T790M変異陰性のEGFR変異陽性非小細胞肺がんに対するオシメルチニブの医師主導治験
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治験名
医師主導治験WJOG12819L
第1・2世代EGFR-TKI治療後、脳転移単独増悪(T790M変異陰性/不明)もしくは第1・2世代EGFR-TKI治療およびプラチナ治療後Systemic PD(T790M変異陰性)を示したEGFR変異陽性非小細胞肺がん患者に対するオシメルチニブを用いた第2相試験
治験概要:
EGFR変異陽性非小細胞肺がんに対する治験。第1・2世代EGFR-TKI治療後、脳転移単独増悪もしくは第1・2世代EGFR-TKI治療およびプラチナ治療後T790M変異陰性を示した患者さんが対象です。
オシメルチニブを、脳転移単独増悪(T790M変異陰性/不明)を認めた非小細胞肺がん患者さんとT790M変異陰性非小細胞肺がん患者さんに対して評価する臨床試験です。
登録予定数は、70人。
フェーズは、第2相臨床試験。
試験デザインは、非盲検単アーム試験。
試験群:オシメルチニブ
転移性脳腫瘍奏効割合、奏効割合、無増悪生存期間、奏効期間、全生存期間、安全性などで評価します。
疾患解説:非小細胞肺がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。
治験薬:オシメルチニブ
オシメルチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)をターゲットとした分子標的薬です。上皮成長因子(EGF)は、細胞の増殖や成長にかかわる物質で、細胞膜上に発現しているEGFRと結合することで細胞の分化や増殖などが起こります。EGFRの遺伝子に変異があると正常な分化や増殖がおこなわれず、がん化するといわれています。
オシメルチニブは、このEGFRを不可逆的に阻害します。同様にEGFRを阻害する分子標的薬には、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブがあます。このうちゲフィチニブ、エルロチニブは第1世代、アファチニブは第2世代のEGFR阻害薬です。第1世代、第2世代のEFGR阻害薬では、T790Mという耐性が起こり、薬の効果が減衰します。
オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異とともにこのT790耐性変異も阻害するように設計されており、中枢神経系への転移に対する活性もあります。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 第1・2世代EGFR-TKI治療後、脳転移単独増悪(T790M変異陰性/不明)もしくは第1・2世代EGFR-TKI治療およびプラチナ治療後Systemic PD(T790M変異陰性)を示したEGFR変異陽性非小細胞肺癌患者に対するオシメルチニブを用いた第II相試験(医師主導治験WJOG12819L) |
試験の概要 | T790M変異陰性または不明のEGFR変異陽性非小細胞肺癌患者に対するオシメルチニブの有効性を、2つのコホート(コホート1:脳転移単独増悪(T790M変異陰性/不明)を認めた非小細胞肺癌患者、コホート2:T790M変異陰性非小細胞肺癌患者)で検討する |
疾患名 | 非小細胞肺癌 |
試験薬剤名 | オシメルチニブ |
用法・用量 | 経口投与、80mg/日 |
対照薬剤名 | |
用法・用量 | |
試験のフェーズ | フェーズ2/phase2 |
試験のデザイン | 非盲検単アーム試験 |
目標症例数 | 70 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | コホート1:転移性脳腫瘍奏効割合、コホート2:奏効割合 RANO-BM基準(コホート1)、RECISTver1.1(コホート2)にて評価 |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | 無増悪生存期間、奏効期間、全生存期間、安全性 無増悪生存期間、奏効割合、奏効期間はRECISTver1.1等にて評価。安全性はCTCAE等にて評価 |
予定試験期間 | 2020年8月1 日~2024年7月31日 |