ステージ2、3A、3Bの非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの治験

治験名

切除可能な2、3A、または一部の3B期の非小細胞肺がん患者を対象に、プラチナ製剤をベースとする化学療法との併用におけるアテゾリズマブ術前補助療法の有効性および安全性を評価する第3相二重盲検多施設共同ランダム化試験

治験概要:

扁平上皮または非扁平上皮非小細胞肺がんに対する治験。切除可能なステージ2~3Aまたは一部の3B期の患者さんが対象です。
アテゾリズマブ+化学療法とプラセボ+化学療法を比較して、有効性、安全性、薬物動態、免疫原性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、374人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、多施設共同、二重盲検試験、ランダム化。
試験群:アテゾリズマブ+化学療法
対照群:プラセボ+化学療法
病理学的奏効率、無イベント生存率、全生存期間、安全性、薬物動態などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:アテゾリズマブ

アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:ナブパクリタキセル

ナブパクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬であるパクリタキセルと人血清アルブミンを結合させ、ナノ粒子化した抗がん薬です。
タキサン系は水に溶けにくいため、無水エタノール(アルコール)を含んだ液体に溶かして使用されますが、ナブパクリタキセルは、溶けやすくアルコールも使わないため、アレルギー様症状も起こりにくいという特徴があります。
薬の作用は、パクリタキセルと同様、細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。
アルコールを使わないため、投与量を多くすることができますが、その分関節痛や筋肉痛、末梢神経障害などの副作用が出やすい傾向があります。

対照薬:ペメトレキセド

ペメトレキセドは、細胞分裂に必要な葉酸に構造が類似している葉酸代謝拮抗薬です。
葉酸代謝拮抗薬の中でも、3つの酵素を阻害し主要な葉酸代謝酵素経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑え強い抗腫瘍効果を発揮します。

対照薬:カルボプラチン

カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。

対照薬:シスプラチン

シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

対照薬:ゲムシタビン

ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。
ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 全身状態(performance status:PS)が0または1
  • 2期、3A期または一部のI3B期(T3N2のみ)の扁平上皮がんまたは非扁平上皮非小細胞肺がんと組織学的または細胞学的に確認されている
  • 手術担当外科医および関与する腫瘍内科医により根治を目指すR0切除に対する適格性があると評価された患者
  • 外科的切除を行うための十分な肺・心機能がある
  • 測定可能病変がある
  • 十分な血液学的機能および主要臓器機能がある
  • スクリーニング時のHIV検査が陰性である
  • スクリーニング時に活動性HBV、HCVに感染していない
  • 中央検査によるPD-L1の発現状況の判定に適した腫瘍検体が入手可能である
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 肺がん治療歴がある
  • ランダム化前5年以内の非小細胞肺がん以外の悪性腫瘍の既往歴がある
  • EGFRの活性化変異またはALK融合がん遺伝子がある非扁平上皮非小細胞肺がん患者
  • 妊娠中または授乳中の女性
  • 自己免疫疾患の既往歴がある
  • 特発性肺線維症、器質化肺炎、薬剤性肺臓炎または特発性肺臓炎の既往歴、もしくはスクリーニング時の胸部コンピューター断層撮影での活動性肺臓炎の所見がある
  • CD137アゴニストまたは抗CTLA-4、抗PD-1、抗PD-L1抗体薬などの免疫チェックポイント阻害剤の投与歴がある
  • ランダム化前4週間以内の重度の感染症の既往がある
  • 重大な心血管系疾患がある

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称切除可能なII、IIIA、又は一部のIIIB期の非小細胞肺癌患者を対象に、プラチナ製剤をベースとする化学療法との併用におけるアテゾリズマブ術前補助療法の有効性及び安全性を評価する第III相二重盲検多施設共同ランダム化試験
試験の概要本治験は、切除可能なII、IIIA又は一部のIIIB期の非小細胞肺癌患者を対象として、アテゾリズマブとプラチナ製剤をベースとする化学療法との併用による術前補助療法の有効性、安全性、薬物動態及び免疫原性をプラセボ+プラチナ製剤併用化学療法と比較して評価する第III相国際共同多施設共同二重盲検ランダム化試験である
疾患名非小細胞肺癌
試験薬剤名アテゾリズマブ
用法・用量術前補助療法フェーズでは、4サイクル(1サイクル21日)にわたり固定用量1200mgを各サイクルのDay1に点滴静注により投与する。術後補助療法フェーズでは、16サイクル(1サイクル21日)にわたり1200mgを脈内投与する
対照薬剤名ナブパクリタキセル
用法・用量術前補助療法フェーズで、4サイクル(1サイクル21日)にわたり、各サイクルのDay1、8、15に100mg/m^2で静脈内投与する
対照薬剤名ペメトレキセド
用法・用量術前補助療法フェーズで、4サイクル(1サイクル21日)にわたり、各サイクルのDay1に500mg/m^2を静脈内投与する
対照薬剤名カルボプラチン
用法・用量術前補助療法フェーズで、4サイクル(1サイクル21日)にわたり各サイクルのDay1に、濃度-時間曲線下面積(AUC)6mg/mL/min(Calvert式による用量)に達するまで静脈内投与する
対照薬剤名シスプラチン
用法・用量術前補助療法フェーズで、4サイクル(1サイクル21日)にわたり、各サイクルのDay1に75mg/m^2を静脈内投与する
対照薬剤名ゲムシタビン
用法・用量術前補助療法フェーズで、4サイクル(1サイクル21日)にわたり、各サイクルのDay1、8に1250mg/m^2で静脈内投与する
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン多施設共同、二重盲検試験、ランダム化
目標症例数374
適格基準
  • ECOG PS 0又は1
  • II期、IIIA期又は一部のIIIB期(T3N2のみ)の扁平上皮癌又は非扁平上皮NSCLCと組織学的又は細胞学的に確認されている。病期診断はAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)/Union Internationale Contre le Cancer(UICC)第8版のNSCLCの病期分類システムに基づくものであること
  • 手術担当外科医及び関与する腫瘍内科医により根治を目指すR0切除に対する適格性を有すると評価された患者
  • 外科的切除を行うための十分な肺・心機能を有する
  • RECISTv1.1による測定可能病変を有する
  • 十分な血液学的機能及び主要臓器機能を有する
  • スクリーニング時のHIV検査が陰性である
  • スクリーニング時に活動性HBV、HCVに感染していない
  • 中央検査によるPD-L1の発現状況の判定に適した腫瘍検体が入手可能である
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 肺癌治療歴を有する
  • ランダム化前5年以内のNSCLC以外の悪性腫瘍の既往歴を有する
  • 上皮成長因子受容体(EGFR)の活性化変異又は未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合癌遺伝子を有する非扁平上皮NSCLC患者
  • 妊娠中又は授乳中の女性
  • 自己免疫疾患の既往歴を有する
  • 特発性肺線維症、器質化肺炎(例:閉塞性細気管支炎)、薬剤性肺臓炎又は特発性肺臓炎の既往歴、若しくはスクリーニング時の胸部コンピューター断層撮影(CT)での活動性肺臓炎の所見がある
  • CD137アゴニスト又は抗CTLA-4、抗PD-1、抗PD-L1抗体薬などの免疫チェックポイント阻害剤の投与歴を有する
  • ランダム化前4週間以内の重度の感染症の既往を有する
  • 重大な心血管系疾患を有する
主要な評価項目有効性/efficacy
検証的/confirmatory
主要な評価方法Major Pathological Response(MPR):中央病理検査機関判定、pathological responseにて評価
EFS:主治医判定、RECIST v1.1にて評価
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
探索性/exploratory
薬物動態/pharmacokinetics
副次的な評価方法 OS:観察
EFS:中央判定、RECISTv1.1にて評価
ORR、DFS:主治医判定、RECISTv1.1にて評価
予定試験期間2018年4月24日~2025年3月30日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより