MSI-H・dMMRを有する大腸がんに対するニボルマブ+イピリムマブの治験

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治験名

ONO-4538-87

高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)がある転移性結腸・直腸がんの被験者を対象に、ニボルマブ単独療法、ニボルマブとイピリムマブの併用療法または治験医師選択化学療法を評価する無作為化第3b相試験

治験概要:

転移性結腸・直腸がんに対する治験。高頻度マイクロサテライト不安定性またはミスマッチ修復機構欠損のある患者さんが対象です。
ニボルマブ+イピリムマブ併用、ニボルマブ単剤と化学療法を比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、494人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、多施設共同非盲検無作為化試験。
試験群:ニボルマブ+イピリムマブ併用
試験群:ニボルマブ単剤
対照群:化学療法
無増悪生存期間、奏効率、全生存期間、奏効期間などで評価します。

疾患解説:大腸がん

国立がん研究センターのがん統計の2014年の全国推計値によると、大腸がんに罹った人は、男性77504人、女性57930人、合計135434人で男性が多い傾向です。40代後半から徐々に増えはじめ、男性は70代をピークにその後は減少しますが、女性は、いったん70代で平行線になり、80代からさらに増加していきます。
大腸がんの発生原因は、生活習慣や身体的な特徴と関連があるといわれています。生活習慣では、喫煙、飲酒、牛・豚・羊などの赤肉の摂取、ベーコン・ハム・ソーセージなどの加工肉の摂取などです。身体的な特徴は、体脂肪率の高い人、腹部の肥満、高身長などがあります。また、家族歴や遺伝子にも関連があるといわれています。
大腸がんの症状は、早期の段階では自覚症状はなく、進行するにしたがって症状がでてきます。血便、下血、便が細くなる、便が残る感じがするなどの症状がでます。排便に伴う自覚症状が多く、特に便に血が混じる血便や腸内のがんからの出血による赤色の便、もしくは赤黒い便、便の表面に血液が付着する下血が多く現れます。しかし、血便や下血は痔の症状でもみられるため、必ずしも大腸がんの症状とはかぎりません。
大腸は、小腸から続く約2mの消化管です。口側から「虫垂」、「盲腸」、「結腸」、「直腸S状部」、「直腸」で構成され、括約筋がある肛門管に続きます。結腸は、盲腸から上に向かう「上行結腸」、左上腹部へ向かう「横行結腸」、S状結腸に向かって下る「下行結腸」、S状のカーブを描く「S状結腸」に区別されています。さらに、S状結腸と直腸の間を「直腸S状部」、直腸の上部を「上部直腸」、下部を「下部直腸」に区別されます。大腸がんのそれぞれの部位で発生頻度は異なります。2000~2002年にかけて大腸がん手術を行った17449の症例報告から、大腸がんの部位別発生率では、直腸がんとS状結腸がんが多くなっています。
大腸がんは、がん化した元の細胞の組織の違いによって、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がんの3種類に分類されます。3つのうち、多くは腺がんで、腺がんはさらに6種類に分類されます。
大腸がんは、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層で構成されており、大腸がんは、一番内側の粘膜から発生し進行するほど外側の層へ浸潤していきます。この5つの層のどこまでがんが広がっているかを示すのが深達度です。深達度は6段階に分類されます。
大腸がんのステージ分類は、この深達度にリンパ節への転移の程度、遠隔臓器への転移の程度で決定されます。

腸の構造

大腸の部位別発生頻度

大腸の部位発生頻度
直腸がん26.4%
S状結腸がん26.4%
上行結腸がん13.6%
直腸S状部がん12.5%
横行結腸がん9.2%
盲腸がん6.5%
下行結腸がん4.8%

大腸癌全国登録(大腸癌研究会)より作成

大腸がんの深達度

大腸がんの進行度分類

遠隔転移M0M1
リンパ節転移N0N1(N1a/N1b)N2aN2b/N3M1aM1bM1c
壁深達度Tis0Nに関係なく
T1a・T1bIIIIAIIIAIIIBIVAIVBIVC
T2IIIAIIIBIIIB
T3IIAIIIBIIIBIIIC
T4aIIBIIIBIIICIIIC
T4bIICIIICIIICIIIC

大腸癌取扱い規約(第9版)より作成

治験薬:ニボルマブ

ニボルマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:イピリムマブ

イピリムマブは、抗CTLA-4抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。イピリムマブは、がん細胞を攻撃する活性化T細胞とT細胞を制御する制御性T細胞状に発現するCTLA-4と抗原提示細胞状に発現しているCD80とCD86との結合を阻害することで、がんを攻撃するT細胞を増強します。
また、がん細胞を攻撃するT細胞を抑制する制御性T細胞を抑制することで、がん免疫反応を促進させます。

対照薬:オキサリプラチン

オキサリプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。オキサリプラチンは、第2世代の白金製剤にさらに改変が行われ、新たな適応を獲得した第3世代の白金製剤です。 〇

対照薬:ロイコポリン

ロイコボリンは、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する薬です。
フルオロウラシルは、DNAの合成阻害、RNAの機能障害によるがん細胞を細胞死に誘導する代謝拮抗薬です。
DNAを構成する主な成分はピリミジン塩基といわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどです。フルオロウラシルは、このピリミジン塩基と似たような構造で、DNAが合成されるときにピリミジン塩基の代わりに取り込まれることで、DNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。
ロイコボリンは、体内でフルオロウラシルの代謝活性物質と強固な複合体を作り、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強します。

対照薬:フルオロウラシル

フルオロウラシルは、DNAの合成阻害、RNAの機能障害によるがん細胞を細胞死に誘導する代謝拮抗薬です。
DNAを構成する主な成分はピリミジン塩基といわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどです。フルオロウラシルは、このピリミジン塩基と似たような構造で、DNAが合成されるときにピリミジン塩基の代わりに取り込まれることで、DNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。

対照薬:イリノテカン

イリノテカンは、トポイソメラーゼというDNAの複製に必要な酵素を阻害する抗がん薬です。
細胞が増殖する場合、DNAの複製が必要なため、その複製に必要な酵素を阻害することで、細胞死を誘導します。
がん細胞では、活発な増殖が起こっているため、DNA複製に必要なトポイソメラーゼを阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。

対照薬:ベバシズマブ

ベバシズマブは、血管内細胞増殖因子(VEGF)のVEGF-Aとその受容体(VEGFR)のVEGFR-1、VEGFR-2の結合を阻害する血管新生阻害薬です。
がん細胞は、VEGFによって血管内皮細胞の増殖を刺激することで、新しい血管をがん細胞までのばし、栄養や酸素を取り入れます。また、この血管は、がん細胞の血行転移の経路にもなると考えられています。
ベバシズマブは、血管新生を阻害することでがん細胞が栄養や酸素を取り込めないように兵糧攻めにして、増殖を抑制します。

対照薬:セツキシマブ

セツキシマブは、上皮成長因子受容体(EGFR)を選択的に結合する分子標的薬です。
EGFRは、細胞増殖に必要なシグナルを受けとる受容体です。がん細胞の表面にあるEGFRにシグナルが伝わり異常な細胞増殖を起こします。セツキシマブは、がん細胞の表面にあるEGFRと結合することで、細胞増殖に関わるシグナルを阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 前治療の有無を問わず、再発または転移大腸がんが組織学的に確認された、手術適応ではない患者
  • CTまたはMRIによる測定可能病変がある患者
  • 全身状態(Performance status:PS)が1以下の患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗CTLA-4抗体、または特異的にT細胞共刺激経路または免疫チェックポイント経路を標的とする他の抗体や薬剤による治療歴のある患者。抗腫瘍ワクチンまたは他の免疫刺激抗腫瘍薬による治療歴も含む
  • 活動性の自己免疫疾患が確認された、または疑いのある患者
  • 間質性肺疾患または肺臓炎の既往がある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)又はミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有する転移性結腸・直腸がんの被験者を対象に、ニボルマブ単独療法、ニボルマブとイピリムマブの併用療法又は治験医師選択化学療法を評価する無作為化第IIIb相試験(ONO-4538-87)
試験の概要ニボルマブとイピリムマブの併用療法群又はニボルマブ単独療法群又は化学療法群に無作為割付されたdMMR/MSI-H mCRC有する転移性結腸・直腸がん患者に対する有効性及び安全性を比較する
疾患名結腸・直腸がん
試験薬剤名Nivolmab(ONO-4538/BMS-936558)、Ipimlimumab(BMS-734016)
用法・用量静脈内投与
対照薬剤名Oxaliplatin
用法・用量静脈内投与
対照薬剤名Leucovorin(folinicacid)
用法・用量静脈内投与
対照薬剤名Fluorouracil
用法・用量静脈内投与
対照薬剤名Irinotecan
用法・用量静脈内投与
対照薬剤名Bevacizumab
用法・用量静脈内投与
対照薬剤名Cetuximab
用法・用量静脈内投与
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン多施設共同非盲検無作為化試験
目標症例数494
適格基準
  • 化学療法及び/又はがん標的薬による前治療の有無を問わず、再発又は転移CRCが組織学的に確認された、手術適応ではない患者
  • RECISTガイドライン1.1版に基づき、CT又はMRIによる測定可能病変を有する患者
  • ECOGのPerformance statusが1以下の患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗CTLA-4抗体、又は特異的にT細胞共刺激経路又は免疫チェックポイント経路を標的とする他の抗体や薬剤による治療歴のある患者。これには抗腫瘍ワクチン又は他の免疫刺激抗腫瘍薬による治療歴も含まれる
  • 活動性の自己免疫疾患が確認された、又は疑いのある患者
  • 間質性肺疾患又は肺臓炎の既往を有する患者
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法PFS
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
薬物動態/pharmacokinetics
副次的な評価方法 ORR
OS
DOR
予定試験期間2019年7月1日~2025年2月28日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより