再発リスクが高い肝細胞がんに対するデュルバルマブの治験
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治験名
EMERALD-2
根治的肝切除術または焼灼療法後の再発リスクが高い肝細胞がん患者を対象に、アジュバント療法としてのデュルバルマブ単独療法またはデュルバルマブとベバシズマブの併用療法を評価する第3相無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験
治験概要:
再発リスクが高い肝細胞がんに対する治験。根治的肝切除術または焼灼療法が完了した患者さんが対象です。
デュルバルマブ単剤、デュルバルマブ+ベバシズマブ併用療法を、安全性と有効性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、90人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、2重盲検。
試験群:デュルバルマブ単剤
試験群:デュルバルマブ+ベバシズマブ併用療法
安全性、有効性、薬物動態などで評価します。
疾患解説:肝細胞がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肝臓がんに罹患した人は、約40000人強です。50代くらいから増加し始め、80代前後をピークに、その後は減少します。
肝臓がんは、肝臓の細胞ががん化した悪性腫瘍です。肝臓内にある胆管にできたがんは、肝内胆管がんといいます。
日本人の肝臓がんはウイルス性肝炎から発生することが多いのが特徴です。最近は、C型やB型の肝炎ウイルスに対する治療薬ができたことで、ウイルス性肝炎がかなりコントロールできるようになったため減少傾向にあります。
その一方で、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など肝炎ウイルス以外の原因による肝臓がんが増加傾向にあるという報告もあります。
Child-Pugh分類
Child-Pugh分類は、肝障害度を示す指標です。脳症、腹水、血清ビリルビン濃度、血清アルブミン濃度、プロトロンビン活性値の5項目を1~3点で評価し、その合計点によりA~Cの3段階に分類します。もっとも障害度が低いのがA、高いのはCです。
ポイント | 1点 | 2点 | 3点 |
---|---|---|---|
脳症 | ない | 軽度 | ときどき昏睡 |
腹水 | ない | 少量 | 中等量 |
血清ビリルビン値(mg/dL) | 2.0未満 | 2.0~3.0 | 3.0超 |
血清アルブミン値(g/dL) | 3.5超 | 2.8~3.5 | 2.8未満 |
プロトロンビン活性値(%) | 70超 | 40~70 | 40未満 |
A | 5~6点 |
---|---|
B | 7~9点 |
C | 10~15点 |
BCLC分類
BCLC病期分類は、全身状態とChild-Pugh分類(肝障害度)に基づき、ステージ0、ステージA~C、ステージDに大きく分類されます。ステージA~Cをさらに腫瘍数、結節数、門脈浸潤、全身状態により、早期:ステージA、中間期:ステージB、進行期:ステージCの3つの病期に分類します。
ステージ | PS | Child-Pugh | ||
0 | 0 | A | ||
A~C | 早期A | 0 | A~B | 1HCCか3結節≦3cm |
中間期B | 0 | >多結節 | ||
進行期C | 1~2 | >門脈浸潤、N1、M1 | ||
D | >2 | C |
治験薬:デュルバルマブ
デュルバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:ベバシズマブ
ベバシズマブは、血管内細胞増殖因子(VEGF)のVEGF-Aとその受容体(VEGFR)のVEGFR-1、VEGFR-2の結合を阻害する血管新生阻害薬です。
がん細胞は、VEGFによって血管内皮細胞の増殖を刺激することで、新しい血管をがん細胞までのばし、栄養や酸素を取り入れます。また、この血管は、がん細胞の血行転移の経路にもなると考えられています。
ベバシズマブは、血管新生を阻害することでがん細胞が栄養や酸素を取り込めないように兵糧攻めにして、増殖を抑制します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 根治的肝切除術又は焼灼療法後の再発リスクが高い肝細胞癌患者を対象に、アジュバント療法としてのデュルバルマブ単独療法又はデュルバルマブとベバシズマブの併用療法を評価する第III 相無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験 |
試験の概要 | 再発リスクが高い肝細胞癌患者を対象に、デュルバルマブ単剤療法又はデュルバルマブとベバシズマブの併用療法の安全性と有効性を評価する国際共同試験 |
疾患名 | 肝細胞癌 |
試験薬剤名 | デュルバルマブ(遺伝子組換え) |
用法・用量 | |
対照薬剤名 | |
用法・用量 | |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 2重盲検 |
目標症例数 | 90 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy 薬物動態/pharmacokinetics |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2019年1月1日~2023年6月30日 |