進行または転移性RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するセルペルカチニブの治験

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治験名

LIBRETTO-431

進行または転移性RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がんの初回治療としてセルペルカチニブをペムブロリズマブ併用あり/なしの白金製剤およびペメトレキセド療法と比較する多施設共同・無作為化・非盲検第3相試験

治験概要:

進行または転移性の非小細胞肺がんに対する治験。RET融合遺伝子陽性の患者さんが対象です。
セルペルカチニブとペムブロリズマブ+白金製剤+ペメトレキセド療法または白金製剤+ペメトレキセド療法を比較して、有効性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、400人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、国際多施設共同、無作為化、非盲検、実薬対照、第3相試験。
試験群:セルペルカチニブ
対照群:ペムブロリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチンまたはシスプラチン
対照群:ペメトレキセド+カルボプラチンまたはシスプラチン
無増悪生存期間、奏効率、奏効期間、全生存期間などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:セルペルカチニブ

セルペルカチニブは、RETキナーゼを選択的に阻害する分子標的薬です。
RET融合遺伝子と活性化変異を含むRETキナーゼの遺伝子異常は、RETシグナル伝達と制御不能な細胞増殖の原因となります。
セルペルカチニブは、過剰なRETシグナルを抑制することで、がん細胞の増殖を抑制します。

対照薬:ペムブロリズマブ

ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:ペメトレキセド

ペメトレキセドは、細胞分裂に必要な葉酸に構造が類似している葉酸代謝拮抗薬です。
葉酸代謝拮抗薬の中でも、3つの酵素を阻害し主要な葉酸代謝酵素経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑え強い抗腫瘍効果を発揮します。

対照薬:カルボプラチン

カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。

対照薬:シスプラチン

シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 根治的外科手術または放射線療法が適用とならないステージ2B~3C期または4期の非小細胞肺がん
  • RET遺伝子の融合が認められた患者
  • RET融合遺伝子/変異の状態について後ろ向き分析を行うために、十分量の未染色の保存腫瘍組織検体を提供可能である方
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0~2
  • 十分な臓器機能が認められる患者
  • 妊娠可能なパートナーがある男性または妊娠可能な女性は、確実に有効な避妊法を治験薬投与期間中および最終投与から6か月間使用することに同意できる患者
  • カプセルを飲み込むことができる患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 非小細胞肺癌中に、発がん性が明らかとなっている他のドライバー遺伝子がある患者
  • 前治療として転移病変に対する全身療法を受けていた患者
  • 無作為化の少なくとも12か月以内に補助化学療法または術前補助化学療法を受けていた患者
  • 治験薬投与開始予定前3週間以内に大手術を受けた患者
  • 治験薬の初回投与1週間以内に姑息的放射線療法を受けた、または治験薬の初回投与前6か月以内に肺に対して30Gyを超える姑息的放射線療法を受けた患者
  • 症候性の中枢神経系への転移、がん性髄膜炎、未治療の脊髄圧迫を認める患者
  • 臨床的に重要な活動性の心血管疾患を認める、または治験治療開始予定前6か月以内に心筋梗塞の既往がある患者、あるいはベースライン期間中のECG測定でFridericia式による心拍数補正QT間隔延長が複数回認められた患者
  • 治療が必要な活動性、コントロール不良、かつ全身性の細菌、ウイルス、または真菌感染を認める患者
  • 治験薬の胃腸管吸収に影響を及ぼす可能性が高い臨床的に重要な活動性の吸収不良症候群またはその他の状態が認められる患者
  • その他の悪性腫瘍を認める患者
  • 症候性の腹水または胸水を認める患者
  • ペムブロリズマブを投与する被験者の除外基準
  • 臨床的に重要な放射線肺臓炎を含め間質性肺疾患または間質性肺臓炎の既往がある患者
  • 活動性の自己免疫疾患を認める患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。

試験概要詳細

試験の名称 LIBRETTO-431:進行又は転移性RET 融合遺伝子陽性非小細胞肺癌の初回治療としてセルペルカチニブをペムブロリズマブ併用あり/なしの白金製剤及びペメトレキセド療法と比較する多施設共同・無作為化・非盲検第III 相試験
試験の概要進行又は転移性のRET融合遺伝子陽性NSCLC患者を対象として、セルペルカチニブとペムブロリズマブ併用あり/なしの白金製剤(カルボプラチン又はシスプラチン)及びペメトレキセド療法のPFSを比較すること
疾患名肺がん
試験薬剤名セルペルカチニブ
用法・用量経口投与
対照薬剤名ペムブロリズマブ
用法・用量静脈注射
対照薬剤名ペメトレキセド
用法・用量静脈注射
対照薬剤名シスプラチン
用法・用量静脈注射
対照薬剤名カルボプラチン
用法・用量静脈注射
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン国際多施設共同、無作為化、非盲検、実薬対照、第III相試験
目標症例数400
適格基準
  • 根治的外科手術又は放射線療法が適用とならないIIB~IIIC期又はIV期のNSCLC
  • 血液中/腫瘍中にRET遺伝子の融合が認められた患者
  • RET融合遺伝子/変異の状態について後ろ向き分析を行うために、十分量の未染色の保存腫瘍組織検体を提供可能である方
  • ECOG PSが0~2
  • 十分な臓器機能が認められる患者
  • 妊娠可能なパートナーを有する男性又は妊娠可能な女性は、確実に有効な避妊法を治験薬投与期間中及び最終投与から6ヵ月間使用することに同意できる患者
  • カプセルを飲み込むことができる患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • NSCLC中に、発癌性が明らかとなっている他のドライバー遺伝子を有する患者
  • 前治療として転移病変に対する全身療法を受けていた患者
  • 無作為化の少なくとも12ヵ月以内にアジュバント療法又はネオアジュバント療法を受けていた患者
  • 治験薬投与開始予定前3週間以内に大手術を受けた患者
  • 治験薬の初回投与1週間以内に姑息的放射線療法を受けた、又は治験薬の初回投与前6ヵ月以内に肺に対して30Gyを超える姑息的放射線療法を受けた患者
  • 症候性の中枢神経系(CNS)への転移、癌性髄膜炎、未治療の脊髄圧迫を認める患者
  • 臨床的に重要な活動性の心血管疾患を認める、又は治験治療開始予定前6ヵ月以内に心筋梗塞の既往を有する患者、あるいはベースライン期間中のECG測定でFridericia式による心拍数補正QT間隔延長(470msec超)が複数回認められた患者
  • 治療が必要な活動性、コントロール不良、かつ全身性の細菌、ウイルス、又は真菌感染を認める患者
  • 治験薬の胃腸管吸収に影響を及ぼす可能性が高い臨床的に重要な活動性の吸収不良症候群又はその他の状態が認められる患者
  • その他の悪性腫瘍を認める患者
  • 症候性の腹水又は胸水を認める患者
  • ペムブロリズマブを投与する被験者の除外基準
  • 臨床的に重要な放射線肺臓炎を含め間質性肺疾患又は間質性肺臓炎の既往がある患者
  • 活動性の自己免疫疾患を認める患者
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法BICRがRECIST1.1に基づいて判定するPFS
副次的な評価項目有効性/efficacy
副次的な評価方法〇BICRがRECIST1.1に基づいて判定するPFS
治験責任(分担)医師がRECIST1.1に基づいて判定するPFS
BICRがRECIST1.1に基づいて判定するORR/DOR
治験責任(分担)医師がRECIST1.1に基づいて判定するORR/DOR
OS
肺症状の増悪までの時間
予定試験期間2020年4月1日~2026年2月28日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより