既治療で根治が期待できない食道がんに対する、ASP-1929を用いた光免疫療法の治験
治験の募集状況は、「医薬品情報データベース 臨床試験情報」ページでご確認ください。
治験名
Ex-PIT試験
既存治療で根治が期待できない食道がん患者を対象としたASP-1929を用いた光免疫療法(PIT)の安全性・有効性を検討する第1b/2相臨床試験治験概要:
既存治療で根治が期待できない食道がんに対する治験。食道がんの壁深達度がT2以浅と判断された患者さんが対象です。
ASP-1929を用いた光免疫療法の安全性と有効性を評価する臨床試験です。
登録予定数は、43人。
フェーズは、第1b/2相臨床試験。
試験デザインは、非盲検、単アーム、第1b/2相臨床試験 。
試験群:ASP-1929
照射量制限毒性発生割合、局所完全奏効率、抗薬物抗体発現、有害事象発生割合、無増悪生存期、全生存期間などで評価します。
疾患解説:食道がん
国立がん研究センターのがん統計の2013年の全国推計値によると、食道がんにかかる人は、10万人あたり17.9人です。男性は、10万人あたり31人、女性は、5.6人で男性に多い傾向です。
早期の食道がんではほとんど自覚症状がありませんが、がんの進行につれ、胸の違和感、食物の使える感じ、胆汁減少、胸や背中の痛み、声のかすれなどの症状が起こります。
日本人の食道がんの約半数は、食道の中央付近、次の食道の下部に多くでき、組織型は扁平上皮がんが90%以上で、腺がんは5%以下です。
食道の内側の粘膜から発生したがんは、粘膜下層、固有筋層、外膜へと浸潤していきます。粘膜内に留まるものを早期食道がん、粘膜下層までにとどまるものを表在食道がん、それ以上浸潤しているものを進行食道がんといいます。
治験薬:ASP-1929
ASP-1929は、セツキシマブとIR-700という色素を光吸収体として結合させた抗体薬物複合体です。
セツキシマブは、がん細胞の表面にあるEGFRと選択的に結合するため、IR-700をがん細胞に結合することができます。
IR-700は、近赤外線に反応して熱を発するため、ASP-1929を投与したあと、がん細胞に対して近赤外線を照射し、がん細胞を破壊します。破壊されたがん細胞が、免疫を誘導する作用もあります。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータスPS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 既存治療で根治が期待できない食道がん患者を対象としたASP-1929を用いた光免疫療法(PIT)の安全性・有効性を検討する第Ib/II相臨床試験 |
試験の概要 | 本治験は、既存治療で根治が期待できない食道がん患者を対象としたASP-1929を用いたPITの安全性・有効性を検討する |
疾患名 | 食道癌 |
試験薬剤名 | ASP-1929 |
用法・用量 | 通常、成人には本剤640mg/m2を約2時間かけて点滴静脈投与する。点滴静注の約24時間後に内視鏡下にてレーザー光を照射する |
対照薬剤名 | |
用法・用量 | |
試験のフェーズ | フェーズ1b/2(第1b /2相臨床試験) |
試験のデザイン | 非盲検、単アーム、第Ib/II相臨床試験 |
目標症例数 | 43 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | 照射量制限毒性発生割合 中央判定による局所完全奏効(L-CR)割合 |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy 薬物動態/pharmacokinetics |
副次的な評価方法 | 中央判定によるL-CR割合 ASP-1929、セツキシマブ、IRDye 700DXのPK 抗薬物抗体発現 有害事象発生割合[Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)version 5.0で判定した有害事象発生割合] 不具合発生割合(レーザー機器) 治験責任医師又は分担医師の判定によるL-CR割合 局所無増悪生存期間(Local progression-free survival:L-PFS) 無増悪生存期間(Progression-free survival:PFS) 全生存期間(Overall survival:OS) |
予定試験期間 | 2019年1月1日~2021年11月30日 |