骨転移によるがん疼痛に対するタネズマブの治験
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治験名
オピオイド基礎療法を受けているにもかかわらず骨転移によるがん疼痛がある患者を対象としたTanezumab(PF-04383119)皮下注射の鎮痛効果および安全性を評価する第3相多施設共同無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験
治験概要:
骨転移によるがん疼痛に対する治験。体重が40kg以上の患者さんが対象です。
タネズマブとプラセボを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、155人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化二重盲検並行群間比較試験。
試験群:タネズマブ
対照群:プラセボ
NRSスコアの変化、平均疼痛スコアの変化、最大疼痛スコアの変化、有害事象などで評価します。
疾患解説:がん疼痛
治療中のがん患者さんの約半数、進行がんの患者さんでは3分の2のが、がんの痛みを感じています。
原因の多くは、がんそのものにあり、がん自体が原因で起こる痛みをがん疼痛といいます。がん疼痛の治療は、「WHO方式がん疼痛治療法」という治療法により、痛みの程度にあわせて鎮痛薬や副作用対策の薬の組み合わせによって行われます。
がんのある局所や転移した個所、体の構造によって、がん疼痛が起こるメカニズムは異なります。皮膚や骨、内臓、神経などの体の組織に損傷を与えるために起こります。がん疼痛には、3種類の痛みがあります、がんが内臓にある場合の痛みを内蔵痛といい、がんが骨や筋肉、皮膚などにある場合を体性痛、痛みを伝える神経に対して障害を起こしている場合を神経障害性疼痛といいます。
内蔵痛は、体の組織に対してがんが刺激や圧迫することで起こり、やや広い範囲で鈍く重い感じの痛みが起こるのが特徴です。
体性痛は、がんがある骨や筋肉などが直接刺激を受けることで起こります。うずく、ズキズキする、ヒリヒリするなどの痛みの症状が特徴ですが、体を動かしたり圧迫すると鋭い痛みがでます。
神経障害性疼痛は、さまざまな痛みやしびれなど異常な感覚が特徴です。痛みのある個所に脱力が伴うことや、灼けるような痛み、電気が走るような痛みが混じることもあります。
がんによる痛みは、我慢せず、適切な治療を受けることが大切です。痛みは、患者さん自身の主観によるところが大きいため、医師や看護師などに相談しましょう。
治験薬:タネズマブ
タネズマブは、神経成長因子(NGF)と選択的に結合する分子標的薬です。
体内のNGF濃度は、外傷や炎症、免疫疼痛により上昇します。NGFを阻害すると、筋肉、皮膚、臓器で発生する疼痛シグナルを阻害するため、鎮痛作用があります。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | オピオイド基礎療法を受けているにもかかわらず骨転移によるがん疼痛を有する患者を対象としたTanezumab(PF-04383119)皮下注射の鎮痛効果および安全性を評価する第3相多施設共同無作為化,二重盲検,プラセボ対照比較試験(治験実施計画書番号:A4091061) |
試験の概要 | オピオイド基礎治療を受けているにもかかわらず骨転移による疼痛を有する患者を対象とし、Tanezumabの鎮痛効果を評価することを目的とした試験 |
疾患名 | がん転移 筋骨格痛 |
試験薬剤名 | タネズマブ |
用法・用量 | Tanezumab:20mgを皮下投与、8週間に1回 |
対照薬剤名 | プラセボ |
用法・用量 | プラセボ:皮下投与、8週間に1回 |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 無作為化二重盲検並行群間比較試験 |
目標症例数 | 155 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | ベースラインから第8週までの指標部位における骨転移によるがん疼痛の1日平均疼痛強度を示す数値化スケール(NRS)スコアの変化 |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | ベースラインから第1週、2週、4週、6週、12週、16週および24週までの指標部位における骨転移によるがん疼痛の1日平均疼痛強度を示すNRSスコアの変化 ベースラインから第1週、2週、4週、6週、8週、12週、16週および24週までの指標部位における骨転移によるがん疼痛の1日のうちの最大疼痛強度を示すNRSスコアの変化 ベースラインから第1週、2週、4週、6週、8週、12週、16週および24週までの非指標部位におけるがん疼痛の週平均疼痛強度を示すNRSスコアの変化 ベースラインから第1週、2週、4週、6週、8週、12週、16週および24週までの非指標部位におけるがん疼痛の毎週の最大疼痛強度を示すNRSスコアの変化 ベースラインから第1週、2週、4週、6週、8週、12週、16週および24週までの非指標部位におけるがん疼痛(内臓痛)の1日平均疼痛強度を示すNRSスコアの変化 ベースラインから第1週、2週、4週、6週、8週、12週、16週および24週までの非指標部位におけるがん疼痛(内臓痛)の1日のうちの最大疼痛強度を示すNRSスコアの変化 ベースラインから第2週、4週、8週、16週および24週までの来院時に得られる簡易疼痛質問票−短文式(BPI-sf)の平均疼痛スコアの変化 ベースラインから第2週、4週、8週、16週および24週までの来院時に得られるBPI-sfの最大疼痛スコアの変化 第1週、2週、4週、6週、8週、12週、16週および24週の指標部位における骨転移によるがん疼痛の1日平均疼痛強度および1日のうちの最大疼痛強度を示すNRSスコアについて、ベースラインから30%以上、50%以上、70%以上および90%以上減少で定義した治療効果・ベースラインから第2週、4週、8週、16週および24週までのPGAの変化 第2週、4週、8週、16週および24週のがん疼痛のPGAにおける2ポイント以上改善で定義した治療効果 ベースラインから第2週、4週、8週、16週および24週までの来院時に得られるBPI-sfの疼痛による障害の程度に関する複合機能スコアおよび各スコアの変化・ベースライン、第8週、16週および24週のEQ-5D-5Lおよび健康全般有用性スコアの変化 第1週、2週、4週、6週、8週、12週、16週および24週におけるオピオイドの1日平均総使用量(モルヒネmg量に換算) 第1週、2週、4週、6週、8週、12週、16週および24週におけるレスキュー薬の週平均使用回数 ベースラインから第2週、4週、8週、16週および24週までの毎週のオピオイド関連症状の苦痛尺度(OR-SDS)の変化 有害事象(48週まで) 標準的な安全性評価(臨床検査[生化学検査、血液学的検査]、座位時のバイタルサイン、12誘導心電図)(48週まで) 起立時の血圧(仰臥位/立位)評価(48週まで)・体重や身長測定、一般的な内科的検査(診察)(48週まで) 関節安全性事象の判定結果(48週まで、または手術後24週まで) 関節全置換術(手術後24週まで) 神経学的検査(ニューロパチー障害スコア[NIS])(48週まで) 自律神経症状に関する質問票(SAS)(48週まで) 抗tanezumab抗体(ADA)の評価 |
予定試験期間 | 2015年10月28日~2021年4月27日 |