ステージ3の非小細胞肺がんに対するチスレリズマブの治験

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治験名

初発の局所進行切除不能3期非小細胞肺がん患者を対象としたチスレリズマブと化学放射線療法併用後のチスレリズマブ単剤のランダム化、盲検、プラセボ対照第3相試験

治験概要:

初発の局所進行切除不能の非小細胞肺がんに対する治験。ステージ3の患者さんが対象です。 チスレリズマブ+同時化学放射線療法併用後にチスレリズマブ単剤、プラセボ+同時化学放射線療法後にチスレリズマブとプラセボ+同時化学放射線療法後にプラセボ投与と比較して、無増悪生存期間、全生存期間、奏効割合、奏功期間などで評価する臨床試験です。 登録予定数は、51人。 フェーズは、3相臨床試験。 試験デザインは、第3相、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照多施設共同国際共同試験。 試験群:チスレリズマブ+同時化学放射線療法後、チスレリズマブ単独 試験群:プラセボ+同時化学放射線療法後、チスレリズマブ単独 対照群:プラセボ+同時化学放射線療法後、プラセボ単独 無増悪生存期間、全生存期間、奏効割合、奏功期間などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。 肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。 特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:チスレリズマブ

チスレリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:パクリタキセル

パクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。 細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。パクリタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。

治験薬:カルボプラチン

カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。 薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。

治験薬:シスプラチン

〇シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。 薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

治験薬:エトポシド

エトポシドは、トポイソメラーゼというDNAの複製に必要な酵素を阻害する抗がん薬です。 細胞が増殖する場合、DNAの複製が必要なため、その複製に必要な酵素を阻害することで、細胞死を誘導します。 がん細胞では、活発な増殖が起こっているため、DNA複製に必要なトポイソメラーゼを阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。 トポイソメラーゼにはI型とII型があり、薬剤によってそれぞれ作用する型が分かれます。エトポシドは、トポイソメラーゼII型と結合して、切断されたDNAの再結合を阻害するタイプのお薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 初発の局所進行切除不能3期非小細胞肺がん。スクリーニング時にPET/CT、およびMRIまたはCTを用いた脳画像により病期を確定している
  • 全身状態(performance status:PS)が1 以下
  • EGFR変異およびALK遺伝子転座の状態に関する検査の結果が得られている被験者
  • 新鮮腫瘍組織または保管腫瘍組織を提供できる被験者
  • 十分な血液機能および末端臓器機能がある被験者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • PD-1またはPD-L1標的療法を過去に受けたことがある、または非小細胞肺がんを管理するために化学療法、放射線療法、標的療法、生物学的療法、免疫療法、または治験薬の投与を受けたことのある被験者
  • その他のモノクローナル抗体に対する重度の過敏症反応の既往歴がある被験者
  • 間質性肺疾患の既往歴もしくは継続中の間質性肺疾患、またはステロイドの経口もしくは静脈内投与を要した肺臓炎の既往歴がある被験者
  • ランダム化前2年以内に活動性悪性腫瘍がある被験者。根治治療を施行した非小細胞肺がんおよび局所再発がんを除く
  • 全身の抗細菌、抗真菌、または抗ウイルス療法を要する重度の慢性または活動性の感染症がある被験者;HIV感染が確認された被験者;未治療の慢性B型肝炎がある被験者、慢性B型肝炎ウイルスHBV保有者、または活動性C型肝炎がある被験者;活動性の自己免疫疾患がある被験者
  • 同種幹細胞移植または臓器移植の施行歴がある被験者
  • 重度の心血管系疾患またはリスクにさらされる他の状態がある被験者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称 初発の局所進行切除不能III期非小細胞肺癌患者を対象としたtislelizumab(BGB-A317)と化学放射線療法併用後のtislelizumab単剤のランダム化、盲検、プラセボ対照第3相試験
試験の概要 本治験は、第3相、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照多施設共同国際共同試験であり、初発の局所進行切除不能III期NSCLC患者を対象に、有効性及び安全性に関してtislelizumabと同時化学放射線療法(cCRT)併用後のtislelizumab単剤投与とcCRT単独との比較、cCRT後にtislelizumabを投与したときとcCRT単独との比較をする
疾患名 未治療の局所進行切除不能III期非小細胞肺癌(NSCLC)
試験薬剤名 BGB-A317
用法・用量 BGB-A317 200mgを3週間に1回静脈内投与
対照薬剤名 プラセボ
用法・用量
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン 第3相、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照多施設共同国際共同試験
目標症例数 51
適格基準
  • 以下の選択基準をすべて満たす被験者を本治験の登録適格者とする
  • 初発の局所進行切除不能III期NSCLCと組織学的に確定診断された被験者。スクリーニング時にPET/CT、及び磁気共鳴画像法(MRI)又は造影コンピュータ断層撮影法(CT)を用いた脳画像により病期を確定する
  • 米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)performance statusが1 以下の被験者
  • ランダム化前にEGFR変異及びALK遺伝子転座の状態に関する検査の結果が得られている被験者
  • 新鮮腫瘍組織又は保管腫瘍組織を提供できる被験者
  • 十分な血液機能及び末端臓器機能を有する被験者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 以下のいずれかに該当する被験者は本治験から除外する
  • PD-1又はPD-L1標的療法を過去に受けたことがある、又はNSCLCを管理するために化学療法、放射線療法、標的療法、生物学的療法、免疫療法、又は治験薬の投与を受けたことのある被験者
  • その他のモノクローナル抗体に対する重度の過敏症反応の既往歴を有する被験者
  • 間質性肺疾患の既往歴若しくは継続中の間質性肺疾患、又はステロイドの経口若しくは静脈内投与を要した肺臓炎の既往歴を有する被験者
  • ランダム化前2年以内に活動性悪性腫瘍を有する被験者。根治治療を施行したNSCLC及び局所再発癌(基底細胞又は扁平上皮細胞由来の皮膚癌切除後、表在性膀胱癌、子宮頸部上皮内癌又は非浸潤性乳癌等)を除く
  • 全身の抗細菌、抗真菌、又は抗ウイルス療法を要する重度の慢性又は活動性の感染症を有する被験者;HIV感染が確認された被験者;未治療の慢性B型肝炎を有する被験者、慢性B型肝炎ウイルスHBV保有者、又は活動性C型肝炎を有する被験者;活動性の自己免疫疾患を有する被験者
  • 同種幹細胞移植又は臓器移植の施行歴を有する被験者
  • 重度の心血管系疾患又はリスクにさらされる他の状態を有する被験者
主要な評価項目 有効性 / efficacy
主要な評価方法 無増悪生存期間(PFS)
副次的な評価項目 安全性 / safety 有効性 / efficacy
副次的な評価方法 全生存期間(OS) 24ヵ月時点でのOS 奏効割合(ORR) 奏効期間(DoR) 12ヵ月時点での無増悪生存割合(APF12) 等
予定試験期間 2019年4月1日~2024年5月7日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより