ステージ2、3の非小細胞肺がんに対するデュルバルマブの治験

治験名

AEGEAN

ステージ2および3の切除可能非小細胞肺がん患者に対する治療として、ネオアジュバント/アジュバント療法におけるデュルバルマブ投与を評価する第3相二重盲検プラセボ対照国際多施設共同試験

治験概要:

ステージ2および「3の切除可能非小細胞肺がんに対する治験。過去に免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けたことがない患者さんが対象です。
デュルバルマブ+化学療法とプラセボ+化学療法を比較して、有効性と安全性などで評価する臨床試験です。
登録予定数は、26人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、並行群間、二重盲検。
試験群:デュルバルマブ+化学療法
対照群:プラセボ+化学療法
完全奏効率、全生存期間、無イベント生存率、無病生存期間、薬物動態評価などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:デュルバルマブ

デュルバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:カルボプラチン

カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。

治験薬:パクリタキセル

パクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。パクリタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。

治験薬:シスプラチン

シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

治験薬:ゲムシタビン

ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。 ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。

治験薬:ペメトレキセド

ペメトレキセドは、細胞分裂に必要な葉酸に構造が類似している葉酸代謝拮抗薬です。
葉酸代謝拮抗薬の中でも、3つの酵素を阻害し主要な葉酸代謝酵素経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑え強い抗腫瘍効果を発揮します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 切除可能ステージ2A~一部のステージ3Bな非小細胞肺がんがある者
  • 全身状態(performance status:PS)が0または1
  • 標的病変として適格とされる、放射線照射を過去に受けていない病変を1つ以上ある者
  • 過去に、抗CTLA-4、抗PD-1、抗PD-L1、および抗PD-L2抗体などの免疫介在療法の既往がない者
  • 内臓および骨髄の機能が適切である者
  • 無作為割付け前に患者の腫瘍のPD-L1状態が確認されていること
  • EGFRおよびALKの状態の記録が得られる者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 同種臓器移植歴がある者
  • 現在または過去に、自己免疫疾患または炎症性疾患、憩室炎、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス症候群、またはウェゲナー症候群が確認された者
  • 別の原発性悪性腫瘍の既往がある者
  • 活動性の原発性免疫不全症の既往がある者
  • 結核、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、またはヒト免疫不全ウイルス感染等の活動性感染がある者
  • 切除不能非小細胞肺がんと認められる者
  • 治療計画の一環として術前放射線療法を受ける者
  • 脳転移または脊髄圧迫が認められる者
  • ステージ3BN3並びにステージ3C、4A、および4Bの非小細胞肺がんがある者
  • 組織学的に小細胞肺がんと非小細胞肺がんの混合型肺がんがある者
  • 区域切除または楔状切除のみの候補とされる者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称ステージII及びIIIの切除可能非小細胞肺癌患者に対する治療として、ネオアジュバント/アジュバント療法におけるデュルバルマブ投与を評価する第III相二重盲検プラセボ対照国際多施設共同試験
試験の概要mPRを指標として、術前投与したデュルバルマブ+化学療法の効果について、術前投与したプラセボ+化学療法との比較により評価する第3相二重盲検無作為化プラセボ対照国際多施設共同試験
疾患名非小細胞肺がん
試験薬剤名デュルバルマブ、カルボプラチン/パクリタキセル、シスプラチン/ゲムシタビン、ペメトレキセド/シスプラチン、ペメトレキセド/カルボプラチン
用法・用量デュルバルマ:デュルバルマブ1500mg又はプラセボを点滴静注により術前に3週毎投与を最大4サイクル、術後に4週毎投与を12サイクル実施する
対照薬剤名プラセボ、カルボプラチン+パクリタキセル、シスプラチン+ゲムシタビン、ペメトレキセド+シスプラチン、ペメトレキセド+カルボプラチン
用法・用量プラセボ-標準治療扁平上皮型:・カルボプラチン+パクリタキセル:カルボプラチンAUC6及びパクリタキセル200mg/m2を点滴静注により、各3週間サイクルのDay1に投与し、これを4サイクル実施する。・シスプラチン+ゲムシタビン:シスプラチン75mg/m2を点滴静注により、各3週間サイクルのDay1に投与し、これを4サイクル実施する。ゲムシタビン1250mg/m2(日本では1000mg/m2)を点滴静注により、各3週間サイクルのDay1及びDay8に投与し、これを4サイクル実施する。非扁平上皮型:・ペメトレキセド+シスプラチン:ペメトレキセド500mg/m2及びシスプラチン75mg/m2を点滴静注により、各3週間サイクルのDay1に投与し、これを4サイクル実施する。・ペメトレキセド+カルボプラチン:ペメトレキセド500mg/m2及びカルボプラチンAUC5を点滴静注により、各3週間サイクルのDay1に投与し、これを4サイクル実施する
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン無作為化、並行群間、二重盲検
目標症例数26
適格基準
  • 織学的又は細胞学的に確認された切除可能[ステージIIA~一部のステージIIIB(すなわち、N2)]なNSCLCを有する者
  • 組入れ時に世界保健機関(WHO)/ECOG performance statusが0又は1である者
  • ベースライン時にRECISTガイドライン第1.1版の標的病変として適格とされる、放射線照射を過去に受けていない病変を1つ以上有する者
  • 過去に、抗CTLA-4、抗PD-1、抗PD-L1、及び抗PD-L2抗体等(ただし、これらに限定されない)の免疫介在療法の既往がない者
  • 内臓及び骨髄の機能が適切である者
  • 無作為割付け前に患者の腫瘍のPD-L1状態が確認されていること
  • EGFR及びALKの状態の記録が得られる者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 同種臓器移植歴がある者
  • 現在又は過去に、自己免疫疾患又は炎症性疾患[炎症性腸疾患(例:大腸炎又はクローン病)、憩室炎(憩室症を除く)、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス症候群、又はウェゲナー症候群が確認された者
  • 別の原発性悪性腫瘍の既往がある者
  • 活動性の原発性免疫不全症の既往がある者
  • 結核、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染等の活動性感染を有する者
  • 集学的評価に基づき、切除不能NSCLCと認められる者
  • 治療計画の一環として術前放射線療法を受ける者
  • 脳転移又は脊髄圧迫が認められる者
  • ステージIIIBN3並びにステージIIIC、IVA、及びIVBのNSCLCを有する者
  • 組織学的に小細胞肺癌とNSCLCの混合型肺癌を有する者
  • 区域切除又は楔状切除のみの候補とされる者
主要な評価項目有効性/efficacy
ファーマコゲノミクス/pharmacogenomics
主要な評価方法Major Pathological Response(mPR)
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
生物学的同等性/bioequivalence
検証的/confirmatory
探索性/exploratory
薬物動態/pharmacokinetics
薬力学/pharmacodynamics
ファーマコゲノミクス/pharmacogenomics
その他/other
副次的な評価方法Pathological complete response(pCR)
Overall Survival(OS)
Event-free survival(EFS)
Disease-free survival(DFS)
デュルバルマブ+化学療法の術前投与後にデュルバルマブを術後投与した患者における疾患関連症状及びHRQoLについて、プラセボ+化学療法の術前投与後にプラセボを術後投与した患者との比較評価
デュルバルマブの薬物動態評価
デュルバルマブに対するADAの有無
PD-L1-TC1%以上の患者におけるmPR
予定試験期間2018年12月1日~2025年4月30日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより