ステージ4の食道扁平上皮がんに対するチスレリズマブの治験
治験の募集状況は、「医薬品情報データベース 臨床試験情報」ページでご確認ください。
治験名
RATIONALE306
切除不能、局所進行再発性または転移性食道扁平上皮がん患者を対象に、第一選択治療としての化学療法と併用したチスレリズマブ(BGB-A317)の有効性および安全性を評価する無作為化、プラセボ対照、二重盲検第3相試験
治験概要:
切除不能、局所進行再発性または転移性食道扁平上皮がんに対する治験。ステージ4で根治的治療後6か月以上の無治療期間がある患者さんが対象です。
チスレリズマブ+化学療法とプラセボ+化学療法を比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、480人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、二重盲検。
試験群:チスレリズマブ+化学療法
対照群:プラセボ+化学療法
無増悪生存期間、全生存期間、奏効率、全般的健康状態の評価、有害事象の発現率、有害事象の重症度などで評価します。
疾患解説:食道がん
国立がん研究センターのがん統計の2013年の全国推計値によると、食道がんにかかる人は、10万人あたり17.9人です。男性は、10万人あたり31人、女性は、5.6人で男性に多い傾向です。
早期の食道がんではほとんど自覚症状がありませんが、がんの進行につれ、胸の違和感、食物の使える感じ、胆汁減少、胸や背中の痛み、声のかすれなどの症状が起こります。
日本人の食道がんの約半数は、食道の中央付近、次の食道の下部に多くでき、組織型は扁平上皮がんが90%以上で、腺がんは5%以下です。
食道の内側の粘膜から発生したがんは、粘膜下層、固有筋層、外膜へと浸潤していきます。粘膜内に留まるものを早期食道がん、粘膜下層までにとどまるものを表在食道がん、それ以上浸潤しているものを進行食道がんといいます。
治験薬:チスレリズマブ
チスレリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:シスプラチン
シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。
治験薬:フルオロウラシル
フルオロウラシルは、DNAの合成阻害、RNAの機能障害によるがん細胞を細胞死に誘導する代謝拮抗薬です。
DNAを構成する主な成分はピリミジン塩基といわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどです。フルオロウラシルは、このピリミジン塩基と似たような構造で、DNAが合成されるときにピリミジン塩基の代わりに取り込まれることで、DNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 切除不能、局所進行再発性又は転移性食道扁平上皮がん患者を対象に、第一選択治療としての化学療法と併用したtislelizumab(BGB-A317)の有効性及び安全性を評価する無作為化、プラセボ対照、二重盲検第III相試験 |
試験の概要 | 進行性食道扁平上皮がん患者を対象に、第一選択治療としての化学療法と併用したtislelizumabの有効性及び安全性を評価することが本試験の目的である |
疾患名 | 食道扁平上皮がん |
試験薬剤名 | Tislelizumab(BGB-A317) |
用法・用量 | Tislelizumab+化学療法 化学療法:シスプラチン+フルオロウラシル(5-FU): シスプラチン60~80mg/m2を3週ごとに(Q3W)Day1にIV投与‐5-FU750~800mg/m2をQ3WでDay1~5に連日24時間かけてIV持続投与 |
対照薬剤名 | プラセボ |
用法・用量 | プラセボ+化学療法 化学療法:シスプラチン+5-フルオロウラシル(5-FU): シスプラチン60~80mg/m2を3週ごとに(Q3W)Day1にIV投与‐5-FU750~800mg/m2をQ3WでDay1~5に連日24時間かけてIV持続投与 |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 無作為化、二重盲検 |
目標症例数 | 480 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | PFS:無作為割付日から、BIRCがRECISTv1.1に基づき疾患進行を最初に確認した日又は死亡日のいずれか先に生じた時点までの期間 OS:無作為割付日から死因を問わない死亡日までの期間 |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | ORR-BIRCがRECISTv1.1に基づき判定した完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)が、最良総合効果(BOR)として認められた被験者の割合と定義 DOR-BIRCがRECISTv1.1に基づき客観的奏効を最初に判定してから、進行が最初に確認された時点、又は死亡時点のいずれか早い時点までの期間と定義 欧州EORTC QLQ-C30指標、欧州食道がん特異的モジュールEORTC QLQ-OES18、全般的健康状態評価尺度EuroQol 5D(EQ-5D-5L)を使用した患者の全般的健康状態のHRQoL評価 NCI有害事象共通用語規準(NCI-CTCAE)v4.03に基づく有害事象(AE)の発現率及び重症度 |
予定試験期間 | 2019年2月28日~2021年10月31日 |