進行・再発大腸がんに対するトリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ併用療法の治験
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治験名
切除不能進行・再発大腸がんの2次治療患者を対象としたフルオロピリミジン+イリノテカン+ベバシズマブ療法とトリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ療法のランダム化比較第2/3相試験
治験概要:
切除不能、進行・再発大腸がんを対象とした治験。
フルオロピリミジン(5-FU/レボホリナート、カペシタビン、 TS-1) +オキサリプラチンにベバシズマブまたは抗EGFR抗体(セツキシマブまたはパニツムマブ:RAS野生型のみ)を併用した1次化学療法を受け、1次化学療法に不応となった患者さんが対象です。
フルオロピリミジン+イリノテカン+ベバシズマブ療法「FOLFIRI+ベバシズマブ療法またはTS-1+イリノテカン +ベバシズマブ療法(3週1サイクルまたは4週1サイクル)」と、 トリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ療法を比較して全生存期間で評価する第2・3相試験です。
登録予定数は524人。
試験デザインは、非盲検ランダム化比較試験。
フェーズは、第2/3相臨床試験。
比較する対象は
対象群1:トリフルリジン+ベバシズマブ
対象群2:FOLFIRI+ベバシズマブまたはTS-1+イリノテカン+ベバシズマブ
で主要評価項目は全生存期間、副次的な評価項目は、QOL、後治療移行割合、無増悪生存期間、治療成功期間、後治療成功期間、奏功割合、病勢コントロール割合、有害事象発生割合などで評価します。
疾患解説:切除不能大腸がん
国立がん研究センターのがん統計
の2014年の全国推計値によると、大腸がんに罹った人は、男性77504人、女性57930人、合計135434人で男性が多い傾向です。40代後半から徐々に増えはじめ、男性は70代をピークにその後は減少しますが、女性は、いったん70代で平行線になり、80代からさらに増加していきます。大腸がんの発生原因は、生活習慣や身体的な特徴と関連があるといわれています。生活習慣では、喫煙、飲酒、牛・豚・羊などの赤肉の摂取、ベーコン・ハム・ソーセージなどの加工肉の摂取などです。身体的な特徴は、体脂肪率の高い人、腹部の肥満、高身長などがあります。また、家族歴や遺伝子にも関連があるといわれています。
大腸がんの症状は、早期の段階では自覚症状はなく、進行するにしたがって症状がでてきます。血便、下血、便が細くなる、便が残る感じがするなどの症状がでます。排便に伴う自覚症状が多く、特に便に血が混じる血便や腸内のがんからの出血による赤色の便、もしくは赤黒い便、便の表面に血液が付着する下血が多く現れます。しかし、血便や下血は痔の症状でもみられるため、必ずしも大腸がんの症状とはかぎりません。
大腸は、小腸から続く約2mの消化管です。口側から「虫垂」、「盲腸」、「結腸」、「直腸S状部」、「直腸」で構成され、括約筋がある肛門管に続きます。結腸は、盲腸から上に向かう「上行結腸」、左上腹部へ向かう「横行結腸」、S状結腸に向かって下る「下行結腸」、S状のカーブを描く「S状結腸」に区別されています。さらに、S状結腸と直腸の間を「直腸S状部」、直腸の上部を「上部直腸」、下部を「下部直腸」に区別されます。大腸がんのそれぞれの部位で発生頻度は異なります。2000~2002年にかけて大腸がん手術を行った17449の症例報告から、大腸がんの部位別発生率では、直腸がんとS状結腸がんが多くなっています。
大腸がんは、がん化した元の細胞の組織の違いによって、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がんの3種類に分類されます。3つのうち、多くは腺がんで、腺がんはさらに6種類に分類されます。
大腸がんは、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層で構成されており、大腸がんは、一番内側の粘膜から発生し進行するほど外側の層へ浸潤していきます。この5つの層のどこまでがんが広がっているかを示すのが深達度です。深達度は6段階に分類されます。
大腸がんのステージ分類は、この深達度にリンパ節への転移の程度、遠隔臓器への転移の程度で決定されます。

大腸の部位別発生頻度
大腸の部位 | 発生頻度 |
---|---|
直腸がん | 26.4% |
S状結腸がん | 26.4% |
上行結腸がん | 13.6% |
直腸S状部がん | 12.5% |
横行結腸がん | 9.2% |
盲腸がん | 6.5% |
下行結腸がん | 4.8% |
大腸癌全国登録(大腸癌研究会)より作成

大腸がんの進行度分類
遠隔転移 | M0 | M1 | ||||||
リンパ節転移 | N0 | N1(N1a/N1b) | N2a | N2b/N3 | M1a | M1b | M1c | |
壁深達度 | Tis | 0 | – | – | – | Nに関係なく | ||
T1a・T1b | I | IIIA | IIIA | IIIB | IVA | IVB | IVC | |
T2 | IIIA | IIIB | IIIB | |||||
T3 | IIA | IIIB | IIIB | IIIC | ||||
T4a | IIB | IIIB | IIIC | IIIC | ||||
T4b | IIC | IIIC | IIIC | IIIC |
治験薬:トリフルリジン・チピラシル
トリフルリジン・チピラシルは、トリフルリジンとチピラシル塩酸塩を2対1で配合した抗悪性腫瘍薬です。
トリフルリジンは、直接DNAに取り込まれDNAの機能障害を起こします。トリフルリジン単独では、生体内の代謝が速く薬の効果が期待できません。
トリフルリジンの代謝は、チミジンホスホリラーゼという酵素で行われるため、このチミジンホスホリラーゼを阻害するチピラシル塩酸塩を配合することで、トリフルリジンの血中濃度を維持し、抗腫瘍効果が増強されています。
治験薬:ベバシズマブ
ベバシズマブは、血管内細胞増殖因子(VEGF)のVEGF-Aとその受容体(VEGFR)のVEGFR-1、VEGFR-2の結合を阻害する血管新生阻害薬です。
がん細胞は、VEGFによって血管内皮細胞の増殖を刺激することで、新しい血管をがん細胞までのばし、栄養や酸素を取り入れます。また、この血管は、がん細胞の血行転移の経路にもなると考えられています。
ベバシズマブは、血管新生を阻害することでがん細胞が栄養や酸素を取り込めないように兵糧攻めにして、増殖を抑制します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 切除不能進行再発大腸癌の2次治療患者を対象としたfluoropyrimidine+irinotecan+bevacizumab療法とtrifluridine/tipiracil+bevacizumab療法のランダム化比較第2/3相試験 |
試験の概要 | 切除不能進行再発大腸癌患者の2次治療患者を対象とし、fluoropyrimidine+irinotecan+bevacizumab療法(FOLFIRI+bevacizumab療法またはTS-1+irinotecan+bevacizumab療法(3週1サイクルまたは4週1サイクル))を対照とし、 trifluridine/tipiracil+bevacizumab療法の全生存期間における非劣性を検証する |
疾患名 | 切除不能大腸癌 |
試験薬剤名 | トリフルリジン/チピラシル |
用法・用量 | trifluridine/tipiracilはDay1の夕食後からDay6の朝食後およびDay8の夕食後からDay13の朝食後まで35-75 mg/回(70-150 mg/day)を1日2回(朝・夕食後)、5日間連続経口投与2日間休薬を2回繰り返し、その後14日間休薬する。1サイクルは28日間として試験薬投与中止基準に該当するまで投与を繰り返す |
試験薬剤名 | ベバシズマブ |
用法・用量 | Day1、Day15にbevacizumab 5mg/kgを30分かけて点滴静注する |
対照薬剤名 | フルオロウラシル |
用法・用量 | 【FOLFIRI+bevacizumab療法の場合】 Day1に400mg/m2を急速静注、その後2400mg/m2を46時間で持続静注する。1サイクルは14日間として試験薬投与中止基準に該当するまで投与を繰り返す |
対照薬剤名 | ティーエスワン(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム) |
用法・用量 | 【TS-1+ irinotecan +bevacizumab療法(3週1サイクル)の場合】 TS-1はDay1の夕食後からDay15の朝食後まで体表面積に合わせ40-60 mg/回(80-120 mg/day)を1日2回(朝・夕食後)経口投与し、その後7日間休薬する。1サイクルは21日間として試験薬投与中止基準に該当するまで投与を繰り返す。 【TS-1+ irinotecan +bevacizumab療法(4週1サイクル)の場合】 TS-1はDay1の夕食後からDay15の朝食後まで体表面積に合わせ40-60 mg/回(80-120 mg/day)を1日2回(朝・夕食後)経口投与し、その後14日間休薬する。1サイクルは28日間として試験薬投与中止基準に該当するまで投与を繰り返す |
対照薬剤名 | イリノテカン |
用法・用量 | 【FOLFIRI+bevacizumab療法の場合】 Day1にirinotecan 150mg/m2を90分以上かけて点滴静注する。 【TS-1+ irinotecan +bevacizumab療法(3週1サイクル)の場合】 Day1にirinotecan 150mg/m2を90分以上かけて点滴静注する。 【TS-1+ irinotecan +bevacizumab療法(4週1サイクル)の場合】 Day1、Day15にirinotecan 100mg/m2を90分以上かけて点滴静注する |
対照薬剤名 | ベバシズマブ |
用法・用量 | 【FOLFIRI+bevacizumab療法の場合】 Day1にBevacizumab 5mg/kgを30分かけて点滴静注する。 【TS-1+ irinotecan +bevacizumab療法(3週1サイクル)の場合】 Day1にBevacizumab 7.5mg/kgを30分かけて点滴静注する。 【TS-1+ irinotecan +bevacizumab療法(4週1サイクル)の場合】 Day1、Day15にBevacizumab 5mg/kgを30分かけて点滴静注する |
試験のフェーズ | フェーズ2/3 |
試験のデザイン | 非盲検ランダム化比較試験 |
目標症例数 | 524 |
適格基準 |
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除外基準 | |
主要な評価項目 | 全生存期間 |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | ・Quality of life ・後治療移行割合 ・無増悪生存期間 ・治療成功期間 ・後治療成功期間 ・奏効割合 ・病勢コントロール割合 ・有害事象発生割合 |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2017年10月2日~2022年3月31日 |