再発ハイリスク肝細胞がんに対するアテゾリズマブの治験
治験の募集状況は、「医薬品情報データベース 臨床試験情報」ページでご確認ください。
治験名
外科的切除または焼灼療法後の再発ハイリスク肝細胞がん患者を対象とした、アクティブサーベイランスと術後補助療法としてのアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)およびベバシズマブ併用投与を比較する非盲検、ランダム化、多施設共同第3相臨床試験
治験概要:
再発ハイリスクの肝細胞がんに対する治験。根治的切除または焼灼療法を受けた患者さんが対象です。
術後補助療法としてアテゾリズマブ+ベバシズマブの有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、662人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、多施設共同、ランダム化、非盲検。
試験群:アテゾリズマブ+ベバシズマブ
有効性、安全性、薬物動態、薬力学などで評価します。
疾患解説:肝臓がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肝臓がんに罹患した人は、約40000人強です。50代くらいから増加し始め、80代前後をピークに、その後は減少します。
肝臓がんは、肝臓の細胞ががん化した悪性腫瘍です。肝臓内にある胆管にできたがんは、肝内胆管がんといいます。
日本人の肝臓がんはウイルス性肝炎から発生することが多いのが特徴です。最近は、C型やB型の肝炎ウイルスに対する治療薬ができたことで、ウイルス性肝炎がかなりコントロールできるようになったため減少傾向にあります。
その一方で、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など肝炎ウイルス以外の原因による肝臓がんが増加傾向にあるという報告もあります。
Child-Pugh分類
Child-Pugh分類は、肝障害度を示す指標です。脳症、腹水、血清ビリルビン濃度、血清アルブミン濃度、プロトロンビン活性値の5項目を1~3点で評価し、その合計点によりA~Cの3段階に分類します。もっとも障害度が低いのがA、高いのはCです。
ポイント | 1点 | 2点 | 3点 |
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脳症 | ない | 軽度 | ときどき昏睡 |
腹水 | ない | 少量 | 中等量 |
血清ビリルビン値(mg/dL) | 2.0未満 | 2.0~3.0 | 3.0超 |
血清アルブミン値(g/dL) | 3.5超 | 2.8~3.5 | 2.8未満 |
プロトロンビン活性値(%) | 70超 | 40~70 | 40未満 |
A | 5~6点 |
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B | 7~9点 |
C | 10~15点 |
BCLC分類
BCLC病期分類は、全身状態とChild-Pugh分類(肝障害度)に基づき、ステージ0、ステージA~C、ステージDに大きく分類されます。ステージA~Cをさらに腫瘍数、結節数、門脈浸潤、全身状態により、早期:ステージA、中間期:ステージB、進行期:ステージCの3つの病期に分類します。
ステージ | PS | Child-Pugh | ||
0 | 0 | A | ||
A~C | 早期A | 0 | A~B | 1HCCか3結節≦3cm |
中間期B | 0 | >多結節 | ||
進行期C | 1~2 | >門脈浸潤、N1、M1 | ||
D | >2 | C |
治験薬:アテゾリズマブ
アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:ベバシズマブ
ベバシズマブは、血管内細胞増殖因子(VEGF)のVEGF-Aとその受容体(VEGFR)のVEGFR-1、VEGFR-2の結合を阻害する血管新生阻害薬です。
がん細胞は、VEGFによって血管内皮細胞の増殖を刺激することで、新しい血管をがん細胞までのばし、栄養や酸素を取り入れます。また、この血管は、がん細胞の血行転移の経路にもなると考えられています。
ベバシズマブは、血管新生を阻害することでがん細胞が栄養や酸素を取り込めないように兵糧攻めにして、増殖を抑制します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
---|---|
0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 外科的切除又は焼灼療法後の再発ハイリスク肝細胞癌患者を対象とした,アクティブサーベイランスと術後補助療法としてのアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)及びベバシズマブ併用投与を比較する非盲検,ランダム化,多施設共同第III相臨床試験 |
試験の概要 | 本治験は外科的切除又は焼灼療法後の再発ハイリスク肝細胞癌患者を対象に、アクティブサーベイランスと術後補助療法としてのアテゾリズマブ及びベバシズマブの有効性及び安全性を比較する |
疾患名 | 肝細胞癌 |
試験薬剤名 | アテゾリズマブ |
用法・用量 | 1200mgを21日サイクルの1日目に点滴静注 |
試験薬剤名 | ベバシズマブ |
用法・用量 | 15mg/kgを21日サイクルの1日目に点滴静注 |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 多施設共同、ランダム化、非盲検 |
目標症例数 | 662 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | 腫瘍評価、観察 |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy 薬物動態/pharmacokinetics 薬力学/pharmacodynamics その他/other |
副次的な評価方法 | 腫瘍評価、観察、その他 |
予定試験期間 | 2019年12月12日~2027年7月12日 |