進行性/転移性食道がんに対するペムブロリズマブ併用療法の治験
治験の募集状況は、「医薬品情報データベース 臨床試験情報」ページでご確認ください。
治験名
進行性/転移性食道がん患者を対象とした1次治療としてのMK-3475、シスプラチンおよび5-フルオロウラシルの併用療法とプラセボ、シスプラチンおよび5-フルオロウラシルの併用療法を比較する二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験
治験概要:
局所進行性または転移性の食道腺がんまたは食道扁平上皮がん、もしくは進行性/転移性の食道胃接合部腺がんに対する治験。切除不能で治療歴のない患者さんが対象です。1次治療としてペムブロリズマブ+シスプラチンおよびフルオロウラシル併用療法とプラセボ+シスプラチンおよびフルオロウラシル併用療法を比較して、無増悪生存期間や全生存期間で評価する臨床試験です。
登録予定数は、700人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、プラセボ対照、多施設共同、二重盲検、第III相試験。
比較する対象は
試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(シスプラチン、フルオロウラシル)
対照群:プラセボ+化学療法(シスプラチン、フルオロウラシル)
で主要評価項目は無増悪生存期間、副次的評価項目は奏効率、奏功期間などで評価します。
疾患解説:食道がん、食道胃接合部がん
国立がん研究センターのがん統計の2013年の全国推計値によると、食道がんにかかる人は、10万人あたり17.9人です。男性は、10万人あたり31人、女性は、5.6人で男性に多い傾向です。
早期の食道がんではほとんど自覚症状がありませんが、がんの進行につれ、胸の違和感、食物の使える感じ、胆汁減少、胸や背中の痛み、声のかすれなどの症状が起こります。
日本人の食道がんの約半数は、食道の中央付近、次の食道の下部に多くでき、組織型は扁平上皮がんが90%以上で、腺がんは5%以下です。
食道の内側の粘膜から発生したがんは、粘膜下層、固有筋層、外膜へと浸潤していきます。粘膜内に留まるものを早期食道がん、粘膜下層までにとどまるものを表在食道がん、それ以上浸潤しているものを進行食道がんといいます。
食道胃接合部がんは、食道と胃のつなぎ目の食道胃接合部の上下2cmの範囲にできるがんです。リンパ節転移の広がりが、がんのできた場所によるため、食道胃接合部がんという分類がされるようになってきています。
治験薬:ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:シスプラチン
シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。
治験薬:フルオロウラシル
フルオロウラシルは、DNAの合成阻害、RNAの機能障害によるがん細胞を細胞死に誘導する代謝拮抗薬です。
DNAを構成する主な成分はピリミジン塩基といわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどです。フルオロウラシルは、このピリミジン塩基と似たような構造で、DNAが合成されるときにピリミジン塩基の代わりに取り込まれることで、DNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータスPS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 進行性/転移性食道癌患者を対象とした1次治療としてのMK-3475、シスプラチン及び5-フルオロウラシルの併用療法とプラセボ、シスプラチン及び5-フルオロウラシルの併用療法を比較する二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験 |
試験の概要 | 本治験は、切除不能な局所進行性又は転移性の食道腺癌又は食道扁平上皮癌若しくは進行性/転移性Siewert分類typeI食道胃接合部腺癌患者を対象に、1次治療としてのMK-3475、シスプラチン及び5-FUの併用療法での有効性及び安全性を、プラセボ、シスプラチン及び5-FUの併用療法と比較する 主要仮説は、全患者およびprogrammed cell death-ligand 1 (PD-L1) バイオマーカー陽性の腫瘍を有する患者において、MK-3475+化学療法は、プラセボ+化学療法と比較し、盲検化された中央画像判定機関がRECIST 1.1に基づき評価したPFSおよびOSにおいて優越性を示す |
疾患名 | 切除不能な局所進行性又は転移性の食道腺癌 |
試験薬剤名 | MK-3475 + 化学療法(シスプラチン、5-FU) |
用法・用量 | MK-3475:200mg 静脈内投与(IV)3週間間隔(Q3W)、シスプラチン: 80mg/m2 IV Q3W、5-FU: 800mg/m2/日の1~5日目(120時間)の 持続静脈内投与 Q3W |
対照薬剤名 | プラセボ + 化学療法(シスプラチン、5-FU) |
用法・用量 | プラセボ: IV Q3W、シスプラチン: 80mg/m2 IV Q3W、5-FU: 800mg/m2/日の1~5日目(120時間)の持続静脈内投与 Q3W |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化、プラセボ対照、多施設共同、二重盲検、第III相試験 |
目標症例数 | 700 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 1)全患者におけるPFS 2)PD-L1バイオマーカー陽性の腫瘍を有する患者におけるPFS 3)全患者におけるOS 4)PD-L1バイオマーカー陽性の腫瘍を有する患者におけるOS |
主要な評価方法 | 1)全患者において、盲検化された中央画像判定機関がRECIST 1.1に基づき評価したPFSを、治療群間で比較する(最大2年) 2)PD-L1バイオマーカー陽性の腫瘍を有する患者において、盲検化された中央画像判定機関がRECIST 1.1に基づき評価したPFSを、治療群間で比較する(最大2年) 3)全患者において、OSを治療群間で比較する(最大2年) 4)PD-L1バイオマーカー陽性の腫瘍を有する患者において、OSを治療群間で比較する(最大2年) |
副次的な評価項目 | 1)全患者におけるORR 2)PD-L1バイオマーカー陽性の腫瘍を有する患者におけるORR 3)全患者における奏効期間(DOR) 4)PD-L1バイオマーカー陽性の腫瘍を有する患者におけるDOR 5)安全性及び忍容性 6)全患者における健康関連QOL(Health-Related Quality of Life)のスコア変化 |
副次的な評価方法 | 1)全患者において、盲検化された中央画像判定機関がRECIST 1.1に基づき評価したORRを、治療群間で比較する(最大2年) 2)PD-L1バイオマーカー陽性の腫瘍を有する患者において、盲検化された中央画像判定機関がRECIST 1.1に基づき評価したORRを、治療群間で比較する(最大2年) 3)全患者において、盲検化された中央画像判定機関がRECIST 1.1に基づき評価した奏効期間(DOR)を、治療群間で評価する(最大2年) 4)PD-L1バイオマーカー陽性の腫瘍を有する患者において、盲検化された中央画像判定機関がRECIST 1.1に基づき評価したDORを、治療群間で評価する(最大2年) 5)有害事象の発現数(最大27か月)、有害事象による中止例数(最大2年)を評価する 6)全患者において、European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)Quality of Life Questionnaire C30(QLQ-C30)及びEORTC Quality of Life Questionnaire esophageal Module(QLQ-OES18)を用い、MK-3475+化学療法を受けた患者の健康関連QOL(Health-Related Quality of Life)のスコア変化を、プラセボ+化学療法と比較する |
予定試験期間 | 2017年6月1日~2022年2月1日 |