局所再発頭頸部がんに対する光免疫療法の治験
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治験名
1種類以上の全身療法を含む2種類以上の治療で失敗、あるいは治療中または治療後に病勢進行が認められた局所再発頭頸部扁平上皮がん患者において、ASP-1929光免疫療法と医師が選択した標準治療を比較する、第3相無作為化2群非盲検比較試験
治験概要:
局所再発頭頸部扁平上皮がんに対する治験。1種類以上の全身療法を含む2種類以上の治療で失敗、あるいは治療中または治療後に病勢進行した患者さんが対象です。 ASP-1929光免疫療法と医師が選択した標準治療を比較して、全生存期間や無増悪生存期間などで有効性を評価する臨床試験です。 登録予定数は、275人。 フェーズは、第3相臨床試験。 試験デザインは、無作為化2群非盲検比較試験。 比較対象は、 試験群:ASP-1929 対照群:ドセタキセル で主要評価項目は全生存期間、無増悪生存期間、副次的評価項目は客観的奏効率、完全奏効、奏効期間などで評価します。治療解説:がん光免疫療法
がん光免疫療法は、近赤外線で化学反応を起こすIR-700という物質を、がん細胞だけに結合する抗体に付加したものを静脈注射します。体内に入ったIR-700が付加された抗体が、がん細胞と結合した後、がん細胞に対して近赤外線を照射します。IR-700は近赤外線に反応して発熱することで、がん細胞の細胞膜が変性し、がん細胞が破壊されます。破壊されたがん細胞が、免疫を誘導する細胞死が関与していることも判明し、「がんに対する免疫を誘導する光療法」という意味で「光免疫療法」と名付けられました。疾患解説:頭頸部がん
頭頸部がんは、文字通り「頭部」と「頸部(首の部分)」、脳より下鎖骨より上にできたがんの総称です。主な種類は、咽頭がん、口腔がん、喉頭がん、鼻、副鼻腔がん、唾液腺がん、甲状腺がんなどがあります。咽頭は、さらに詳細に上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんに分類されます。脳腫瘍は、頭頸部がんには分類されません。 頭頸部がんのうち口腔がん、咽頭がんの罹患数は、2013年の国立がん研究センターのがん登録・統計によると男性で約13200人、女性で約5800人、男女合計で約19000人、全部位の約2%程度です。死亡数も男性で約5000人、女性で約2000人、合計で約7000人と、部位別でみると比較的少ないですが、発生原因や治療法、予後が異なるのが特徴です。 頭頸部がんのほとんどは、扁平上皮という組織ががん化したものです。がんが発生した器官の違いによって症状はさまざまです。口腔がんである舌がんでは、舌がしみたり痛みがあるなどの症状があることもありますが、ほとんどの頭頸部がんでは初期には自覚症状がみられないこともあります。首のしこりやのどの違和感など、すこしでも気になる症状があれば検査を受けることが大切です。治験薬:ASP-1929
ASP-1929は、セツキシマブとIR-700という色素を光吸収体として結合させた抗体薬物複合体です。 セツキシマブは、がん細胞の表面にあるEGFRと選択的に結合するため、IR-700をがん細胞に結合することができます。 IR-700は、近赤外線に反応して熱を発するため、ASP-1929を投与したあと、がん細胞に対して近赤外線を照射し、がん細胞を破壊します。破壊されたがん細胞が、免疫を誘導する作用もあります。治験薬:ドセタキセル
ドセタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。 細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。ドセタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。 タキサン系は水に溶けにくいため、無水エタノール(アルコール)を含んだ液体に溶かして使用されますが、ドセタキセルはアルコールに溶かさずに使用できる薬もあります。主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータスPS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 1種類以上の全身療法を含む2種類以上の治療で失敗、あるいは治療中または治療後に病勢進行が認められた局所再発頭頸部扁平上皮癌患者において、ASP-1929光免疫療法と医師が選択した標準治療を比較する、第3相無作為化2群非盲検比較試験 |
試験の概要 | 2種類以上の治療で失敗、あるいは治療中または治療後に病勢進行した局所再発頭頸部扁平上皮癌患者において、ASP-1929光免疫療法の有効性及び安全性を評価する |
疾患名 | 頭頸部癌 |
試験薬剤名 | ASP-1929 |
用法・用量 | 通常、成人には本剤640mg/m2を約2時間かけて点滴静注する。点滴静注の約24時間後にレーザ光を照射する |
試験薬剤名 | ドセタキセル |
用法・用量 | ドセタキセル60又は75mg/m2を3~4週間毎に1時間かけて点滴静注する |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 本試験は治験治療群と対照薬群がある 治験治療群: 被験者は、無作為割り付け後12ヵ月までの間、以下のいずれかの転帰が認められるまでASP-1929 PITによる治療を反復する: 標的病変及び非標的病変において完全奏功(CR)が達成される 集学的治療チーム(頭頸部外科医、腫瘍内科医、及び/又は放射線腫瘍医等)による判断に基づき、それ以降の治験による治療が適さない疾患の進行(PD)が認められる 当該被験者に忍容できない有害事象(AE)が発現するか、被験者が同意を撤回する 反復治療サイクルは前回のASP-1929投与から4週間以上経過してから行うこと 再発又は新たな標的病変及び非標的病変については、これらを臨床的、病理学的、又は放射線学的に確認後28日以内に治療サイクルを施行すること 対照薬群: 被験者は、以下の転帰が認められるまで選択されたSOCで治療する: 疾患の進行(PD)が認められる |
目標症例数 | 275 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 無増悪生存期間(PFS) 全生存期間(OS) |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | 客観的奏効率(ORR) 完全奏効(CR) 生検に基づく完全奏効(CRb) 奏効期間(DoR) 無イベント生存期間(EFS) RECIST 1.1、Choi基準及び腫瘍容量測定を用いた客観的な標的病変及び非標的病変の評価及び奏効率 Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス(PS) European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire-Core 30 (EORTC QLQ-C30) 及びhead and neck specific module (EORTC QLQ-H&N 35) EuroQol 5-Dimension 5-Level(EQ-5D-5L)質問票 抗薬物抗体(ADA)の発現 母集団PK |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2019年1月15日~2021年12月15日 |