ステージ4非小細胞肺がんに対するオラパリブ併用の治験

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治験名

転移性扁平上皮非小細胞肺がんの未治療患者を対象としたペムブロリズマブ+カルボプラチン/タキサン(パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)併用投与後のペムブロリズマブ+オラパリブ維持療法併用投与とペムブロリズマブ単独投与を比較する第3相試験

治験概要:

転移性扁平上皮非小細胞肺がんに対する治験。全身療法歴のない患者さんが対象です。
ペムブロリズマブ+カルボプラチン+タキサン(パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)+オラパリブとペムブロリズマブ+カルボプラチン+タキサン(パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)+プラセボを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、735人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、並行群間、多施設共同、二重盲検試験。
試験群:ペムブロリズマブ+カルボプラチン+タキサン(パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)+オラパリブ
対照群:ペムブロリズマブ+カルボプラチン+タキサン(パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)+プラセボ
無増悪生存期間、全生存期間、有害事象、有害事象による治験薬投与中止、生活の質などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:オラパリブ

オラパリブは、損傷したDNAを修復するPARPと呼ばれる酵素を阻害する分子標的薬です。
正常な細胞でDNAに損傷が起こると、PARPが修復します。PARP阻害薬で修復を妨げても、PARP以外のBRCA1とBRCA2という遺伝子が、たんぱく質を生成し損傷したDNAを修復します。しかし、BRCA1/2遺伝子に変異があると、損傷したDNAの修復が行われないため細胞死を誘導します。
オラパリブは、BRCA1/2遺伝子変異によってDNAが修復できずがん化した細胞に特異的に働き、PARPを阻害することでがん細胞のDNA損傷の修復をさせず細胞死を誘導します。

治験薬:ペムブロリズマブ

ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:カルボプラチン

カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。

治験薬:パクリタキセル

パクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。パクリタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。

治験薬:ナブパクリタキセル

ナブパクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬であるパクリタキセルと人血清アルブミンを結合させ、ナノ粒子化した抗がん薬です。
タキサン系は水に溶けにくいため、無水エタノール(アルコール)を含んだ液体に溶かして使用されますが、ナブパクリタキセルは、溶けやすくアルコールも使わないため、アレルギー様症状も起こりにくいという特徴があります。
薬の作用は、パクリタキセルと同様、細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。
アルコールを使わないため、投与量を多くすることができますが、その分関節痛や筋肉痛、末梢神経障害などの副作用が出やすい傾向があります。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 扁平上皮非小細胞肺がんと診断された患者
  • ステージ4の扁平上皮非小細胞肺がん患者
  • 測定可能病変がある患者
  • 進行または転移性非小細胞肺がんに対する全身療法歴がない患者
  • 保存腫瘍組織検体または過去に放射線照射を受けていない部位から新たに採取したコア生検検体または切除生検検体を提出可能な患者
  • 全身状態(Performance Score:PS)が0または1の患者
  • 3か月以上の生存が見込まれる患者
  • 適切な臓器機能がある患者
  • 投与期間中およびペムブロリズマブ、オラパリブ、細胞傷害性化学療法の最終投与後少なくとも180日間、治験実施計画書に詳述する避妊法を使用することに同意した患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 非扁平上皮がんが大部分を占める非小細胞肺がん患者
  • 過去3年以内に進行または治療が必要な他の悪性腫瘍がある患者
  • 活動性の中枢神経系への転移またはがん性髄膜炎がある患者
  • カルボプラチン、パクリタキセル、nab-パクリタキセルまたはオラパリブの成分または添加剤に対して過敏症の既往がある患者
  • ペムブロリズマブおよび/またはその添加剤に対する重度の過敏症がある患者
  • 過去2年以内に全身性の治療を要した活動性の自己免疫疾患がある患者
  • 免疫不全状態と診断された患者、または治験薬初回投与前7日以内に長期全身性ステロイド療法や他の免疫抑制療法による治療を受けた患者
  • HIV感染の既往がある患者。規制当局により必須とされていない場合にはHIV検査を実施する必要はない
  • 肺臓炎を合併、もしくはステロイド投与が必要な肺臓炎の既往がある患者
  • オラパリブまたはその他のPARP阻害剤の治療歴がある患者
  • 抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2の薬剤または他の補助刺激性または共抑制性T細胞受容体を標的とした薬剤の治療歴がある患者
  • 骨髄異形成症候群または急性骨髄性白血病を合併、もしくは疑いの所見がある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称転移性扁平上皮非小細胞肺癌の未治療患者を対象としたペムブロリズマブ+カルボプラチン/タキサン(パクリタキセル又はnab-パクリタキセル)併用投与後のペムブロリズマブ+オラパリブ維持療法併用投与とペムブロリズマブ単独投与を比較する第III相試験
試験の概要本試験は、扁平上皮の非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象としてペムブロリズマブ+オラパリブ維持療法とペムブロリズマブ+プラセボを比較評価する。本試験の2つの主要評価項目は以下の通り
仮説1:ペムブロリズマブ+オラパリブ維持療法は、ペムブロリズマブ+プラセボと比較して、RECIST1.1に基づきBICRが評価したPFSを延長する
仮説2:ペムブロリズマブ+オラパリブ維持療法は、ペムブロリズマブ+プラセボと比較して、OSを延長する
疾患名扁平上皮NSCLC
試験薬剤名ペムブロリズマブ+カルボプラチン+タキサン(パクリタキセル又はnab-パクリタキセル)+オラパリブ
用法・用量導入療法期(4コース):ペムブロリズマブ200mgを3週間間隔(Q3W)で1~4コース目の1日目に静脈内投与(IV)、カルボプラチン血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)6mg・min/mLをQ3Wで1~4コース目の1日目にIV、タキサン(治験担当医師がパクリタキセル又はnab-パクリタキセルのいずれかを選択)パクリタキセル200mg/m2をQ3Wで1~4コース目の1日目にIV又はnab-パクリタキセル100mg/m2を1~4コース目の1、8、15日目にIV。維持療法期(ペムブロリズマブ最大31コース):ペムブロリズマブ200mgQ3WIVを、最大31コース又は規定の中止基準に該当するまで継続、オラパリブ300mg1日2回(BID)を、規定の中止基準に該当するまで継続
対照薬剤名ペムブロリズマブ+カルボプラチン+タキサン(パクリタキセル又はnab-パクリタキセル)+プラセボ
用法・用量導入療法期(4コース):ペムブロリズマブ200mgをQ3Wで1~4コース目の1日目に静脈内投与(IV)、カルボプラチン血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)6mg・min/mLをQ3Wで1~4コース目の1日目にIV、タキサン(治験担当医師がパクリタキセル又はnab-パクリタキセルのいずれかを選択)パクリタキセル200mg/m2をQ3Wで1~4コース目の1日目にIV又はnab-パクリタキセル100mg/m2を1~4コース目の1、8、15日目にIV。維持療法期(ペムブロリズマブ最大31コース):ペムブロリズマブ200mgQ3WIVを、最大31コース又は規定の中止基準に該当するまで継続、オラパリブプラセボBIDを、規定の中止基準に該当するまで継続
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン無作為化、並行群間、多施設共同、二重盲検試験
目標症例数735
適格基準
  • 組織学的又は細胞学的に扁平上皮NSCLCと診断された患者
  • 病期がIV期である扁平上皮NSCLC患者
  • RECIST1.1に基づく測定可能病変を有する患者
  • 進行又は転移性NSCLCに対する全身療法歴がない患者
  • 保存腫瘍組織検体又は過去に放射線照射を受けていない部位から新たに採取したコア生検検体又は切除生検検体を提出可能な患者
  • 治験薬初回投与前7日以内にECOG Performance Scoreが0又は1の患者
  • 3ヵ月以上の生存が見込まれる患者
  • 適切な臓器機能を有する患者
  • 投与期間中及びペムブロリズマブ、オラパリブ、細胞傷害性化学療法の最終投与後少なくとも180日間、治験実施計画書に詳述する避妊法を使用することに同意した患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 組織学的に非扁平上皮癌が大部分を占めるNSCLC患者
  • 過去3年以内に進行又は治療が必要な他の悪性腫瘍を有する患者
  • 活動性の中枢神経系への転移又は癌性髄膜炎を有する患者
  • カルボプラチン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル又はオラパリブの成分又は添加剤に対して過敏症の既往を有する患者
  • ペムブロリズマブ及び/又はその添加剤に対する重度(Grade3以上)の過敏症を有する患者
  • 過去2年以内に全身性の治療を要した活動性の自己免疫疾患を有する患者
  • 免疫不全状態と診断された患者、又は治験薬初回投与前7日以内に長期全身性ステロイド療法や他の免疫抑制療法による治療を受けた患者
  • HIV感染の既往を有する患者。規制当局により必須とされていない場合にはHIV検査を実施する必要はない
  • 肺臓炎を合併、若しくはステロイド投与が必要な(非感染性の)肺臓炎の既往を有する患者
  • オラパリブ又はその他のPARP阻害剤の治療歴を有する患者
  • 抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2の薬剤又は他の補助刺激性又は共抑制性T細胞受容体(CTLA-4、OX-40、CD137等)を標的とした薬剤の治療歴を有する患者
  • 骨髄異形成症候群(MDS)又は急性骨髄性白血病(AML)を合併、若しくはMDS/AMLを疑う所見を有する患者
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)1.1に基づき、盲検化された中央画像判定機関(BICR)が評価した、無増悪生存期間(PFS:無作為化から記録された疾患進行又は原因を問わない死亡のいずれか早い時点までの期間)
全生存期間(OS:無作為化から原因を問わない死亡までの期間)
副次的な評価項目全性/safety
有効性/efficacy
副次的な評価方法安全性及び忍容性
有害事象(AE)
AEによる治験薬投与中止
全般的健康状態/生活の質(QoL)、咳嗽、胸痛、呼吸困難、及び身体機能のベースライン(無作為化時点)からの変化及び真の悪化までの期間(TTD)
予定試験期間2019年9月20日~2024年5月6日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより