセカンドライン以降の治療法として投与することが、適切とみなされる患者
  • 補助治療または転移時の治療として非ステロイド性アロマターゼ阻害剤(レトロゾールまたはアナストロゾール)を投与後、再発/進行を示した患者
  • 治験組入れ前に骨関連事象が2回以内の患者。骨関連事象の定義は、骨痛のための体外照射療法、病的骨折、脊髄圧迫および/または整形外科的処置とする。骨関連事象が認められたことのない患者は適格としない
  • ビスホスフォネートまたはデノスマブによる治療を治験薬投与開始前に少なくとも1か月間受けている患者
  • 無症候性または軽度症候性乳がん患者
  • 適切な骨髄、肝、腎機能がある患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:女性
対象とならない人
  • 以下のいずれかのがんを有する患者 炎症性乳がん 両側性乳がんまたは2つの異なる乳がんの病歴
  • 直ちに生命を脅かすような内臓転移があり、化学療法が治療の選択肢として望ましい患者
  • 転移病変のため化学療法を受けたことのある患者、または、転移性乳がんの現在の治療法として化学療法が適切であると治験担当医師が判断する患者。ネオアジュバント療法/アジュバント療法として行われた化学療法は、治験組入れの1年以上前であれば許容
  • エベロリムスの前治療を受けた患者または治験への組入れ前に投与を開始した患者は適格外
  • 脳転移または軟膜転移が確認されている、またはその既往がある患者。神経症状がある患者は、無作為割付け前28日以内に脳の造影CTスキャンまたはMRIを行い、活動性の脳転移の可能性を除外すること。それ以外の場合、中枢神経系の画像検査は不要

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。

試験概要詳細

試験の名称 転移性HER2陰性、ホルモン受容体陽性の骨転移を有する乳癌患者に対するエキセメスタンとエベロリムス併用下での塩化ラジウム-223の第II相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験
試験の概要 本治験の目的は、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性、ホルモン受容体陽性の骨転移を有する乳癌患者を対象として、塩化ラジウム-223をエキセメスタン及びエベロリムスと併用したときの有効性及び安全性を評価することである
疾患名 乳癌
試験薬剤名 塩化ラジウム223
用法・用量 エキセメスタンとエベロリムスの併用で塩化ラジウム-223 50 kBq/kgを6サイクル投与する。その後はすべての被験者に対し、規定どおりにエキセメスタンとエベロリムスの投与を継続する
対照薬剤名 プラセボ
用法・用量 エキセメスタンとエベロリムスの併用で生理食塩水を6サイクル静注する。その後はすべての被験者に対し、規定どおりにエキセメスタンとエベロリムスの投与を継続する
試験のフェーズ フェーズ2(第2相臨床試験)
試験のデザイン 国際共同、第II相、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、並行群間試験
目標症例数 20
適格基準
  • 手術や放射線療法による治療が不可能な転移性乳癌を有する女性患者(18歳以上)
  • 組織学的又は細胞学的にエストロゲン受容体(ER)陽性、HER2陰性乳腺腺癌と診断された患者
  • 閉経状態が書面にて確認されている患者。閉経後の患者。卵巣放射線照射又はLH-RHアゴニスト/アンタゴニスト併用療法を行っている閉経前の患者は、無作為割付け前7日以内のスクリーニングにおける血漿/血清中エストラジオール値が20pg/mL未満であること。また、スクリーニング時の妊娠検査が陰性で、医師が推奨する適切な避妊法を用いることに同意しなければならない
  • 骨への転移を主体とし、ベースライン時に少なくとも2ヵ所の骨転移が骨シンチグラフィーで認められ、かつコンピュータ断層撮影(CT)/磁気共鳴画像法(MRI)で確認された患者。なお、リンパ節転移を含む軟部組織への転移及び/又は内臓転移はあっても許容される
  • 転移時の治療として少なくとも1回のホルモン療法を受けている患者 エキセメスタンとエベロリムスを転移時のセカンドライン以降の治療法として投与することが、適切とみなされる患者
  • 補助治療又は転移時の治療として非ステロイド性アロマターゼ阻害剤(レトロゾール又はアナストロゾール)を投与後、再発/進行を示した患者
  • 治験組入れ前に骨関連事象(SRE)が2回以内の患者。SREの定義は、骨痛のための体外照射療法(EBRT)、病的骨折(大きな外傷を除く)、脊髄圧迫及び/又は整形外科的処置とする。SREが認められたことのない患者は適格としない
  • ビスホスフォネート又はデノスマブによる治療を治験薬投与開始前に少なくとも1ヵ月間受けている患者
  • 無症候性又は軽度症候性乳癌の患者
  • 適切な骨髄、肝、腎機能を有する患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:女性
除外基準
  • 以下のいずれかのがんを有する患者 炎症性乳癌 両側性乳癌又は二つの異なる乳癌の病歴
  • 直ちに生命を脅かすような内臓転移を有し、化学療法が治療の選択肢として望ましい患者
  • 転移病変のため化学療法を受けたことのある患者、又は、転移性乳癌の現在の治療法として化学療法が適切であると治験担当医師が判断する患者。ネオアジュバント療法/アジュバント療法として行われた化学療法は、治験組入れの1年以上前であれば許容する
  • エベロリムスの前治療を受けた患者又は治験への組入れ前に投与を開始した患者は適格としない
  • 脳転移又は軟膜転移が確認されている、又はその既往がある患者。神経症状を有する患者は、無作為割付け前28日以内に脳の造影CTスキャン又はMRIを行い、活動性の脳転移の可能性を除外すること。それ以外の場合、中枢神経系の画像検査は不要である
主要な評価項目 症候性骨関連事象無発症生存期間(SSE-FS)
主要な評価方法 無作為割付けから26ヵ月間
副次的な評価項目 全生存期間 癌性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬使用までの期間 疼痛が増悪するまでの期間 細胞障害性化学療法施行までの期間 放射線学的無増悪生存期間(rPFS) 臨床検査値異常の発現頻度 有害事象の発現頻度 新たな悪性腫瘍の発現頻度
副次的な評価方法 無作為割付けから26ヵ月間
予定試験期間 2015年9月1日~2018年9月1日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより