慢性期慢性骨髄性白血病に対するポナチニブ投与量別の治験
治験の募集状況は、「医薬品情報データベース 臨床試験情報」ページでご確認ください。
治験名
各用量での有効性および安全性の特性を明らかにするための治療抵抗性の慢性期慢性骨髄性白血病患者を対象としたポナチニブの無作為化非盲検第2相試験
治験概要:
治療抵抗性の慢性期慢性骨髄性白血病に対する治験。少なくとも2つのチロシンキナーゼ阻害剤による前治療を受けて治療に抵抗性を示したか、T315I変異がある患者さんが対象です。
ポナチニブ45mg、30mgまたは15mgのいずれかを開始容量として1日1回投与して、各用量で有効性と安全性の特性を明らかにするための臨床試験です。
登録予定数は、276人。
フェーズは、2相臨床試験。
試験デザインは、無作為化非盲検試験。
試験群:ポナチニブ45mg、30mgまたは15mgのいずれかを開始容量として1日1回投与
で主要評価項目は有効性で評価します。
疾患解説:慢性骨髄性白血病
白血病は、血液細胞ががん化する血液のがんです。
白血病は、造血幹細胞のうち骨髄系とリンパ系の2つと症状の違いによる急性と慢性の2つの分類から、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分類されます(表1)。
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に白血病に罹患した人は、約12000人です。
慢性骨髄性白血病は、年間10万人に1人程度が発症するといわれ、高発症年齢中央値は53歳であるため、高齢化の進展とともに患者数は増加傾向にあります。男女別では男性にやや多いと報告されています。
慢性骨髄性白血病は、発生原因となる遺伝子がわかっています。9番と22番の染色体の一部が入れ替わり、つながった短い染色体(フィラデルフィア染色体)が生じています。フィラデルフィア染色体は、BCR遺伝子とABL遺伝子が結合したBCR-ABL融合遺伝子ができており、これが慢性骨髄性白血病の原因遺伝子です(図2)。このBCR-ABL融合遺伝子は、Bcr-Ablたんぱく質をつくり、Bcr-Ablたんぱく質は、白血病細胞を増やせという指令を出すため、白血病細胞が無限に増えていきます。
慢性骨髄性白血病は、慢性期、移行期、急性期の3段階にわかれています。慢性期では、進行が遅く、この時点の白血病細胞は正常な機能がまだあるため、自覚症状はほとんどありません。移行期では、貧血や全身のだるさ、発熱、脾臓の腫れなどの症状が起こってきます。急性期になると、急性白血病とおなじような症状があらわれ、貧血や出血、高熱などの症状がおこります。
表1 白血病の主な分類
骨髄性 | リンパ性 | |
急性 | 急性骨髄性白血病 (AML: acute myeloid leukemia) | 急性リンパ性白血病 (ALL: acute lymphoblastic leukemia) |
慢性 | 慢性骨髄性白血病 (CML: chronic myelogenous leukemia) | 慢性リンパ性白血病 (CLL: chronic lymphocytic leukemia) |

治験薬:ポナチニブ
ポナチニブは、Bcr-Ablチロシンキナーゼを阻害する分子標的薬です。
慢性骨髄性白血病では、染色体に異常が起こることで、異常なたんぱく質であるBcr-Ablたんぱく質が作られ、このBcr-Ablたんぱく質が産出されると無秩序な細胞増殖が起こります。
ポナチニブは、野生型のBcr-Ablたんぱく質やほかのチロシンキナーゼに抵抗性を示す変異型Bcr-Ablたんぱく質のT315I変異も阻害します。
T315I変異は、腫瘍細胞の耐性獲得変異としては高い難治性を示す耐性変異です。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
---|---|
0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 各用量での有効性及び安全性の特性を明らかにするための治療抵抗性の慢性期慢性骨髄性白血病患者を対象としたポナチニブの無作為化非盲検第II相試験 |
試験の概要 | 3種類の開始用量で有効性及び安全性の特性を明らかにするための多施設共同無作為化非盲検第II相試験である。少なくとも2つのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による前治療を受けて治療に抵抗性を示したか、T315I変異を有する慢性期慢性骨髄性白血病患者を対象とする |
疾患名 | 慢性期慢性骨髄性白血病 |
試験薬剤名 | ポナチニブ(AP24534) |
用法・用量 | ポナチニブ45mg、 30mgまたは15mgのいずれかを開始用量とし1日1回投与する |
試験のフェーズ | フェーズ2(第2相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化非盲検試験 |
目標症例数 | 276 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | 各開始用量群での12ヵ月時点の1%以下のBCR-ABL1 IS |
副次的な評価項目 | 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2016年3月18日~2020年8月31日 |