ステージ4の非小細胞肺がんに対するレンバチニブ+ペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ製剤の治験
治験の募集状況は、「jRCT 臨床研究等提出・公開システム」ページでご確認ください。
治験名
LEAP-006試験
転移性非扁平上皮非小細胞肺がん患者を対象に1次治療としてレンバチニブ(E7080/MK-7902)の併用または非併用下でペメトレキセド+プラチナ製剤+ペムブロリズマブ(MK-3475)を投与した際の安全性および有効性を評価する第3相無作為化プラセボ対照試験
治験概要:
転移性非扁平上皮非小細胞肺がんに対する治験。 1次治療としてEGFR阻害薬、ALK阻害薬またはROS1阻害薬の適応にならないことが確認された患者さんが対象です。
ペメトレキセド+プラチナ製剤+ペムブロリズマブ+レンバチニブ併用とペメトレキセド+プラチナ製剤+ペムブロリズマブ+プラセボを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、726人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為割付、並行群間、多施設共同、二重盲検。
試験群:ペメトレキセド+プラチナ製剤+ペムブロリズマブ+レンバチニブ併用
対照群:ペメトレキセド+プラチナ製剤+ペムブロリズマブ+プラセボ
無増悪生存期間、全生存期間、用量制限毒性、有害事象および有害事象による治験薬の投与中止などで評価します。
疾患解説:非小細胞肺がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。
治験薬:レンバチニブ
レンバチニブは、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体と繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、Transfectionがん原遺伝子(RET)を阻害する分子標的薬です。
VEGF受容体1~3を阻害することで、血管新生を抑制し抗腫瘍効果を発揮します。また、ほかの血管新生阻害薬では標的とならなかった、FGF受容体も阻害するため、より強力に血管新生を抑制します。
治験薬:ペメトレキセド
ペメトレキセドは、細胞分裂に必要な葉酸に構造が類似している葉酸代謝拮抗薬です。
葉酸代謝拮抗薬の中でも、3つの酵素を阻害し主要な葉酸代謝酵素経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑え強い抗腫瘍効果を発揮します。
治験薬:カルボプラチン
カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。
治験薬:シスプラチン
シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。
治験薬:ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 転移性非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象に1次治療としてレンバチニブ(E7080/MK-7902)の併用又は非併用下でペメトレキセド+プラチナ製剤+ペムブロリズマブ(MK-3475)を投与した際の安全性及び有効性を評価する第III相無作為化プラセボ対照試験(LEAP-006試験) |
試験の概要 | 本試験の目的は転移性非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象に1次治療としてレンバチニブ(E7080/MK-7902)の併用又は非併用下でペメトレキセド+プラチナ製剤+ペムブロリズマブ(MK-3475)を投与した際の安全性及び有効性を評価する 本試験の主要仮説は、以下である:レンバチニブ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法は、プラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法と比較してPFS(BICR がRECIST 1.1に基づき評価)を延長させる。レンバチニブ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法は、プラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法と比較してOS を延長させる |
疾患名 | 非扁平上皮非小細胞肺癌 |
試験薬剤名 | ペメトレキセド+プラチナ製剤+ペムブロリズマブ+レンバチニブ |
用法・用量 | カルボプラチンAUC5 mg/mL/min Q3W又はシスプラチン 75 mg/m2 Q3W+ ペメトレキセド500 mg/m2 Q3W+ペムブロリズマブ 200 mg Q3W+レンバチニブ8 mg QDを4コース、そのとしてペメトレキセド500 mg/m2 Q3W+ペムブロリズマブ 200 mg Q3W+レンバチニブ8 mg QD 。ペムブロリズマブは合計35コース(約2年)まで投与可能 |
対照薬剤名 | ペメトレキセド+プラチナ製剤+ペムブロリズマブ+プラセボ |
用法・用量 | カルボプラチンAUC5 mg/mL/min Q3W又はシスプラチン 75 mg/m2 Q3W+ ペメトレキセド500 mg/m2 Q3W+ペムブロリズマブ 200 mg Q3W+プラセボ QDを4コース、その後ペメトレキセド500 mg/m2 Q3W+ペムブロリズマブ 200 mg Q3W+プラセボ QD 。ペムブロリズマブは合計35コース(約2年)まで投与可能。プラセボはパート2のみ |
試験のフェーズ | フェーズ3 / phase3 |
試験のデザイン | 無作為割付、並行群間、多施設共同、二重盲検 |
目標症例数 | 726 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | パート1:レンバチニブ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法の安全性及び忍容性を評価する 用量制限毒性(DLT)、有害事象及び有害事象による治験薬の投与中止 パート2:盲検下の中央画像判定機関(BICR)が固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)1.1に基づき評価した無増悪生存期間(PFS)を、レンバチニブ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群とプラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群で比較する PFSは無作為割付けから最初に記録された疾患進行(PD)又は原因を問わない死亡のいずれか早い時点までの期間と定義する OSは無作為割付けから原因を問わない死亡までの期間と定義する パート2:全生存期間(OS)をレンバチニブ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群とプラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群で比較する OSは無作為割付けから原因を問わない死亡までの期間と定義する |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | パート2:BICRがRECIST1.1に基づき評価した奏効率(ORR)を、レンバチニブ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群とプラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群で比較する 奏効は完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)と定義する パート2:BICRがRECIST1.1に基づき評価した奏効期間をレンバチニブ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群とプラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群で比較する。奏効期間は、CR又はPRが確定した患者で最初にCR又はPRが記録された時点から、PD又は原因を問わない死亡のいずれか早い時点までの期間と定義する パート2:安全性及び忍容性をレンバチニブ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群とプラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群で比較する 有害事象及び有害事象による治験薬の投与中止 パート2:Global Health Status/生活の質(QOL)、咳嗽、胸痛、呼吸困難及び身体機能のベースラインからの平均変化量を、レンバチニブ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群とプラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群で比較する 以下の患者アンケート(PRO)評価尺度及び項目のスコア:Global Health Status/QOL[European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)Quality of Life Questionnaire-Core 30 items(QLQ-C30)の項目29及び項目30]、咳嗽[EORTC Quality of Life Questionnaire-Lung Cancer Module 13(QLQ-LC13)の項目31]、胸痛(EORTC QLQ-LC13の項目40)、呼吸困難(EORTC QLQ-C30の項目8)及び身体機能(EORTC QLQ-C30の項目1~5) パート2:Global Health Status/QOL、咳嗽、胸痛、呼吸困難及び身体機能の真の悪化までの期間(TTD)を、レンバチニブ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群とプラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用化学療法群で比較する。・TTDは、Global Health Status/QOL(EORTC QLQ-C30の項目29及び項目30)、咳嗽(EORTC QLQ-LC13の項目31)、胸痛(EORTC QLQ-LC13の項目40)、呼吸困難(EORTC QLQ-C30の項目8)及び身体機能(EORTC QLQ-C30の項目1~5)がベースラインから最初に10ポイント以上減少するまでの期間と定義し、この10ポイント以上の減少は次の来院でも確認されることとする |
予定試験期間 | 2019年3月25日~2023年8月21日 |