Child Pugh分類Aの進行肝細胞がんに対するニボルマブの治験
治験の募集状況は、「医薬品情報データベース 臨床試験情報」ページでご確認ください。
治験名
進行肝細胞がん患者の一次治療としてニボルマブとソラフェニブを比較する無作為化多施設共同第3相試験
治験概要:
進行肝細胞がんに対する治験。Child Pugh分類Aの患者さんが対象です。
ニボルマブとソラフェニブを比較して、全生存期間、奏効率、無増悪生存期間、PD-L1発現などで評価する臨床試験です。
登録予定数は、726人。
フェーズは、3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化非盲検試験。
試験群:ニボルマブ
対照群:ソラフェニブ
全生存期間、奏効率、無増悪生存期間、PD-L1発現などで評価します。
疾患解説:肝臓がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肝臓がんに罹患した人は、約40000人強です。50代くらいから増加し始め、80代前後をピークに、その後は減少します。
肝臓がんは、肝臓の細胞ががん化した悪性腫瘍です。肝臓内にある胆管にできたがんは、肝内胆管がんといいます。
日本人の肝臓がんはウイルス性肝炎から発生することが多いのが特徴です。最近は、C型やB型の肝炎ウイルスに対する治療薬ができたことで、ウイルス性肝炎がかなりコントロールできるようになったため減少傾向にあります。
その一方で、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など肝炎ウイルス以外の原因による肝臓がんが増加傾向にあるという報告もあります。
BCLC分類
ステージ | PS | Child-Pugh | ||
0 | 0 | A | ||
A~C | 早期A | 0 | A~B | 1HCCか3結節≦3cm |
中間期B | 0 | 多結節 | ||
進行期C | 1~2 | 門脈浸潤、N1、M1 | ||
D | >2 | C |
Child-Pugh分類
ポイント | 1点 | 2点 | 3点 |
---|---|---|---|
脳症 | ない | 軽度 | ときどき昏睡 |
腹水 | ない | 少量 | 中等量 |
血清ビリルビン値(mg/dL) | 2.0未満 | 2.0~3.0 | 3.0超 |
血清アルブミン値(g/dL) | 3.5超 | 2.8~3.5 | 2.8未満 |
プロトロンビン活性値(%) | 70超 | 40~70 | 40未満 |
A | 5~6点 |
---|---|
B | 7~9点 |
C | 10~15点 |
治験薬:ニボルマブ
ニボルマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:ソラフェニブ
ソラフェニブは、血管新生に関与する血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、腫瘍増殖に関与する血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、幹細胞因子受容体(KIT)、細胞分裂促進因子にかかわるRafなどの分子を標的にした分子標的薬です。
さまざまな受容体をマルチターゲットに阻害して、血管新生、腫瘍増殖などを抑制します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータスPS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
スコア | 患者の状態 |
---|---|
0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 進行肝細胞がん患者の一次治療としてニボルマブとソラフェニブを比較する無作為化多施設共同第3相試験 |
試験の概要 | ニボルマブの進行肝細胞がん患者における有効性をソラフェニブと比較検討する |
疾患名 | 進行肝細胞がん |
試験薬剤名 | ニボルマブ(ONO-4538/BMS-936558) |
用法・用量 | 静脈内投与 |
対照薬剤名 | Nexavar |
用法・用量 | 経口投与 |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化非盲検試験 |
目標症例数 | 726 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 全生存期間 |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | 奏効率、無増悪生存期間及びPD-L1発現 |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2015年11月1日~2019年12月1日 |