ステージ3の非小細胞肺がんに対するペムブロリズマブとオラパリブ併用療法の治験
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治験名
切除不能な局所進行3期非小細胞肺がん患者を対象にペムブロリズマブ(MK-3475)併用同時化学放射線療法後のペムブロリズマブとオラパリブの併用療法またはペムブロリズマブ単独療法を同時化学放射線療法後のデュルバルマブ単独療法と比較する第3相試験
治験概要:
切除不能な局所進行非小細胞肺がんに対する治験。ステージ3の患者さんが対象です。
ペムブロリズマブとオラパリブ併用療法またはペムブロリズマブ単独療法とデュルバルマブ単独療法を比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、870人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、多施設共同、無作為化、並行群間、非盲検。
試験群1:ペムブロリズマブ+化学放射線療法後にペムブロリズマブ+プラセボ
試験群2:ペムブロリズマブ+化学放射線療法後にペムブロリズマブ+オラパリブ
対照群:化学放射線療法後にデュルバルマブ
無増悪生存期間、全生存期間、奏効率、有害事象、有害事象による投薬中止などで評価します。
疾患解説:非小細胞肺がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。
治験薬:ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:オラパリブ
オラパリブは、損傷したDNAを修復するPARPと呼ばれる酵素を阻害する分子標的薬です。
正常な細胞でDNAに損傷が起こると、PARPが修復します。PARP阻害薬で修復を妨げても、PARP以外のBRCA1とBRCA2という遺伝子が、たんぱく質を生成し損傷したDNAを修復します。しかし、BRCA1/2遺伝子に変異があると、損傷したDNAの修復が行われないため細胞死を誘導します。
オラパリブは、BRCA1/2遺伝子変異によってDNAが修復できずがん化した細胞に特異的に働き、PARPを阻害することでがん細胞のDNA損傷の修復をさせず細胞死を誘導します。
対照薬:デュルバルマブ
デュルバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 切除不能な局所進行III期非小細胞肺癌患者を対象にペムブロリズマブ(MK-3475)併用同時化学放射線療法後のペムブロリズマブとオラパリブの併用療法又はペムブロリズマブ単独療法を同時化学放射線療法後のデュルバルマブ単独療法と比較する第III相試験 |
試験の概要 | 本試験の目的は、切除不能な局所進行III期NSCLC患者を対象に、ペムブロリズマブ併用同時化学放射線療法後にペムブロリズマブとオラパリブプラセボを併用投与(A群)又はペムブロリズマブとオラパリブを併用投与(B群)した際の有効性及び安全性を、同時化学放射線療法後にデュルバルマブを投与(C群)した際の有効性及び安全性と比較し、評価することである。A群とB群は二重盲検下で、C群は非盲検下で実施する。主要仮説は以下の通りである 1.ペムブロリズマブ併用同時化学放射線療法後のペムブロリズマブとオラパリブの併用投与は、同時化学放射線療法後のデュルバルマブ投与と比較して、盲検化された中央画像判定機関がRECIST1.1に基づき評価した無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)を延長する 2.ペムブロリズマブ併用同時化学放射線療法後のペムブロリズマブとオラパリブプラセボ投与は、同時化学放射線療法後のデュルバルマブ投与と比較して、盲検化された中央画像判定機関がRECIST1.1に基づき評価したPFS及びOSを延長する |
疾患名 | 切除不能な局所進行III期NSCLC |
試験薬剤名 | ペムブロリズマブ+化学放射線療法→ペムブロリズマブ+オラパリブ |
用法・用量 | A群:ペムブロリズマブ200mgを3週間ごと(Q3W)に静脈内投与、プラチナ製剤併用化学療法を3サイクル、標準的な同時胸部放射線療法(60Gyを2Gyずつ分割照射:2サイクル目及び3サイクル目)を併用後、ペムブロリズマブとオラパリブプラセボを12ヵ月間又は規定の中止基準に該当するまで投与 |
試験薬剤名 | ペムブロリズマブ+化学放射線療法→ペムブロリズマブ+オラパリブ |
用法・用量 | B群:ペムブロリズマブ200mgQ3W静脈内投与、プラチナ製剤併用化学療法を3サイクル、標準的な同時胸部放射線療法(60Gyを2Gyずつ分割照射:2サイクル目及び3サイクル目)を併用後、ペムブロリズマブとオラパリブ300mg1日2回(BID)を12ヵ月間又は規定の中止基準に該当するまで投与 |
対照薬剤名 | 化学放射線療法→デュルバルマブ |
用法・用量 | C群:プラチナ製剤併用化学療法を3サイクル、標準的な同時胸部放射線療法(60Gyを2Gyずつ分割照射:2サイクル目及び3サイクル目)を併用後、デュルバルマブ10mg/kgを2週間ごと(Q2W)に12ヵ月間又は規定の中止基準に該当するまで投与 |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 多施設共同、無作為化、並行群間、非盲検 |
目標症例数 | 870 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | PFS:無作為化から最初に記録された疾患進行又は原因を問わない死亡のいずれか早い時点までの期間 OS:無作為化から原因を問わない死亡までの期間 |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | 有害事象 有害事象による治験薬の投与中止 盲検化された中央画像判定機関がRECIST1.1に基づき評価した奏効率(ORR):確定した完全奏効(CR)又は部分奏効(PR) DOR:無作為化後にCR又はPRが確定した患者で最初にCR又はPRが記録された時点から、疾患進行又は原因を問わない死亡のいずれか早い時点までの期間 European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)Quality of Life Questionnaire-Core 30 items(QLQ-C30)及びQuality of Life Questionnaire and Lung Cancer Module 13(QLQ-LC13)のうち、以下の尺度/項目のベースライン(1サイクル目の時点)からの変化及びTTD。TTDは以下の尺度/項目がベースラインから最初に10ポイント以上悪化するまでの期間と定義する この10ポイント以上の悪化は次の来院でも確認されなければならない 全般的健康状態/QoL(QLQ-C30の項目29及び項目30) 咳嗽(QLQ-LC13の項目1) 胸痛(QLQ-LC13の項目10) 呼吸困難(QLQ-C30の項目8) 身体機能(QLQ-C30の項目1~5) |
予定試験期間 | 2020年7月10日~2026年6月6日 |