KRAS変異のある局所進行切除不能または転移性非小細胞肺がんに対するソトラシブ(AMG510)の治験
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治験名
KRAS p.G12C変異を有する既治療の局所進行切除不能または転移性非小細胞肺がん患者さんを対象としてAMG510をドセタキセルと比較する第3相、多施設共同、ランダム化、非盲検、実薬対照試験
治験概要:
局所進行切除不能または転移性非小細胞肺がんに対する治験。KRAS p.G12C変異がある既治療の患者さんが対象です。
ソトラシブ(AMG510)とドセタキセルを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、650人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、第3相、多施設共同、ランダム化、非盲検、実薬対照試験。
試験群:ソトラシブ(AMG510)
対照群:ドセタキセル
無増悪生存期間、全生存期間、客観的奏効率、患者報告アウトカム、生活の質、奏効期間、病勢コントロール率などで評価します。
疾患解説:非小細胞肺がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。
治験薬:ソトラシブ(AMG510)
ソトラシブ(AMG510)は、KRAS(G12C)を標的とした分子標的薬です。
KRASは、GDPと結合している状態では活性化していませんが、GDPがGTPと入れ替わり、KRASとGTPが結合すると、RAFをはじめとするがん細胞の増殖にかかわるシグナルが活性化します。G12Cの変異があるKRASは、恒常的に活性化しているため、がん細胞が異常な増殖を起こします。
ソトラシブは、GDPからGTPの入れ替えを抑制し、KRASの下流にあるシグナル伝達も阻害することで、がんの増殖を抑制します。
対照薬:ドセタキセル
ドセタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。ドセタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。
タキサン系は水に溶けにくいため、無水エタノール(アルコール)を含んだ液体に溶かして使用されますが、ドセタキセルはアルコールに溶かさずに使用できる薬もあります。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | KRAS p.G12C変異を有する既治療の局所進行切除不能又は転移性NSCLC患者を対象としてAMG 510をドセタキセルと比較する第III相、多施設共同、ランダム化、非盲検、実薬対照試験 |
試験の概要 | KRAS p.G12C変異を有するNSCLC患者を対象にAMG 510をドセタキセルと比較する |
疾患名 | KRAS p.G12C変異を有する進行/転移性NSCLC |
試験薬剤名 | AMG 510 |
用法・用量 | AMG 510、960mgを1日1回経口投与する |
対照薬剤名 | ドセタキセル |
用法・用量 | ドセタキセル75mg/m2を3週間に1回、1時間かけて静脈内投与する |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 第III相、多施設共同、ランダム化、非盲検、実薬対照試験 |
目標症例数 | 650 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | 無増悪生存期間(PFS)[ベースラインから約6年] ランダム化から病勢進行又は死亡(死因を問わない)のいずれか早い方までの期間と定義する |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy 薬物動態/pharmacokinetics |
副次的な評価方法 | 全生存期間(OS)[ベースラインから約6年] ランダム化から死亡(死因を問わない)までの期間と定義する 客観的奏効率(ORR)[ベースラインから約6年] 完全奏効[CR]+部分奏効[PR]と定義する 患者報告アウトカム(PRO)[ベースラインから12週] PRO-Common Terminology Criteria for Adverse Eventsの一部の質問及びFunctional Assessment of Cancer Therapy Tool General form(FACT-G)のGP5で評価した患者報告症状 生活の質[ベースラインから12週] EORTC(European Organization for Research and Treatment of Cancer)QLQ-LC13及びQLQ-C30で評価する 奏効期間(DOR)[ベースラインから約6年] PR又はCRが最初に規準を満たした時点から疾患進行又は死亡(死因を問わない)のいずれか早い方までの期間と定義する 奏効までの期間(TTR)[ベースラインから約6年] ランダム化からPR又はCRの規準を最初に満たすまでの期間と定義する 病勢コントロール率[ベースラインから約6年] 確定した客観的奏効(CR又はPR)に、6週間以上の期間で測定された安定(SD)を加えた割合と定義する 試験治療下でバイタルサインに臨床的に重要な変動が認められた被験者数[約1年] 試験治療下で有害事象を発現した被験者数[推定、約6年まで] 試験治療下で臨床検査値に臨床的に重要な変動認められた被験者数[推定、約1年まで] 試験治療下で治験薬と関連のある有害事象を発現した被験者数[推定、6年まで] AMG 510の薬物動態(PK)パラメータ:最高血漿中濃度(Cmax)[推定、4カ月まで] AMG 510の薬物動態(PK)パラメータ:血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)[推定、4カ月まで] |
予定試験期間 | 2020年6月4日~2027年12月6日 |