全身治療歴のある進行性肝細胞がんに対するペムブロリズマブの治験

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治験名

KEYNOTE-240

全身治療歴のある進行性肝細胞がん患者を対象とし、2次治療としてのペムブロリズマブをBest Supportive Careと比較する第3相試験

治験概要:

全身治療歴のある進行肝細胞がんに対する治験。BCLC病期分類でステージC、あるいは局療法が適さないまたは無効のステージBの患者さん対象です。 ペムブロリズマブ+Best Supportive Careとプラセボ+Best Supportive Careを比較して、無増悪生存期間、全生存期間、奏効率、病勢コントロール率、奏功期間、無増悪期間などで評価する臨床試験です。 登録予定数は、408人。 フェーズは、3相臨床試験。 試験デザインは、二重盲検試験。 試験群:ペムブロリズマブ+Best Supportive Care 対照群:プラセボ+Best Supportive Care 無増悪生存期間、全生存期間、奏効率、病勢コントロール率、奏功期間、無増悪期間などで評価します。

疾患解説:肝臓がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肝臓がんに罹患した人は、約40000人強です。50代くらいから増加し始め、80代前後をピークに、その後は減少します。 肝臓がんは、肝臓の細胞ががん化した悪性腫瘍です。肝臓内にある胆管にできたがんは、肝内胆管がんといいます。 日本人の肝臓がんはウイルス性肝炎から発生することが多いのが特徴です。最近は、C型やB型の肝炎ウイルスに対する治療薬ができたことで、ウイルス性肝炎がかなりコントロールできるようになったため減少傾向にあります。 その一方で、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など肝炎ウイルス以外の原因による肝臓がんが増加傾向にあるという報告もあります。

Child-Pugh分類

Child-Pugh分類は、肝障害度を示す指標です。脳症、腹水、血清ビリルビン濃度、血清アルブミン濃度、プロトロンビン活性値の5項目を1~3点で評価し、その合計点によりA~Cの3段階に分類します。もっとも障害度が低いのがA、高いのはCです。
ポイント 1点 2点 3点
脳症 ない 軽度 ときどき昏睡
腹水 ない 少量 中等量
血清ビリルビン値(mg/dL) 2.0未満 2.0~3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 2.8~3.5 2.8未満
プロトロンビン活性値(%) 70超 40~70 40未満
A 5~6点
B 7~9点
C 10~15点

BCLC分類

BCLC病期分類は、全身状態とChild-Pugh分類(肝障害度)に基づき、ステージ0、ステージA~C、ステージDに大きく分類されます。ステージA~Cをさらに腫瘍数、結節数、門脈浸潤、全身状態により、早期:ステージA、中間期:ステージB、進行期:ステージCの3つの病期に分類します。 >>
ステージ PS Child-Pugh
0 0 A
A~C 早期A 0 A~B 1HCCか3結節≦3cm
中間期B 0 多結節
進行期C 1~2 門脈浸潤、N1、M1
D >2 C

治験薬:ペムブロリズマブ

ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 肝細胞がんと確定診断された患者
  • BCLC病期分類でステージC、あるいは局所療法が適さないまたは局所療法に無効であるステージBの患者で、根治的治療の対象とならない患者
  • 治験薬投与開始前7日以内のChild-Pughスコアが分類Aの患者
  • 3か月を超える生存が見込まれる患者
  • 測定可能病変を1つ以上有する患者
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0または1の患者
  • ソラフェニブ治療期間中または治療後に画像評価による疾患進行が確認された患者、またはソラフェニブに不耐容の患者
  • HCVに慢性感染している患者の場合: 未治療または既治療の患者。なお、HCV治療に成功している患者では、持続的ウイルス学的著効達成から治験薬投与開始までの間に少なくとも4週間経過している必要がある
  • 治験薬投与開始日から治験薬最終投与後120日まで、適切な避妊法を使用することに同意する患者
  • 適切な臓器機能が保持された患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 治験薬投与開始前4週間以内に、他の治験に参加し治験薬または医療機器を用いた、経口または静脈内投与の漢方薬/補完医療を受けた、あるいは現在用いている/投与を受けている患者
  • 前治療薬による有害事象および関連する治療から回復していること
  • 治験薬投与開始前14日以内にソラフェニブの投与を受けた患者
  • 6か月以内に食道または胃の静脈瘤出血があった患者
  • 身体所見にて臨床的に明らかな腹水が確認できる患者。注:画像検査でのみ検出可能な腹水は許容される
  • 画像検査に基づき門脈本幹への浸潤、下大静脈への浸潤または肝細胞がんの心臓病変がある患者
  • 6か月以内に肝性脳症であると臨床的に診断された患者
  • 臓器移植または造血幹細胞移植を受けたことのある患者
  • 治験薬投与開始前に進行期の肝細胞がんに対してソラフェニブ以外の全身治療を実施した患者
  • ペムブロリズマブおよびその成分のいずれかに対して重度の過敏症が知られている患者
  • 過去2年以内に全身性の治療を要した活動性の自己免疫疾患がある患者
  • 免疫不全症と診断された患者、または治験薬投与開始前7日以内に全身ステロイド療法や他の免疫抑制療法による治療を受けた患者
  • 治験薬投与開始前4週間以内に肝臓に対する局所治療を受けた患者
  • 治験薬投与開始前4週間以内に肝臓または他の部位に対する大手術を受けた患者
  • 治験薬投与開始前7日以内に小手術を受けた患者
  • 治験薬投与開始前までに前治療による毒性または合併症から十分に回復していない患者
  • 治験薬投与開始前3年以内に別の悪性腫瘍の診断を受けた患者 ただし、根治的治療を受けた皮膚基底細胞がんおよび皮膚扁平上皮がん、並びに根治的切除術を受けた上皮内がんは例外とする
  • 中枢神経系への転移または治験担当医師の診断によるがん性髄膜炎の既往あるいは徴候がある患者
  • 間質性肺疾患/肺臓炎を合併、もしくはステロイド投与が必要な間質性肺疾患/肺臓炎の既往がある患者
  • 全身性の治療を必要とする活動性の感染症がある患者
  • 治験の実施に影響を与える可能性があると判断された精神疾患または物質乱用障害がある患者
  • 妊娠中または授乳中の患者、若しくは治験薬投与開始日から治験薬の最終投与後120日までに、本人またはパートナーの妊娠を希望する患者
  • PD-1、PD-L1またはPD-L2を標的とした薬剤等の免疫治療歴がある、若しくはペムブロリズマブの治験に参加したことがある患者
  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の既往がある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称 全身治療歴のある進行性肝細胞癌患者を対象とし、2次治療としてのMK-3475をBest SupportiveCareと比較する第III相試験(KEYNOTE-240)
試験の概要 本治験は、全身治療歴のある進行性肝細胞癌患者を対象に行う 本治験の主要目標: 1.無増悪生存期間(PFS)を比較する 2.MK-3475+Best supportive careとプラセボ+ Best supportive careの間で全生存期間(OS)を比較する 本治験の主要仮説: 1.MK-3475+Best supportive careはプラセボ+ Best supportive careと比較し無増悪生存期間(PFS)を延長する 2.MK-3475+Best supportive careはプラセボ+ Best supportive careと比較し全生存期間(OS)を延長する
疾患名 肝細胞癌
試験薬剤名 MK-3475
用法・用量 MK-3475: 200mg 3週間間隔(Q3W)の静脈内投与 Best Supportive Care:実施医療機関での標準治療に基づく
対照薬剤名 プラセボ、Best Supportive Care(実施医療機関での標準治療に基づく)
用法・用量 Best Supportive Care:医療機関での標準治療に基づく
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン 二重盲検試験
目標症例数 408
適格基準
  • 画像診断学的、組織学的又は細胞学的に肝細胞癌と確定診断された患者(線維層板型、及び肝細胞癌と胆管癌の混合型は除く)
  • Barcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)病期分類でStageC、あるいは局所療法が適さない又は局所療法に無効であるStageBの患者で、根治的治療の対象とならない患者
  • 治験薬投与開始前7日以内のChild-Pughスコアが分類Aの患者
  • 3ヵ月を超える生存が見込まれる患者
  • RECIST 1.1に基づき、盲検化された中央画像判定機関によって判定された測定可能病変を1つ以上有する患者
  • 治験薬投与開始前7日以内のECOG Performance Status が0又は1の患者
  • ソラフェニブ治療期間中又は治療後に画像評価による疾患進行が確認された患者、又はソラフェニブに不耐容の患者
  • HCVに慢性感染している患者の場合: 未治療又は既治療の患者(HCV治療成功例又は治療失敗例のいずれも可)。なお、HCV治療に成功している患者[治療終了後12週間の持続的ウイルス学的著効(SVR12)の達成と定義]では、SVR12達成から治験薬投与開始までの間に少なくとも4週間経過している必要がある
  • 治験薬投与開始日から治験薬最終投与後120日まで、適切な避妊法を使用することに同意する患者(妊娠させる又は妊娠の可能性がある男性又は女性の患者)
  • 適切な臓器機能が保持された患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 治験薬投与開始前4週間以内に、他の治験に参加し治験薬又は医療機器を用いた、経口又は静脈内投与の漢方薬/補完医療を受けた、あるいは現在用いている/投与を受けている患者
  • 前治療薬による有害事象及び関連する治療から回復(Grade 1以下又はベースラインまで)していること
  • 治験薬投与開始前14日以内にソラフェニブの投与を受けた患者
  • 6ヵ月以内に食道又は胃の静脈瘤出血があった患者
  • 身体所見にて臨床的に明らかな腹水が確認できる患者 注:画像検査でのみ検出可能な腹水は許容される
  • 画像検査に基づき門脈本幹(Vp4)への浸潤、下大静脈(IVC)への浸潤又は肝細胞癌の心臓病変がある患者
  • 6ヵ月以内に肝性脳症であると臨床的に診断された患者
  • 臓器移植又は造血幹細胞移植を受けたことのある患者
  • 治験薬投与開始前に進行期(治癒不能)の肝細胞癌に対してソラフェニブ以外の全身治療を実施した患者
  • MK-3475及びその成分のいずれかに対して重度(Grade 3以上)の過敏症が知られている患者
  • 過去2年以内に全身性の治療(疾患修飾薬、コルチコステロイド、又は免疫抑制剤など)を要した活動性の自己免疫疾患を有する患者
  • 免疫不全症と診断された患者、又は治験薬投与開始前7日以内に全身ステロイド療法や他の免疫抑制療法による治療を受けた患者
  • 治験薬投与開始前4週間以内に肝臓に対する局所治療[肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈塞栓療法(TAE)、肝動注化学療法(HAI)、放射線療法、放射線塞栓療法又は焼灼]を受けた患者
  • 治験薬投与開始前4週間以内に肝臓又は他の部位に対する大手術を受けた患者
  • 治験薬投与開始前7日以内に小手術(単純切除や抜歯)を受けた患者 治験薬投与開始前までに前治療による毒性又は合併症から十分に回復(Grade 1以下又はベースラインまで)していない患者
  • 治験薬投与開始前3年以内に別の悪性腫瘍の診断を受けた患者 ただし、根治的治療を受けた皮膚基底細胞癌及び皮膚扁平上皮癌、並びに根治的切除術を受けた上皮内癌は例外とする
  • 中枢神経系(CNS)への転移又は治験担当医師の診断による癌性髄膜炎の既往あるいは徴候を有する患者
  • 間質性肺疾患/肺臓炎を合併、もしくはステロイド投与が必要な(非感染性の)間質性肺疾患/肺臓炎の既往を有する患者
  • 全身性の治療を必要とする活動性の感染症を有する患者
  • 治験の実施に影響を与える可能性があると判断された精神疾患又は物質乱用障害を有する患者
  • 妊娠中又は授乳中の患者、若しくは治験薬投与開始日から治験薬の最終投与後120日(又は各国の規制に基づきさらに長期間)までに、本人又はパートナーの妊娠を希望する患者
  • PD-1、PD-L1又はPD-L2を標的とした薬剤等の免疫治療歴を有する、若しくはMK-3475の治験に参加したことがある患者
  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の既往を有する患者
主要な評価項目 無増悪生存期間(PFS) 全生存期間(OS)
主要な評価方法 無増悪生存期間(PFS)を評価する 全生存期間(OS)を評価する
副次的な評価項目 奏効率(ORR) 病勢コントロール率(DCR) 無増悪期間(TTP) 奏効期間(DOR)
副次的な評価方法 奏効率(ORR)を評価する 病勢コントロール率(DCR)を評価する 無増悪期間(TTP)を評価する 奏効期間(DOR)を評価する
予定試験期間 2016年5月1日~2019年2月1日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより