慢性骨髄性白血病に対するアスシミニブの治験

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治験名

2剤以上のチロシンキナーゼ阻害薬による前治療を受けた慢性期の慢性骨髄性白血病患者を対象に、経口アスシミニブをボスチニブと比較する第3相、ランダム化、非盲検、多施設共同試験

治験概要:

BCR-ABLの比率が1%以上の慢性骨髄性白血病に対する治験。2剤以上のチロシンキナーゼ阻害薬により治療歴がある患者さんが対象です。
アスシミニブとボスチニブを比較して、分子遺伝学的大寛解率で評価する試験です。
登録予定数は222人。
試験デザインは、ンダム化、非盲検、多施設共同試験。
フェーズは、第3相臨床試験。
比較する対象は
対象群1:アスシミニブ
対象群2:ボスチニブ
で主要評価項目は分子遺伝学的大寛解率(24週目)、副次的な評価項目は分子遺伝学的大寛解率(96週目)などで評価します。

疾患解説:慢性骨髄性白血病

白血病は、血液細胞ががん化する血液のがんです。
白血病は、造血幹細胞のうち骨髄系とリンパ系の2つと症状の違いによる急性と慢性の2つの分類から、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分類されます(表1)。
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に白血病に罹患した人は、約12000人です。
慢性骨髄性白血病は、年間10万人に1人程度が発症するといわれ、高発症年齢中央値は53歳であるため、高齢化の進展とともに患者数は増加傾向にあります。男女別では男性にやや多いと報告されています。
慢性骨髄性白血病は、発生原因となる遺伝子がわかっています。9番と22番の染色体の一部が入れ替わり、つながった短い染色体(フィラデルフィア染色体)が生じています。フィラデルフィア染色体は、BCR遺伝子とABL遺伝子が結合したBCR-ABL遺伝子ができており、これが慢性骨髄性白血病の原因遺伝子です(図2)。このBCR-ABL遺伝子は、Bcr-Ablたんぱくをつくり、Bcr-Ablたんぱくは、白血病細胞を増やせという指令を出すため、白血病細胞が無限に増えていきます。
慢性骨髄性白血病は、慢性期、移行期、急性期の3段階にわかれています。慢性期では、進行が遅く、この時点の白血病細胞は正常な機能がまだあるため、自覚症状はほとんどありません。移行期では、貧血や全身のだるさ、発熱、脾臓の腫れなどの症状が起こってきます。急性期になると、急性白血病とおなじような症状があらわれ、貧血や出血、高熱などの症状がおこります。

表1 白血病の主な分類

骨髄性リンパ性
急性急性骨髄性白血病
(AML: acute myeloid leukemia)
急性リンパ性白血病
(ALL: acute lymphoblastic leukemia)
慢性慢性骨髄性白血病
(CML: chronic myelogenous leukemia)
慢性リンパ性白血病
(CLL: chronic lymphocytic leukemia)
図2 CMLの原因となるフィラデルフィア染色体とBCR-ABL遺伝子

治験薬:アスシミニブ

アスシミニブは、BCR-ABL特異的なアロステリック阻害薬です。
細胞の表面には受容体(レセプター)という細胞外の刺激をうける物質があり、この受容体の活性部位にホルモンや神経伝達物質などの分子が結合することで、細胞内にシグナルが伝達し、細胞の活性が変化します。そのため、分子標的薬は、この受容体に結合して細胞内へのシグナル伝達を抑制するタイプや、細胞内のシグナルを抑制するタイプがあります。受容体の活性部位とは別の場所に取りつき、受容体の形状を変化させることで活性の度合いを調節するタイプは、アロステリック阻害薬といいます。
フィラデルフィア染色体陽性の慢性骨髄性白血病では、BCR-ABL遺伝子が生じており、BCR-ABL遺伝子によって作られるBcr-Ablたんぱくは、白血病細胞の増殖を刺激します。
アスシミニブは、ABL1のポケットに結合し、ABL1と類似の作用を発揮することで、酵素の活性を調整することで抗腫瘍効果を発揮します。

対照薬:ボスチニブ

ボスチニブは、Bcr-Ablチロシンキナーゼを阻害する分子標的薬です。 ボスチニブは、AblとSrcに加え、イマチニブ耐性型のBcr-Abl酵素を阻害します。また野生型やイマチニブ耐性の慢性骨髄性白血病の細胞に対して増殖の阻害やシグナル伝達を阻害します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 慢性期の慢性骨髄性白血病と診断された患者
  • BCR-ABL の比率が1%IS以上の患者
  • 過去にTKIによる前治療を2剤以上受けている患者
  • TKIによる最後の前治療が治療失敗または不耐容の患者
    慢性期の慢性骨髄性白血病患者の無効の定義は以下のとおりで、以下の基準を1つ以上満たす:
     治療開始から3か月後:CHRが達成されていないか、分裂期細胞のPh陽性率が95%超
     治療開始から6か月後:BCR-ABLの比率が10%IS超および/または分裂期細胞のPh陽性率が65%超
     治療開始から12か月後:BCR-ABLの比率が10%IS超および/または分裂期細胞のPh陽性率が35%超
     治療開始後の任意の時点:CHR、CCyRまたはPCyRの消失
     治療開始後の任意の時点:新たなBCR-ABL変異の出現
     治療開始後の任意の時点:連続する2回の検査で確認されたMMRの消失。このうち1回の検査では、BCR-ABLの比率が1%IS以上でなければならない
     治療開始後の任意の時点:Ph陽性細胞における新たなクローン性染色体異常:CCA/Ph+
    不耐容は以下のとおり:
     非血液学的不耐容:用量調節(ただし、効果が既に十分でない場合は患者の最大限の利益のため減量は考慮しない)を含む最適な管理に反応しないグレード3または4の毒性若しくは持続性のグレード2の毒性を治療中に発現した場合
     血液学的不耐容:製造者により推奨されている最低用量に減量した後の治療中にグレード3または4の毒性(絶対好中球数[ANC]または血小板)が再発した場合
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 過去にT315I変異、V299L変異が認められたことのある患者
  • 過去のAP/BCへの進行後に慢性骨髄性白血病の慢性期に再度至ったことが分かっている患者
  • 過去に造血幹細胞移植を受けたことのある患者
  • 同種造血幹細胞移植を受けることを予定している患者
  • 以下のいずれかを含む心臓の異常又は心臓の再分極異常を有する患者:
    治験薬投与開始前6か月以内の心筋梗塞、狭心症、冠動脈バイパス術の既往
    臨床的に重要な不整脈、完全左脚ブロック、高度房室ブロック
    QTcFが450msec以上(男性患者の場合)または460msec以上(女性患者の場合)
    QT延長症候群、特発性突然死または先天性QT延長症候群の家族歴、または以下のいずれかがある
     是正されていない低カリウム血症または低マグネシウム血症、心不全の既往歴、または臨床的に重要な徐脈/症候性徐脈の既往歴を含むトルサード ド ポアントの危険因子
     QT間隔を延長させるリスクがあるか、トルサード ド ポアントを引き起こすことが知られている薬剤を併用していて、治験薬投与の7日前に投与を中止するか、他の安全な薬剤に変更することができない
     QTcF間隔を測定することができない
  • 1年以内にアミラーゼまたはリパーゼ上昇の既往がある患者(ただし、胆石、外傷または医学的手順に伴って生じたと考えられるものを除く)
  • 過去1年以内の急性膵炎の既往、または慢性膵炎の既往のある患者
  • 過去3年以内に他の活動性悪性腫瘍の既往のある患者(皮膚基底細胞がんの既往または合併、根治的に治療された上皮内がんの既往を除く)
  • 急性または慢性肝疾患の既往がある患者
  • 過去にボスチニブの投与を受けたことがある患者

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

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試験概要詳細

試験の名称2剤以上のチロシンキナーゼ阻害薬による前治療を受けた慢性期の慢性骨髄性白血病患者(CML-CP)を対象に、経口ABL001をボスチニブと比較する第III 相、ランダム化、非盲検、多施設共同試験
試験の概要2剤以上のチロシンキナーゼ阻害薬 による治療経験があり、スクリーニング時のBCR-ABLの比率が1% IS 以上のCML-CP患者の治療におけるABL001の有効性をボスチニブと比較する試験
疾患名慢性骨髄性白血病
試験薬剤名アスシミニブ
用法・用量経口
対照薬剤名ボスチニブ
用法・用量経口
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン
目標症例数
適格基準
  • 慢性期の慢性骨髄性白血病と診断された患者
  • BCR-ABLの比率が1%IS以上の患者
  • 過去にTKIによる前治療を2剤以上受けている患者
  • TKIによる最後の前治療が治療失敗又は不耐容の患者(2013ELNガイドライン[Bacarrani 2013]より改変)
    1.CML-CP患者(最後の治療を開始した時点でCP)における無効の定義は以下のとおりとする。患者は以下の基準を1つ以上満たしていなければならない:
    治療開始から3ヵ月後:CHRが達成されていないか、分裂期細胞のPh陽性率が95%超
    治療開始から6ヵ月後:BCR-ABLの比率が10%IS超及び/又は分裂期細胞のPh陽性率が65%超
    治療開始から12ヵ月後:BCR-ABLの比率が10%IS超及び/又は分裂期細胞のPh陽性率が35%超
    治療開始後の任意の時点:CHR、CCyR又はPCyRの消失
    治療開始後の任意の時点:新たなBCR-ABL変異の出現
    治療開始後の任意の時点:連続する2回の検査で確認されたMMRの消失。このうち1回の検査では、BCR-ABLの比率が1% IS以上でなければならない
    治療開始後の任意の時点:Ph陽性細胞における新たなクローン性染色体異常:CCA/Ph+
    2.不耐容は以下のとおり定義する:
    非血液学的不耐容:用量調節(ただし、効果が既に十分でない場合は患者の最大限の利益のため減量は考慮しない)を含む最適な管理に反応しないグレード3又は4の毒性若しくは持続性のグレード2の毒性を治療中に発現した場合
    血液学的不耐容:製造者により推奨されている最低用量に減量した後の治療中にグレード3又は4の毒性(絶対好中球数[ANC]又は血小板)が再発した場合
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 過去のAP/BCへの進行後にCMLの慢性期に再度至ったことが分かっている患者
  • 過去に造血幹細胞移植を受けたことのある患者
  • 同種造血幹細胞移植を受けることを予定している患者
  • 以下のいずれかを含む心臓の異常又は心臓の再分極異常を有する患者:
    治験薬投与開始前6ヵ月以内の心筋梗塞(MI)、狭心症、冠動脈バイパス術(CABG)の既往
    臨床的に重要な不整脈(例:心室性頻脈)、完全左脚ブロック、高度房室ブロック(例:二束ブロック、モービッツ2型及び第三度房室ブロック)
    QTcFが450 msec以上(男性患者の場合)又は460 msec以上(女性患者の場合)
    QT延長症候群、特発性突然死又は先天性QT延長症候群の家族歴、又は以下のいずれかを有する
     是正されていない低カリウム血症又は低マグネシウム血症、心不全の既往歴、又は臨床的に重要な徐脈/症候性徐脈の既往歴を含むトルサード ド ポアント(TdP)の危険因子
     QT間隔を延長させるリスクを有するか、トルサード ド ポアントを引き起こすことが知られている薬剤を併用していて、治験薬投与の7日前に投与を中止するか、他の安全な薬剤に変更することができない
     QTcF間隔を測定することができない
  • 1年以内にアミラーゼ又はリパーゼ上昇の既往を有する患者(ただし、胆石、外傷又は医学的手順に伴って生じたと考えられるものを除く)
  • 過去1年以内の急性膵炎の既往、又は慢性膵炎の既往のある患者
  • 過去3年以内に他の活動性悪性腫瘍の既往のある患者(皮膚基底細胞癌の既往又は合併、根治的に治療された上皮内癌の既往を除く)
  • 急性又は慢性肝疾患の既往を有する患者
  • 過去にボスチニブの投与を受けたことがある患者
主要な評価項目分子遺伝学的大寛解(MMR)率
主要な評価方法
副次的な評価項目
副次的な評価方法
予定試験期間2018年3月~2024年6月

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより