ステージ2Bまたは3Aの非小細胞肺がんに対するペムブロリズマブの治験
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治験名
KEYNOTE-671
2B期または3A期の切除可能非小細胞肺がん患者を対象とした術前補助療法/術後補助療法としてペムブロリズマブ併用または非併用のプラチナ製剤併用化学療法を比較する無作為化二重盲検第3相試験治験概要:
切除可能な非小細胞肺がんに対する治験。ステージ2Bまたは3Aの患者さんが対象です。 術前補助化学療法として、ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用を行い、切除手術後の術後補助化学療法として、ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用とプラセボ+プラチナ製剤併用を比較して、無イベント生存期間と全生存期間などで評価する臨床試験です。 登録予定数は、786人。 フェーズは、第3相臨床試験。 試験デザインは、無作為化、並行群間、二重盲検、介入試験。 比較する対象は 試験群:ペムブロリズマブ+プラチナ製剤併用 対照群:プラセボ+プラチナ製剤併用 で主要評価項目は無イベント生存期間、全生存期間、副次的評価項目は病理学的奏効率、病理学的完全奏効率、全般的健康状態およびQOLなどで評価します。疾患解説:非小細胞肺がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。 肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。 特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。治験薬:ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。
治験薬:シスプラチン
シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。 薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。治験薬:ゲムシタビン
ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。 細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。 ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。 ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。治験薬:ペメトレキセド
ペメトレキセドは、細胞分裂に必要な葉酸に構造が類似している葉酸代謝拮抗薬です。 葉酸代謝拮抗薬の中でも、3つの酵素を阻害し主要な葉酸代謝酵素経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑え強い抗腫瘍効果を発揮します。主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータスPS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | IIB期又はIIIA期の切除可能非小細胞肺癌患者を対象とした術前補助療法/術後補助療法としてMK-3475併用又は非併用のプラチナ製剤併用化学療法を比較する無作為化二重盲検第III相試験(KEYNOTE-671) |
試験の概要 | 本治験は、IIB期又はIIIA期の切除可能な非小細胞肺癌患者(NSCLC)を対象に、MK-3475併用下プラチナ製剤併用化学療法による術前補助療法実施後の外科切除に続く、MK-3475術後補助療法とプラセボ併用下プラチナ製剤併用化学療法による術前補助療法実施後の外科切除に続くプラセボ術後補助療法を比較し安全性と有効性を評価する。本試験では主要評価項目として、1) 盲検化された中央検査機関の病理医が生検組織を評価し、盲検化された中央画像判定機関がRECIST 1.1に基づき画像を評価して判定した無イベント生存期間(EFS)、2)全生存期間(OS)である |
疾患名 | IB期又はIIIA期の切除可能非小細胞肺癌患者 |
試験薬剤名 | MK-3475、シスプラチン、ゲムシタビン、ペメトレキセド |
用法・用量 | ペムブロリズマブ:200mgを各コース1日目に3週間間隔で静脈内投与 シスプラチン:75mg/m2を各コース1日目に3週間間隔で静脈内投与 ゲムシタビン:術前補助療法期の各コース1日目及び8日目に、1,000mg/m2を3週間間隔で静脈内投与 ペメトレキセド:術前補助療法期の各コース1日目に、500mg/m2を3週間間隔で静脈内投与 |
対照薬剤名 | プラセボ、シスプラチン、ゲムシタビン、ペメトレキセド |
用法・用量 | プラセボ:各コース1日目に、3週間間隔で静脈内投与 シスプラチン:75mg/m2を各コース1日目に3週間間隔で静脈内投与 ゲムシタビン:術前補助療法期の各コース1日目及び8日目に、1,000mg/m2を3週間間隔で静脈内投与 ペメトレキセド:術前補助療法期の各コース1日目に、500mg/m2を3週間間隔で静脈内投与 |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化、並行群間、二重盲検、介入試験 |
目標症例数 | 786 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | EFS(無イベント生存期間) |
主要な評価方法 | 盲検化された中央検査機関の病理医が生検組織を評価し、盲検化された中央画像判定機関がRECIST 1.1に基づき画像を評価する |
主要な評価項目 | OS(全生存期間) |
主要な評価方法 | 無作為割付けから死亡までの期間 |
副次的な評価項目 | mPR率(病理学的奏効率) |
副次的な評価方法 | 盲検化された中央検査機関の病理医が評価する |
副次的な評価項目 | pCR率(病理学的完全奏効)率 |
副次的な評価方法 | 盲検化された中央検査機関の病理医が評価する |
副次的な評価項目 | 全般的健康状態及びQoL |
副次的な評価方法 | EORTC QLQ-C30の全般的健康状態/QoLスコア |
副次的な評価項目 | 安全性及び忍容性 |
副次的な評価方法 | 有害事象、有害事象による治験薬投与の中止、周術期合併症 |
予定試験期間 | 2018年4月1日~2026年5月1日 |