切除不能な肝細胞がんに対するデュルバルマブとトレメリムマブの治験

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治験名

HIMALAYA

切除不能肝細胞癌患者に対する一次治療におけるデュルバルマブとトレメリムマブの第3相無作為化非盲検多施設共同試験

治験概要:

切除不能な肝細胞がんを対象とした治験。局所療法の適応とならない全身療法による治療歴のない患者さんが対象です。
デュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法とデュルバルマブ単剤療法をソラフェニブと比較して、有効性とび安全性を評価する第3相試験です。
登録予定数は1200人。
試験デザインは、無作為化非盲検多施設共同試験。
フェーズは、フェーズ3(第3相臨床試験)。
比較する対象は
治験群:デュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法
治験群:デュルバルマブ単剤療法
対照群:ソラフェニブ
で主要評価項目は、全生存期間、副次的評価項目は、無増悪期間、無増悪生存期間客観的奏効率などで評価します。

疾患解説:肝細胞がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肝臓がんに罹患した人は、約40000人強です。50代くらいから増加し始め、80代前後をピークに、その後は減少します。
肝臓がんは、肝臓の細胞ががん化した悪性腫瘍です。肝臓内にある胆管にできたがんは、肝内胆管がんといいます。
日本人の肝臓がんはウイルス性肝炎から発生することが多いのが特徴です。最近は、C型やB型の肝炎ウイルスに対する治療薬ができたことで、ウイルス性肝炎がかなりコントロールできるようになったため減少傾向にあります。
その一方で、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など肝炎ウイルス以外の原因による肝臓がんが増加傾向にあるという報告もあります。

治験薬:デュルバルマブ

デュルバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:トレメリムマブ

トレメリムマブは、抗CTLA-4抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
がん細胞を攻撃するT細胞の表面に発現するCTLA-4とT細胞を抑制するCD80/86が結合しないようにするのが抗CTLA-4抗体です。これにより、T細胞は活性化したままがん細胞に誘導されます。また、過剰な免疫応答にブレーキをかける制御性T細胞を誘導し、攻撃を抑制します。制御性T細胞に発現しているCTLA-4と抗CTLA-4抗体が結合することで排除することで、免疫抑制を解除します。
抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体との併用療法薬として効果が期待されています。

対照薬:ソラフェニブ

ソラフェニブは、血管新生に関与する血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、腫瘍増殖に関与する血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、幹細胞因子受容体(KIT)、細胞分裂促進因子にかかわるRafなどの分子を標的にした分子標的薬です。
さまざまな受容体をマルチターゲットに阻害して、血管新生、腫瘍増殖などを抑制します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 肝細胞がん
  • 肝細胞がんの全身療法による前治療歴がない患者
  • BCLC分類でステージBまたはステージCの患者
  • Child-Pugh分類Aの患者
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0または1の患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 過去12か月間に肝性脳症の既往がある、または脳症の予防またはコントロールのための投薬を必要とした患者
  • 治験薬の予定した初回投与の前6週間以内に、症状コントロールを維持するために非薬物療法または薬物療法の増強を必要とする腹水があった患者
  • 門脈本幹に血栓が確認された患者
  • 過去12か月間に消化管出血の既往または合併がある患者
  • B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスに同時感染している患者、またはB型肝炎ウイルスとD型肝炎ウイルスに同時感染している患者

BCLC分類

BCLC病期分類は、全身状態とChild-Pugh分類(肝障害度)に基づき、ステージ0、ステージA~C、ステージDに大きく分類されます。ステージA~Cをさらに腫瘍数、結節数、門脈浸潤、全身状態により、早期:ステージA、中間期:ステージB、進行期:ステージCの3つの病期に分類します。

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ステージPSChild-Pugh
00A
A~C早期A0A~B1HCCか3結節≦3cm
中間期B0多結節
進行期C1~2門脈浸潤、N1、M1
D>2C

Child-Pugh分類

Child-Pugh分類は、肝障害度を示す指標です。脳症、腹水、血清ビリルビン濃度、血清アルブミン濃度、プロトロンビン活性値の5項目を1~3点で評価し、その合計点によりA~Cの3段階に分類します。もっとも障害度が低いのがA、高いのはCです。

ポイント1点2点3点
脳症ない軽度ときどき昏睡
腹水ない少量中等量
血清ビリルビン値(mg/dL)2.0未満2.0~3.03.0超
血清アルブミン値(g/dL)3.5超2.8~3.52.8未満
プロトロンビン活性値(%)70超40~7040未満
A5~6点
B7~9点
C10~15点

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称切除不能肝細胞癌患者に対する一次治療におけるデュルバルマブとトレメリムマブの第III相無作為化非盲検多施設共同試験
試験の概要本治験は、局所療法の適応とならない、全身療法による前治療歴のない切除不能HCC患者の治療として、デュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法及びデュルバルマブ単剤療法の有効性及び安全性をソラフェニブと比較して評価する、第III相無作為化非盲検多施設国際共同試験である
疾患名肝細胞癌
試験薬剤名デュルバルマブ、トレメリムマブ
用法・用量静脈内投与
対照薬剤名ソラフェニブ
用法・用量ソラフェニブ400mg1日2回投与
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン無作為化非盲検多施設共同試験
目標症例数
適格基準
  • 腫瘍組織の病理組織学的所見で肝細胞癌(HCC)が確認された患者
  • HCCに対する全身療法による前治療歴がない患者
  • Barcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)ステージB(局所療法の適応とならない)又はステージCの患者
  • Child-Pugh分類Aの患者
  • 組入れ時に、ECOG Performance Statusが0又は1である患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 過去12カ月間に肝性脳症の既往がある、又は脳症の予防又はコントロールのための投薬を必要とした患者
  • 治験薬の予定した初回投与の前6週間以内に、症状コントロールを維持するために非薬物療法(穿刺術等)又は薬物療法の増強を必要とする腹水があった患者
  • 門脈本幹に血栓が確認された患者
  • 過去12カ月間に消化管出血(食道静脈瘤又は潰瘍出血等)の既往又は合併がある患者
  • HBVとHCVに同時感染している患者、又はHBVとD型肝炎ウイルスに同時感染している患者
主要な評価項目
主要な評価方法
副次的な評価項目
副次的な評価方法
予定試験期間

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより