再発転移性の子宮頸がんに対するセミプリマブの治験

治験の募集状況は、「jRCT 臨床研究等提出・公開システム外部リンク」ページでご確認ください。

上記ページにアクセスし、条件欄から「研究の名称」を選択、このページの「試験概要詳細」の「試験の名称」をコピーして、キーワード欄に貼り付け、検索してください。

治験名

再発性または転移性のプラチナ製剤抵抗性子宮頸がんを対象に、セミプリマブと治験担当医師が選択した化学療法とを比較する非盲検、無作為化、第3相試験

治験概要:

再発性転移性の子宮頸がんに対する治験。プラチナ製剤抵抗性の患者さんが対象です。
セミプリマブと治験担当医師が選択した化学療法(ペメトレキセド、ノギテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン)を比較して、全生存期間や無増悪生存期間などで評価する臨床試験です。
登録予定数は、436人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、並行群間、非盲検。
比較する対象は
試験群:セミプリマブ
対照群:治験担当医師が選択した化学療法(ペメトレキセド、ノギテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン)
で主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は無増悪生存期間、全奏効率、奏功期間、QOLなどで評価します。

疾患解説:子宮頸がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に子宮頸がんに罹患した人は、11293人です。20代後半から増えはじめ40代前半でピークとなり、その後は減少傾向になります。
子宮頸がんは、子宮の入口の子宮頸部に発生するがんです。多くの子宮頸がんの発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関わっているといわれ、子宮頸がんの患者さんの90%以上からHPVが検出されています。HPVの持続感染は、子宮頸がんやその前がん病変の発生に関係があると考えられています。
子宮頸がんの進行度は、ステージ1期~4期で分類され、さらにそれぞれのステージでA期、B期などに細分化されます。ステージは、がんの大きさ、広がり、子宮頸部周囲への浸潤、周辺や遠隔臓器への転移などで決められます。1期以前の子宮頸がんの前がん病変という段階は「子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)」と呼ばれ、CIN1(軽度)、CIN2(中等度)、CIN3(高度)に分けられています。
初期の子宮頸がんではほとんど症状がありません。進行してくると、月経中でないとき、性行為中の出血、普段と違うおりもの、月経量の増加や長引くなどの症状がでることがあります。

治験薬:セミプリマブ

セミプリマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:ペメトレキセド

ペメトレキセドは、細胞分裂に必要な葉酸に構造が類似している葉酸代謝拮抗薬です。
葉酸代謝拮抗薬の中でも、3つの酵素を阻害し主要な葉酸代謝酵素経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑え強い抗腫瘍効果を発揮します。

対照薬:ノギテカン

ノギテカンは、トポイソメラーゼ酵素を阻害する抗がん薬です。
細胞が増殖するときにDNAを複製するために、トポイソメラーゼ酵素の作用でDNAのらせん構造を変化させる必要があります。トポイソメラーゼにはI型とII型があり、I型はDNAの二重らせん構造のうち1本を切断し再結合させます。
ノギテカンは、トポイソメラーゼI型と選択的に阻害することで、がん細胞を細胞死に誘導します。

対照薬:イリノテカン

イリノテカンは、トポイソメラーゼというDNAの複製に必要な酵素を阻害する抗がん薬です。
細胞が増殖する場合、DNAの複製が必要なため、その複製に必要な酵素を阻害することで、細胞死を誘導します。
がん細胞では、活発な増殖が起こっているため、DNA複製に必要なトポイソメラーゼを阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。

対照薬:ゲムシタビン

ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。
ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。

対照薬:ビノレルビン

ビノレルビンは、細胞分裂に必要な微小管という成分に作用して抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。微小管を構成するチュブリンとうたんぱく質の結合を阻害することで、がん細胞の増殖を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 根治目的の治療選択肢がない再発性、持続性、および/または転移性子宮頸がんがある患者。許容可能な組織型は、扁平上皮がん、腺がん、および腺扁平上皮がん。肉腫および神経内分泌がんは、組織型として不適格とする
  • 再発性、持続性または転移性子宮頸がんの治療に用いられたプラチナ製剤の最終投与後6か月以内に腫瘍進行または再発が認められた患者
  • 測定可能病変がある患者
  • 全身状態(Performance Status:PS)が1以下
  • 臓器および骨髄機能に問題がない
  • 過去にベバシズマブによる治療を受けたことがある、またはベバシズマブによる治療を行わなかった理由が文書で確認できる
  • 過去にパクリタキセルによる治療を受けたことがある、またはパクリタキセルによる治療を行わなかった理由が文書で確認できる
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:女性
対象とならない人
  • 全身性免疫抑制療法を要する、重大な自己免疫疾患の所見が継続してまたは最近(5年以内)認められる患者
  • PD-1/PD-L1経路を遮断する薬剤による治療歴がある患者
  • 他の全身性の免疫調節剤による過去の治療が、登録日前28日間未満の間に実施された、または登録前90日以内の免疫関連有害事象のために実施された、または当該免疫調節剤により投与中止に至る毒性が発現した患者
  • 活動性または未治療の脳転移がある患者
  • 治験薬の初回投与前4週間以内に免疫抑制用量の全身性コルチコステロイドの投与を必要とする患者
  • 治療を要する活動性感染症がある患者
  • 過去5年以内に肺臓炎歴がある患者
  • 抗体治療に起因するアレルギー反応または急性過敏症反応の病歴が確認されている患者
  • 子宮頸がん以外の悪性腫瘍の併存、および/または治験薬の初回投与予定日から3年前までの期間に子宮頸がん以外の悪性腫瘍の既往歴がある患者。血液学的悪性疾患の患者は除外される

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称再発性又は転移性のプラチナ製剤抵抗性子宮頸がんを対象に、REGN2810と治験担当医師が選択した化学療法とを比較する非盲検、無作為化、第3相試験
試験の概要主要目的は、REGN2810又は治験担当医師が選択した(IC)化学療法のいずれかによる治療を受ける再発性又は転移性のプラチナ製剤抵抗性子宮頸がんの被験者における全生存期間(OS)を比較することである
副次目的は以下の通りである
REGN2810とIC化学療法の無増悪生存期間(PFS)を比較すること
固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)第1.1版に従い、REGN2810とIC化学療法の全奏効率(ORR)[部分奏効(PR)+完全奏効(CR)]を比較すること
REGN2810とIC化学療法の奏効期間(DOR)を比較すること
有害事象(AE)を記載することにより、REGN2810とIC化学療法の安全性プロファイルを比較すること
欧州がん治療研究機構による健康関連QOLに関する質問票−Core30(EORTC QLQ-C30)を用いて、REGN2810による治療を受ける被験者とIC化学療法による治療を受ける被験者の生活の質(QOL)を比較すること
疾患名再発性又は転移性のプラチナ製剤抵抗性子宮頸がん
試験薬剤名REGN2810
用法・用量3週ごと(Q3W)に静脈内投与
対照薬剤名治験担当医師が選択した(IC)化学療法
1. 葉酸代謝拮抗剤:ペメトレキセド
2. トポイソメラーゼI阻害剤:ノギテカン又はイリノテカン
3. ヌクレオシドアナログ:ゲムシタビン
4. ビンカアルカロイド:ビノレルビン
対照群で使用が認められている化学療法は、ICの選択肢として上述されている5つの薬剤のみである
用法・用量各IC化学療法で設定された用法・用量カルボプラチン:AUC5を3週間間隔(1~4コース)で静脈内投与
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン割り付け方法:無作為化
治験デザイン:並行群間
治験デザイン詳細:治験薬投与期間は、いずれか1つの投与群へ無作為化されることで開始される。1サイクルは6週間であり、予定投与期間は最長96週間である。投与期間は、被験者が治験薬投与を中止した時点で終了する。治験薬投与終了後、被験者は追跡調査期間へ移行し、治験依頼者及び婦人科悪性腫瘍研究機構(GOG)により、死亡又は治験終了まで継続される。330件目のOS事象が報告された後に、治験終了手順を実施する
盲検化:なし(非盲検)
主目的:治験治療
目標症例数436
適格基準
  • 根治目的の治療選択肢(化学療法を併用する又は併用しない外科手術又は放射線療法)がない再発性、持続性、及び/又は転移性子宮頸がんを有する患者。許容可能な組織型は、扁平上皮癌、腺癌、及び腺扁平上皮癌である。肉腫及び神経内分泌癌は、組織型として不適格とする
  • 再発性、持続性又は転移性子宮頸がんの治療に用いられたプラチナ製剤の最終投与後6ヵ月以内に腫瘍進行又は再発が認められた患者
  • RECIST 1.1により定義される測定可能病変を有する患者
  • Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Statusが1以下
  • 18歳以上
  • 臓器及び骨髄機能に問題がない
  • 過去にベバシズマブによる治療を受けたことがある、又はベバシズマブによる治療を行わなかった理由が文書で確認できる
  • 過去にパクリタキセルによる治療を受けたことがある、又はパクリタキセルによる治療を行わなかった理由が文書で確認できる
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:女性
除外基準
  • 全身性免疫抑制療法を要する、重大な自己免疫疾患の所見が継続して又は最近(5年以内)認められる患者
  • PD-1/PD-L1経路を遮断する薬剤による治療歴がある患者
  • 他の全身性の免疫調節剤(抗PD-1/PD-L1製剤を除く)による過去の治療が、登録日前28日間未満の間に実施された、又は登録前90日以内の免疫関連有害事象のために実施された、又は当該免疫調節剤により投与中止に至る毒性が発現した患者
  • 活動性又は未治療の脳転移がある患者
  • 治験薬(REGN2810又はIC化学療法)の初回投与前4週間以内に免疫抑制用量の全身性コルチコステロイド(1日1回10 mg超のprednisone相当)の投与を必要とする患者
  • 治療を要する活動性感染症がある患者
  • 過去5年以内に肺臓炎歴を有する患者
  • 抗体治療に起因するアレルギー反応又は急性過敏症反応の病歴が確認されている患者
  • 子宮頸がん以外の悪性腫瘍の併存、及び/又は治験薬(REGN2810もしくはIC化学療法)の初回投与予定日から3年前までの期間に子宮頸がん以外の悪性腫瘍の既往歴がある患者(転移又は死亡のリスクを無視できる腫瘍を除く)。血液学的悪性疾患(例:慢性リンパ性白血病)の患者は除外される
主要な評価項目生存期間(OS)
主要な評価方法評価期間:無作為化の時点から最長約32ヵ月
副次的な評価項目無増悪生存期間(PFS)
副次的な評価方法評価期間:無作為化の時点から、RECIST 1.1を用いて判定した腫瘍進行が初めて記録された日、又は死因を問わない死亡まで、最長約32ヵ月
副次的な評価項目全奏効率(ORR)
副次的な評価方法評価期間:無作為化の時点から、RECIST 1.1を用いて判定した腫瘍進行が初めて記録された日、又は死因を問わない死亡まで、最長約32ヵ月
副次的な評価項目奏効期間(DOR)
副次的な評価方法評価期間:奏効(CR又はPR)が最初に認められた日から腫瘍の進行(RECIST 1.1に基づく)を最初に記録した日、又は死因を問わない死亡まで、最長約32ヵ月
副次的な評価項目生活の質(QOL)
副次的な評価方法QOLは欧州がん治療研究機構による健康関連QOLに関する質問票−Core30(EORTC QLQ-C30)を用いて評価する。 評価期間:無作為化の時点から最長100週間
副次的な評価項目治験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)[安全性及び忍容性の評価]
副次的な評価方法TEAEには、有害事象(AE)、重篤な有害事象(SAE)、死亡、及び検査値異常を含む。 評価期間:無作為化の時点から最長約32ヵ月
予定試験期間

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより