骨髄異形成症候群または慢性骨髄単球性白血病に対するグアデシタビンの治験
治験の募集状況は、「医薬品情報データベース 臨床試験情報」ページでご確認ください。
治験名
メチル化阻害剤の前治療歴を有する成人の骨髄異形成症候群または慢性骨髄単球性白血病患者を対象としたグアデシタビンと医師選択による治療法の治療効果を比較する第3相、多施設共同、無作為化、非盲検試験
治験概要:
骨髄異形成症候群または慢性骨髄単球性白血病に対する治験。メチル化阻害薬の前治療歴がある患者さんが対象です。
グアデシタビンと医師選択による治療法(TC)を比較して、主要評価項目として全生存期間で評価する試験です。
登録予定数は408人。
試験デザインは、多施設共同、非盲検、無作為化試験。
フェーズは、第3相臨床試験。
比較する対象は
対象群1:グアデシタビン
対象群2:医師選択による治療法
で主要評価項目は全生存期間などで評価します。
疾患解説:骨髄異形成症候群/慢性骨髄単球性白血病
骨髄異形成症候群の国内の患者数は、10万人あたり1~2人前後と推定されており、60歳を超えると急激に増加します。
骨髄異形成症候群は、血液細胞の元となる造血幹細胞に異常が起こった、骨髄系細胞に由来する血液がんの1つで、さまざまな病態があるため症候群と呼ばれています(図1)。骨髄系細胞由来の血液がんは、急性骨髄性白血病や慢性骨髄性白血病があります。
がん化した骨髄異形成症候群の造血幹細胞は、機能の異常や形状の異常が認められます。そのため未熟なまま分化がとまったり、成熟したように見えても細胞が壊れたりすることで血液細胞が減っていきます。赤血球、白血球、血小板に同時に異常が発生することもありますが、それぞれ分化する過程で異常が生じて、徐々に進行していく場合もあります。
発症原因のほとんどは不明ですが、全症例の約10%前後は治療関連骨髄異形成症候群といわれています。治療関連骨髄異形成症候群は、殺細胞性抗がん剤や放射線治療を受けた数年後に発症した症例です。
骨髄異形成症候群の症状は、血液細胞の減少と正常に機能しなくために起こります。赤血球が減少すると倦怠感、動悸、息切れなどがあらわれ、好中球が減少すると感染症にかかりやくなり発熱が起こります。血小板が減少すると、鼻血や皮膚・粘膜に点状の出血が現れることがあります。
慢性骨髄単球性白血病は、単球の増加を特徴とした骨髄増殖性腫瘍と骨髄異形成症候群の性質を併せ持つ白血病です。骨髄内で異常に白血球の一種である単球が増殖することで、白血球、赤血球、血小板などの正常な血液細胞が締め出されることでさまざまな症状が起こります。
主な症状は、倦怠感、体重減少、発熱、寝汗のほか、感染症や出血などがあります。白血球が増加している場合は、肝腫大や脾腫大を伴うこともあります。

治験薬:グアデシタビン
グアデシタビンは、次世代の低分子DNAメチル化阻害薬です。注射用デシタビンと比べ、体内で長く作用するようにデザインされている少量を皮下注射する薬剤です。
がん細胞では、DNAのメチル化が活性しているため、がん抑制遺伝子が抑制されています。グアデシタビンは、DNAの低メチル化を誘導することで、がん抑制遺伝子を発現させることで、抗腫瘍効果を発揮します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
Child-Pugh分類
Child-Pugh分類は、肝障害度を示す指標です。脳症、腹水、血清ビリルビン濃度、血清アルブミン濃度、プロトロンビン活性値の5項目を1~3点で評価し、その合計点によりA~Cの3段階に分類します。もっとも障害度が低いのがA、高いのはCです。
ポイント | 1点 | 2点 | 3点 |
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脳症 | ない | 軽度 | ときどき昏睡 |
腹水 | ない | 少量 | 中等量 |
血清ビリルビン値(mg/dL) | 2.0未満 | 2.0~3.0 | 3.0超 |
血清アルブミン値(g/dL) | 3.5超 | 2.8~3.5 | 2.8未満 |
プロトロンビン活性値(%) | 70超 | 40~70 | 40未満 |
A | 5~6点 |
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B | 7~9点 |
C | 10~15点 |
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | メチル化阻害剤の前治療歴を有する成人の骨髄異形成症候群(MDS)又は慢性骨髄単球性白血病(CMML)患者を対象としたグアデシタビン(SGI-110)と医師選択による治療法の治療効果を比較する第III相、多施設共同、無作為化、非盲検試験 |
試験の概要 | メチル化阻害剤(アザシチジン、デシタビン、又はその両方)の前治療歴を有する成人のMDS又はCMML患者を対象に、グアデシタビンと医師選択による治療法(TC)の有効性・安全性を比較する |
疾患名 | 骨髄異形成症候群又は慢性骨髄単球性白血病 |
試験薬剤名 | グアデシタビン(SGI-110) |
用法・用量 | 60mg/m2を1日1回5日間(1日目-5日目)皮下投与、1サイクル28日間 |
対照薬剤名 | キロサイド(シタラビン) |
用法・用量 | 20mg/m2を1日1回14日間皮下又は静脈内投与、1サイクル28日間 |
対照薬剤名 | キロサイド(シタラビン)及びダウノマイシン又はイダマイシン又はノバントロン |
用法・用量 | シタラビン100~200mg/m2/日を7日間持続点滴し、アントラサイクリン(ダウノルビシン45~60mg/m2/日、イダルビシン9~12mg/m2/日 |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 多施設共同、非盲検、無作為化試験 |
目標症例数 | 408 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | OS:無作為化から死亡日までの日数 |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | 輸血非依存性:治験治療開始以降いずれかの時点で8週間(以上)連続して輸血を必要としていない被験者数及びその割合 輸血非依存性の骨髄CR(mCR) 無作為化後の1年生存率 無白血病生存期間 被験者が生存し、かつ入院治療が行われていない日数 CR、mCR、PR、及びHIを含む治療効果:IWG 2006年版効果判定規準を用いて判定 効果持続期間 治験治療期間中の赤血球又は血小板輸血回数 健康関連QOL 有害事象 30日目及び60日目の全死因死亡率 |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | ~2019年3月 |