PIK3CA変異陽性のHR陽性、HER2陰性進行乳がんに対するアルペリシブ+フルベストラントまたはレトロゾールの治験
治験の募集状況は、「jRCT 臨床研究等提出・公開システム」ページでご確認ください。
治験名
CDK4/6阻害剤の投与中または投与後に進行を来したPIK3CA変異陽性のホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性進行乳がん患者を対象にアルペリシブ+フルベストラントまたはレトロゾールの有効性および安全性を評価する多施設共同、非盲検、2コホート、非比較、第2相試験
治験概要:
PIK3CA変異陽性のホルモン受容体陽性、HER2陰性進行乳がんに対する治験。CDK4/6阻害薬の投与中または投与後に進行した患者さんが対象です。
アルペリシブ+フルベストラントまたはレトロゾールを投与して、有効性と安全性を評価する臨床試験です。
登録予定数は、160人。
フェーズは、2相臨床試験。
試験デザインは、非盲検、2コホート、非比較試験。
試験群1:アルペリシブ+フルベストラン
試験群2:アルペリシブ+レトロゾール
で主要評価項目は6か月時点で進行していない生存率、副次的評価項目は無増悪生存期間、奏効率、臨床的有用率、奏効持続時間、安全性などで評価します。
疾患解説:乳がん
国立がん研究センターのがん統計によると、2014年に乳がんと診断された女性は78529人です。日本人女性の12人に1人がかかるといわれ、女性のがん死亡予測数では5位と罹患数に比べると死亡数は少なくなっています。40代から徐々に増加し50代でいったん減少しますが、60代から70代にかけ増加していき、その後は減少していきます。35歳未満の乳がんは、若年性乳がんといわれ、全体でみると2.7%と少数です。
早期の乳がんでは自覚症状がすくなく、症状の進行とともに症状が現れます。自覚症状の1つが、乳房のしこりで、特徴は、硬かったり動かないことです。そのほかの症状としては、乳頭や乳輪の湿疹やただれ、乳頭からの血が混じった分泌物、えくぼのような乳房のへこみ、皮膚の赤身や腫れ、熱っぽさ、腋の下の腫れやしこり、痛みなどがあります。
乳房は、母乳をつくる小葉と母乳を乳頭まで運ぶ乳管でできていますが、約95%の乳がんは乳管の上皮細胞にできる乳管がんです。
乳がんの診断は、がんの進行度合いで分類するステージ分類とがんの性質で分類するサブタイプ分類で総合的に行われます。ステージ分類は、がんの大きさ、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移によって、0期、Ⅰ期、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC)、Ⅳ期に分類されます。
サブタイプ分類は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、HER2、Ki67の4つの要素で分類されます。ERとPgRは女性ホルモンで、この女性ホルモンに対して陽性の場合、ホルモンの刺激によってがんが増殖する性質があり、陰性の場合はホルモンには反応しません。 HER2は、がん細胞に発現しているたんぱく質で、陽性だとこの受容体に反応してがんが増殖します。 Ki67は、がんが増えようとする力の程度を示す指標で、高いほどがん細胞の増殖活性が高くなります。この4つの要素によって、5つのタイプに分類され、タイプによって薬物療法の種類が異なります。
乳がんや卵巣がんの中には、BRCA1、BRCA2の遺伝子の異常が原因で発生するものがあり、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と呼ばれています。この遺伝子に異常があっても、必ず乳がんや卵巣がんになるわけではありませんが、発症するリスクが高くなります。
サブタイプ分類
サブタイプ分類 | ホルモン受容体 | HER2 | Ki67 | |
ER | PgR | |||
ルミナルA型 | 陽性 | 陽性 | 陰性 | 低 |
ルミナルB型 (HER2陰性) | 陽性または陰性 | 弱陽性または陰性 | 陰性 | 高 |
ルミナルB型 (HER2陽性) | 陽性 | 陽性または陰性 | 陽性 | 低~高 |
HER2型 | 陰性 | 陰性 | 陽性 | − |
トリプルネガティブ | 陰性 | 陰性 | 陰性 | − |
治験薬:アルペリシブ
アルペリシブは、PI3Kを阻害する分子標的薬です。
細胞が増殖因子の刺激を受けるとPI3Kという酵素が活性化され、がん細胞が増殖します。PI3Kを抑制することで、細胞内に伝達するシグナルが抑えられ、抗腫瘍効果を発揮します。
治験薬:フルベストラント
フルベストラントは、エストロゲン受容体の分解を促進するステロイド性抗エストロゲン薬です。
エストロゲン感受性のがんでは、エストロゲンががんの増殖因子になります。
フルベストラントは、エストロゲンとエストロゲン受容体の結合を阻害することで、がんの増殖を抑制します。
非ステロイド性抗エストロゲン薬のなかには、部分的に受容体と結合するアゴニスト活性が薬剤もあるが、フルベストラントは、部分アゴニスト作用がなく、より強いエストロゲン拮抗作用を示します。
治験薬:レトロゾール
レトロゾールは、アロマターゼの活性を競合的に阻害するアロマターゼ阻害薬です。
閉経後の女性では、男性ホルモンのアンドロゲンを女性ホルモンのエストロゲンへ変換させますが、この変換に係わるのがアロマターゼという酵素です。
エストロゲン感受性のがんでは、エストロゲンががんの増殖因子になるため、アンドロゲンをエストロゲンに変換させるアロマターゼを阻害することで、がんの増殖を抑制します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
---|
|
対象とならない人 |
|
Child-Pugh分類
ポイント | 1点 | 2点 | 3点 |
---|---|---|---|
脳症 | ない | 軽度 | ときどき昏睡 |
腹水 | ない | 少量 | 中等量 |
血清ビリルビン値(mg/dL) | 2.0未満 | 2.0~3.0 | 3.0超 |
血清アルブミン値(g/dL) | 3.5超 | 2.8~3.5 | 2.8未満 |
プロトロンビン活性値(%) | 70超 | 40~70 | 40未満 |
A | 5~6点 |
---|---|
B | 7~9点 |
C | 10~15点 |
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータスPS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
スコア | 患者の状態 |
---|---|
0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | CDK 4/6阻害剤の投与中又は投与後に進行を来したPIK3CA変異陽性のホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性進行乳癌患者を対象にアルペリシブ + フルベストラント又はレトロゾールの有効性及び安全性を評価する多施設共同、非盲検、2コホート、非比較、第II相試験 |
試験の概要 | CDK4/6投与中・後に再発・進行を来したPIK3CA変異陽性乳がん患者に対し、前治療によりアルペリシブとフルベストラント併用またはレトロゾール併用の2コホートに分け、投与6ヶ月時点における無憎悪・生存患者の割合を調べる |
疾患名 | 乳がん |
試験薬剤名 | BYL719 |
用法・用量 | 経口 |
試験のフェーズ | フェーズ2(第2相臨床試験) |
試験のデザイン | 非盲検、2コホート、非比較試験 |
目標症例数 | 160 |
適格基準 |
|
除外基準 |
|
主要な評価項目 | 各コホートにおけるRECIST第1.1版による治験責任(分担)医師の判定に基づき、6ヶ月時点で進行を認めずに生存している患者の割合 |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | PFS、 ORR、 CBR、 DOR、安全性 |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2017年8月1日~2020年1月1日 |