切除不能肝細胞がんに対するチスレリズマブの治験

治験名

切除不能肝細胞がん患者を対象に、第一選択治療としてのチスレリズマブとソラフェニブの有効性および安全性を比較する無作為化、非盲検、多施設共同第3相試験

治験概要:

切除不能の幹細胞がんに対する治験。ステージC疾患、または局所療法が非対応もしくは局所療法後に増悪したステージBがあり、治癒的療法が非対応の患者さんが対象です。 チスレリズマブとソラフェニブを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。 登録予定数は、96人。 フェーズは、第3相臨床試験。 試験デザインは、無作為化、非盲検。 比較する対象は 試験群:チスレリズマブ 対照群:ソラフェニブ で主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は無増悪期間、健康関連QOL、奏効率、無増悪生存期間などで評価します。

疾患解説:肝細胞がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肝臓がんに罹患した人は、約40000人強です。50代くらいから増加し始め、80代前後をピークに、その後は減少します。 肝臓がんは、肝臓の細胞ががん化した悪性腫瘍です。肝臓内にある胆管にできたがんは、肝内胆管がんといいます。 日本人の肝臓がんはウイルス性肝炎から発生することが多いのが特徴です。最近は、C型やB型の肝炎ウイルスに対する治療薬ができたことで、ウイルス性肝炎がかなりコントロールできるようになったため減少傾向にあります。 その一方で、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など肝炎ウイルス以外の原因による肝臓がんが増加傾向にあるという報告もあります。

BCLC分類

BCLC病期分類は、全身状態とChild-Pugh分類(肝障害度)に基づき、ステージ0、ステージA~C、ステージDに大きく分類されます。ステージA~Cをさらに腫瘍数、結節数、門脈浸潤、全身状態により、早期:ステージA、中間期:ステージB、進行期:ステージCの3つの病期に分類します。 >>
ステージ PS Child-Pugh
0 0 A
A~C 早期A 0 A~B 1HCCか3結節≦3cm
中間期B 0 多結節
進行期C 1~2 門脈浸潤、N1、M1
D >2 C

Child-Pugh分類

Child-Pugh分類は、肝障害度を示す指標です。脳症、腹水、血清ビリルビン濃度、血清アルブミン濃度、プロトロンビン活性値の5項目を1~3点で評価し、その合計点によりA~Cの3段階に分類します。もっとも障害度が低いのがA、高いのはCです。
ポイント 1点 2点 3点
脳症 ない 軽度 ときどき昏睡
腹水 ない 少量 中等量
血清ビリルビン値(mg/dL) 2.0未満 2.0~3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 2.8~3.5 2.8未満
プロトロンビン活性値(%) 70超 40~70 40未満
A 5~6点
B 7~9点
C 10~15点

治験薬:チスレリズマブ

チスレリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:ソラフェニブ

ソラフェニブは、血管新生に関与する血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、腫瘍増殖に関与する血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、幹細胞因子受容体(KIT)、細胞分裂促進因子にかかわるRafなどの分子を標的にした分子標的薬です。 さまざまな受容体をマルチターゲットに阻害して、血管新生、腫瘍増殖などを抑制します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 肝細胞がん患者
  • バルセロナ臨床肝がん病気分類(BCLC)ステージC疾患があるまたは局所療法が非適応もしくは局所療法後に増悪したBCLCステージB疾患があり、治癒的療法が非適応である
  • 肝細胞がんの全身治療歴がない
  • 測定可能病変が1か所以上ある
  • 肝機能評価でChild-Pugh分類クラスAである
  • 全身状態( Performance Status;:PS)が1以下である
  • 十分な臓器機能があることが確認されている
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 既知の線維層状肝細胞がん、肉腫様肝細胞がん、または胆管細胞がんとの混合型肝細胞がんの組織像がある
  • 門脈本幹または下大静脈の腫瘍塞栓がある
  • 無作為割付前28日以内に肝臓の局所治療を受けている
  • スクリーニング時または無作為割付前6か月以内において出血性の食道または胃静脈瘤を伴う門脈圧亢進の臨床的所見がある
  • スクリーニング時または無作為割付前6か月以内において、出血または血栓性疾患もしくは治療域国際標準比モニタリングを要する抗凝固剤の処方薬を受けている
  • スクリーニング時に免疫不全または自己免疫疾患がある、および/または再発の可能性がある免疫不全または自己免疫疾患の既往がある
  • 無作為割付前14日以内にコルチコステロイドまたはその他の免疫抑制剤による全身治療を必要とした病態がある
  • 放射線治療に起因する場合を除き、間質性肺疾患または非感染性肺臓炎の既往がある スクリーニング時における、心拍数で補正したQT間隔が 450msecを超える

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。 ※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称 切除不能肝細胞がん患者を対象に、第一選択治療としてのBGB-A317とソラフェニブの有効性及び安全性を比較する無作為化、非盲検、多施設共同第III相試験
試験の概要 切除不能肝細胞がん患者を対象に、第一選択治療としてのBGB-A317とソラフェニブの有効性及び安全性を比較する
疾患名 治療歴のない切除不能肝細胞癌
試験薬剤名 Tislelizumab
用法・用量 Tislelizumab 200mgの3週ごと(Q3W)の静脈内投与(IV)
対照薬剤名 ソラフェニブ
用法・用量 ソラフェニブ400mgの1日2回(BID)の経口投与(PO)
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン 無作為化、非盲検
目標症例数 96
適格基準
  • 組織学的に確定されたHCCの診断を有する
  • バルセロナ臨床肝がん病気分類(BCLC)ステージC疾患を有する又は局所療法が非適応もしくは局所療法後に増悪したBCLCステージB疾患を有し、治癒的療法が非適応である
  • HCCの全身治療歴がない
  • 測定可能病変が1ヵ所以上ある
  • 肝機能評価でChild-Pugh分類クラスAである
  • ECOG PSが1以下である
  • 十分な臓器機能を有することが確認されている
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 既知の線維層状HCC(Fibrolamellar HCC)、肉腫様HCC、又は胆管細胞癌との混合型HCCの組織像を有する
  • 門脈本幹又は下大静脈の腫瘍塞栓を有する
  • 無作為割付前28日以内に肝臓の局所治療を受けている
  • スクリーニング時又は無作為割付前6ヵ月以内において出血性の食道又は胃静脈瘤を伴う門脈圧亢進の臨床的所見を有する
  • スクリーニング時又は無作為割付前6ヵ月以内において、出血又は血栓性疾患もしくは治療域国際標準比(INR)モニタリングを要する抗凝固剤の処方薬を受けている
  • スクリーニング時に免疫不全又は自己免疫疾患を有する、及び/又は再発の可能性がある免疫不全又は自己免疫疾患の既往がある
  • 無作為割付前14日以内にコルチコステロイド(prednisone 1日投与量> 10 mg又は同等のもの)又はその他の免疫抑制剤による全身治療を必要とした病態を有する
  • 放射線治療に起因する場合を除き、間質性肺疾患又は非感染性肺臓炎の既往がある
  • スクリーニング時における、心拍数で補正したQT間隔(QTc)(Fridericia法により補正)が 450 msecを超える
主要な評価項目 有効性 / efficacy
主要な評価方法 切除不能HCC患者を対象に、第一選択治療としてのtislelizumabとソラフェニブのOSを比較すること
副次的な評価項目 有効性 / efficacy 安全性 / safety
副次的な評価方法 TislelizumabとソラフェニブのORRを盲検化された独立判定機関(BIRC)によって固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECIST)version(v)1.1に基づいた評価方法に従って比較すること TislelizumabとソラフェニブのDORをBIRCによってRECIST v1.1に基づいた評価方法に従って比較すること Tislelizumabとソラフェニブの無増悪期間(TTP)を比較すること Tislelizumabとソラフェニブの健康関連クオリティ・オブ・ライフ(HRQoL)を比較すること Tislelizumabとソラフェニブの腫瘍評価項目(すなわちORR、PFS、DOR、TTP)を治験担当医によってRECIST v1.1に基づいた評価方法に従って比較すること Tislelizumabとソラフェニブの病勢コントロール率(DCR)及び臨床的有用率(CBR)をBIRC及び治験担当医によってRECIST v1.1に基づいた評価方法に従って比較すること Tislelizumabとソラフェニブの安全性及び忍容性を比較すること
予定試験期間 2018年4月1日~2022年5月31日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより