進展型小細胞肺がんに対するペムブロリズマブと標準化学療法併用の治験

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治験名

進展型小細胞肺癌の未治療患者を対象に、MK-3475をエトポシド及びシスプラチン又はカルボプラチンと併用投与する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験(KEYNOTE-604)

治験概要

この治験では、全身療法の治療歴のない進展型小細胞肺がん患者さんを対象とし、MK-3475(ペムブロリズマブ)と標準化学療法[エトポシド/プラチナ製剤化学療法(EP)]の併用投与、プラセボとEPの併用投与の有効性と安全性を比較します。
主要な仮説は、MK-3475とEPの併用投与は、プラセボとEPの併用投与と比較して、BICR(盲検下独立中央判定)がRECIST 1.1に基づき評価するPFSまたはOSを延長するというものです。

疾患解説小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。

肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。小細胞肺がんは、とくに喫煙との関連が高いといわれています。また、悪性度が高い一方で症状は現れにくいことから、進行するまで発見されない場合も多いという特徴があります。

小細胞肺がんは、進行度によって「限局型」と「進展型」に分けられます。限局型は、最初にがんができた所(原発巣)と同じ側の肺に病巣が留まっている状態の小細胞肺がんを指します。同じ側へのリンパ節転移と、病巣と反対側の縦隔リンパ節転移も含むとされています。進展型は、限局型の範囲を超えてがんが進んでいる状態の小細胞肺がんです。他の臓器に転移があるか、原発巣以外の肺に転移しているか、両側に胸水がある状態や原発巣と反対側の肺門のリンパ節への転移があるなどの状態を指します。

治験薬ペムブロリズマブ

MK-3475(ペムブロリズマブ)は、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。

免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。

がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
    1)病変のブラッシング、洗浄または針穿刺による組織学的または細胞学的に小細胞肺がんと新たに診断された患者さん。組織検体(コア生検若しくは切除生検)のない患者さんはこの治験に組織を提出するため新たな生検が必要になります。
    2)対がん米国合同委員会分類第7版(American Joint Committee on Cancer, 7th Edition)でIV期(すべてのT、すべてのN、M1a/b)と定義された進展型の患者さん。
    3) ECIST 1.1で定義された測定可能病変の基準を満たし、標的病変に選択するのにふさわしいと治験担当医師/放射線科医師が評価した病変を1つ以上有する患者さん。
    4)放射線照射を受けていない腫瘍部分の保存検体、または放射線照射を受けていない腫瘍部分より新たに採取したコア生検もしくは切除生検検体を提出できる患者さん。
    5)ECOG Performance Statasが0または1の患者さん。
    6)3か月以上の生存が見込まれる患者さん。
    7)適切な臓器機能が保持された患者さん。
    8)妊娠する可能性がある女性患者さんまたは女性パートナーがいる男性患者さんの場合、治験薬初回投与からMK-3475または生理食塩水プラセボの最終投与後120日もしくは化学療法の最終投与後180日のいずれか遅い方まで、適切な避妊法を使用しなければなりません。
    年齢:18歳以上
    性別:男女
対象とならない人
    1)小細胞肺がんに対する全身治療歴のある患者さん。
    2)現在他の治験に参加し、治験薬の投与を受けている患者さん、または他の治験に参加し、この治験の治験薬初回投与前4週間以内に他の治験薬もしくは医療機器を使用した患者さん。
    3)治験期間中に小細胞肺がんに対する他の抗腫瘍療法(放射線療法など)が必要になると予測される患者さん。
    注:PRまたはCRが確認された患者さんは、MK-3475併用または非併用下での化学療法を4コース完了した時点でPCI療法は許容されます。
    4)活動性の中枢神経系(CNS)への転移またはがん性髄膜炎を有する患者さん。脳転移がある患者さんは、以下を満たす場合組み入れ可能です。
  • 治験薬初回投与前14日までに治療[全脳照射療法(WBRT)、定位放射線治療または同等のもの]を完了した
  • 最初の画像検査から少なくとも3週間後に実施した再画像検査(最初の画像検査と同じ撮画手段を用いる)で新たな脳転移または転移巣の増大が認められないことが確認されている
  • ステロイドを少なくとも治験薬初回投与前7日間に使用しておらず、神経学的に安定している
  • 5)治験薬初回投与前3週間以内に大手術を受けた患者さん、または治験薬投与開始前に受けた治療介入による毒性おとび/または合併症から十分に回復していない患者さん。
    6)間質性肺疾患/肺臓炎を合併、もしくはステロイド投与が必要な(非感染性の)間質性肺疾患/肺臓炎の既往のある患者さん。
    7)間質性肺疾患の既往がある患者さん。
    8)進行性または治療を要する別の悪性腫瘍を有する患者さん。ただし、根治的治療を受けた早期のがん(上皮内がんまたは第I期)、皮膚の基底細胞がん、皮膚の扁平上皮がん、子宮頚部上皮内がん、および根治的治療を受けた非浸潤性乳がんの患者さんを除く。
    9)過去2年以内に全身性の治療を要した活動性の自己免疫疾患を有する患者さん。ただし、補充療法は、この全身性の治療とみなしません。
    10)活動性の傍腫瘍性神経症候群の既往または合併のある患者さん。
    11)臨床的に活動性の憩室炎、腹腔内膿瘍、消化管閉塞、および/または腹部のがん腫症(abdominal carcinomatocis)がある患者さん。
    12)他のモノクローナル抗体に対して重度過敏症反応の既往がある患者さん。
    13)治験薬初回投与前7日以内に慢性的に全身性ステロイド(プレドニゾン換算10mg/dayを超える用量)を使用している患者さん。

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

全身状態(Performance Status)は、患者さんが自分で身のまわりのことをどこまでこなせるかを表す尺度です。ECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンス ステータス(ECOG PS)

ECOG Performance Statusは、米国の腫瘍学の団体(ECOG)が決めた全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。

PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、日本国内では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP) 」という厳しいルールに基づき、行われています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで進められます。治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを正しく理解しましょう。

試験詳細

試験の名称進展型小細胞肺癌の未治療患者を対象に、MK-3475をエトポシド及びシスプラチン又はカルボプラチンと併用投与する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験(KEYNOTE-604)
試験の概要小細胞肺癌に対する全身療法の治療歴のない進展型小細胞肺癌患者を対象とし、MK-3475と標準化学療法[エトポシド/プラチナ製剤化学療法(EP)]の併用投与、プラセボとEPの併用投与、の有効性と安全性を比較する。
主要仮説:MK-3475とEPの併用投与は、プラセボとEPの併用投与と比較し、BICRがRECIST 1.1に基づき評価するPFSまたはOSを延長する。
疾患名進展型小細胞肺癌
試験薬剤名MK-3475
用法・用量Arm 1:MK-3475とエトポシド及びプラチナ製剤化学療法(EP):MK-3475 200mgを3週間間隔の各コース1日目に静脈内投与エトポシド100mg/m2を3週間間隔の各コース1、2及び3日目に静脈内投与。治験担当医師が選択したプラチナ製剤化学療法はカルボプラチンの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)5を3週間間隔の各コース1日目に静脈内投与又はシスプラチン75mg/m2を3週間間隔の各コース1日目に静脈内投与。
対照薬剤名プラセボ
対照薬用法・用量Arm 2:プラセボとEP:プラセボを3週間間隔の各コース1日目に静脈内投与、エトポシド100mg/m2を3週間間隔の各コース1、2及び3日目に静脈内投与。治験担当医師が選択したプラチナ製剤化学療法はカルボプラチンのAUC5を3週間間隔の各コース1日目に静脈内投与.
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン無作為化、並行群間、二重盲検試験
目標症例数430
適格基準
    1)病変のブラッシング、洗浄又は針穿刺による組織学的又は細胞学的に小細胞肺癌と新たに診断された患者。組織検体(コア生検若しくは切除生検)のない患者は本治験に組織を提出するため新たな生検が必要になる。
    2)対がん米国合同委員会分類第7版(American Joint Committee on Cancer, 7th Edition)でIV期(すべてのT、すべてのN、M1a/b)と定義された進展型の患者。
    3) ECIST 1.1で定義された測定可能病変の基準を満たし、標的病変に選択するのにふさわしいと治験担当医師/放射線科医師が評価した病変を1つ以上有する患者。
    4)放射線照射を受けていない腫瘍部分の保存検体、又は放射線照射を受けていない腫瘍部分より新たに採取したコア生検若しくは切除生検検体を提出できる患者。
    5)ECOG Performance Statasが0又は1の患者。
    6)3ヵ月以上の生存が見込まれる患者。
    7)適切な臓器機能が保持された患者。
    8)妊娠する可能性がある女性患者または女性パートナーがいる男性患者の場合、治験薬初回投与からMK-3475又は生理食塩水プラセボの最終投与後120日若しくは化学療法の最終投与後180日のいずれか遅い方まで、適切な避妊法を使用しなければならない。
    年齢:18歳以上
    性別:両方
除外基準
    1)小細胞肺癌に対する全身治療歴のある患者。
    2)現在他の治験に参加し、治験薬の投与を受けている患者、又は他の治験に参加し、本治験の治験薬初回投与前4週間以内に他の治験薬若しくは医療機器を使用した患者。
    3)治験期間中に小細胞肺癌に対する他の抗腫瘍療法(放射線療法等)が必要になると予測される患者。
    注:PR又はCRが確認された患者は、MK-3475併用又は非併用下での化学療法を4コース完了した時点でPCI療法は許容される。
    4)活動性の中枢神経系(CNS)への転移又は癌性髄膜炎を有する患者。脳転移がある患者は、以下を満たす場合組み入れ可能である。
  • 治験薬初回投与前14日までに治療[全脳照射療法(WBRT)、定位放射線治療又は同等のもの]を完了した
  • 最初の画像検査から少なくとも3週間後に実施した再画像検査(最初の画像検査と同じ撮画手段を用いる)で新たな脳転移又は転移巣の増大が認められないことが確認されている
  • ステロイドを少なくとも治験薬初回投与前7日間に使用しておらず、神経学的に安定している
  • 5)治験薬初回投与前3週間以内に大手術を受けた患者、又は治験薬投与開始前に受けた治療介入による毒性及び/又は合併症から十分に回復していない患者。
    6)間質性肺疾患/肺臓炎を合併、もしくはステロイド投与が必要な(非感染性の)間質性肺疾患/肺臓炎の既往を有する患者。
    7)間質性肺疾患の既往を有する患者。
    8)進行性又は治療を要する別の悪性腫瘍を有する患者。ただし、根治的治療を受けた早期のがん(上皮内癌又は第I期)、皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮癌、子宮頚部上皮内癌、及び根治的治療を受けた非浸潤性乳癌の患者を除く。
    9)過去2年以内に全身性の治療を要した活動性の自己免疫疾患を有する患者。ただし、補充療法は、この全身性の治療とみなさない。
    10)活動性の傍腫瘍性神経症候群の既往又は合併を有する患者。
    11)臨床的に活動性の憩室炎、腹腔内膿瘍、消化管閉塞、及び/又は腹部の癌腫症(abdominal carcinomatocis)を有する患者。
    12)他のモノクローナル抗体に対して重度過敏症反応の既往を有する患者。
    13)治験薬初回投与前7日以内に慢性的に全身性ステロイド(プレドニゾン換算10mg/dayを超える用量)を使用している患者。
    14)免疫不全と診断された患者、又は治験薬初回投与前7日以内に免疫抑制剤による治療を受けた患者。
    15)治験薬初回投与前30日以内に生ワクチンを接種した患者。
主要な評価項目1)独立中央画像判定機関(BICR)がRECIST 1.1に基づき評価する無増悪生存期間(PFS)
2)全生存期間(OS)
主要な評価方法1)独立中央画像判定機関(BICR)がRECIST 1.1に基づき無増悪生存期間(PFS)を評価する(最大約2年)
2)全生存期間(OS)を評価する(最大約2年)
副次的な評価項目3)BICRがRECIST 1.1に基づき評価した奏効率(ORR)
4)BICRがRECIST 1.1に基づき評価した奏効期間(DOR)
5)CTCAE 4.0を用いた各治療群の安全性の評価
6)患者アンケート(PRO)Quality of Life(QoL)の評価
副次的な評価方法3)BICRがRECIST 1.1に基づき奏効率(ORR)を評価する(最大約2年)
4)BICRがRECIST 1.1に基づき奏効期間(DOR)を評価する(最大約2年)
5)有害事象の発現率(最大約27か月)、有害事象による中止率(最大約2年)、NCIのCTCAE 4.0を用いたGrade3~5の有害事象の発現率(最大約27か月)を評価する。
6)下記の患者アンケート(PRO)を評価する。
・European Organization for Research and Treatment of Cancer (EORTC) Quality of Life Questionnaire Core 30(QLQ-C30)の全体的な健康状態/QoL尺度を用いた12週目及び24週目の全体的な健康状態/QoLのベースラインからの平均変化
・EORTC Quality of Life Questionnaire and Lung Cancer Module 13(QLQ-LC13)を用いた咳嗽、胸痛及び呼吸困難の複合評価項目の真の悪化までの期間(TTD)
予定試験期間2017年5月~2019年1月

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより