PD-L1が発現している非小細胞肺がん対するカナキヌマブの治験

治験名

CANOPY-1

局所進行または転移性の非扁平上皮/扁平上皮型非小細胞肺癌患者を対象に、一次治療としてのペムブロリズマブとプラチナダブレット化学療法にカナキヌマブを併用投与し有効性および安全性をプラセボ併用投与と比較し評価するランダム化、二重盲検、プラセボ対照、第3相試験

治験概要:

局所進行または転移性の非扁平上皮/扁平上皮型非小細胞肺がんに対する治験。PD-L1の発現が確認されている患者さんが対象です。
カナキヌマブ+ペムブロリズマブ+プラチナダブレット併用とプラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナダブレット併用を比較して、カナキヌマブの上乗せ効果を評価する臨床試験です。
登録予定数は、627人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験。
比較する対象は
試験群:カナキヌマブ+ペムブロリズマブ+プラチナダブレット併用
対照群:プラセボ+ペムブロリズマブ+プラチナダブレット併用
で主要評価項目は治験治療開始から42日間の用量制限毒性の発現率、無増悪生存期間、全生存期間、副次的評価項目は奏効率、病勢コントロール率などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:カナキヌマブ

カナキヌマブは、IL-1βと特異的に結合するモノクローナル抗体です。
IL-1βと受容体の結合を阻害することで、IL-1βを介する腫瘍微小環境をすることで、がんの発症や進行を抑制すると考えられています。
心筋梗塞の既往があり、炎症性アテローム性動脈硬化症の患者を対象としたカナキヌマブの働きを評価したCANTOS試験の追加解析では、カナキヌマブが、肺がんの発症率と死亡率を低下させることが示されています。

治験薬:ペムブロリズマブ

ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 局所進行性または転移性非小細胞肺がん患者
  • 測定可能病変がある患者
  • PD-L1の発現状態が判明している患者
  • 全身状態(performance status:PS)が0または1の患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 過去に免疫療法またはIL-1β阻害薬の投与を受けたことがある患者
  • EGFR感受性変異(上皮増殖因子受容体活性化変異)および/または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子転座がみられる患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称局所進行又は転移性の非扁平上皮/扁平上皮型非小細胞肺癌患者を対象に、一次治療としてのペムブロリズマブとプラチナダブレット化学療法にカナキヌマブを併用投与し有効性及び安全性をプラセボ併用投与と比較し評価するランダム化、二重盲検、プラセボ対照、第III相試験(CANOPY-1)
試験の概要非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象として、ペムブロリズマブ + プラチナダブレット化学療法にカナキヌマブを追加したときの安全性、忍容性(安全性導入パート)、有効性(二重盲検、ランダム化、プラセボ対照パート)を外観同一のプラセボを追加したときと比較する
疾患名非小細胞肺癌
試験薬剤名カナキヌマブ
用法・用量カナキヌマブ皮下注射(Q3W)
試験薬剤名ペムブロリズマブ
用法・用量ペムブロリズマブ200mg静脈内投与(Q3W)
試験薬剤名プラチナダブレット
用法・用量プラチナダブレット化学療法(Q3W)
対照薬剤名カナキヌマブと外観同一のプラセボ
用法・用量カナキヌマブと外観同一のプラセボ皮下注射(Q3W)
対照薬剤名ペムブロリズマブ
用法・用量ペムブロリズマブ200mg静脈内投与(Q3W)
対照薬剤名プラチナダブレット
用法・用量プラチナダブレット化学療法(Q3W)
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験
目標症例数627
適格基準
  • 組織学的検査で確認された局所進行性又は転移性NSCLCを有する患者
  • RECIST第1.1版による測定可能病変を有する患者
  • PD-L1の発現状態が判明している患者
  • ECOG performance status(PS)が0又は1の患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 過去に免疫療法又はIL-1β阻害薬の投与を受けたことがある患者
  • EGFR感受性変異(上皮増殖因子受容体活性化変異)及び/又は未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子転座がみられる患者
主要な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
主要な評価方法安全性導入パート
治験治療開始から42日間の用量制限毒性の発現率
二重盲検、ランダム化、プラセボ対照パート:
RECIST第1.1版に従った実施医療機関の治験責任/分担医師の評価に基づくPFS及びOS
副次的な評価項目有効性/efficacy
探索性/exploratory
薬物動態/pharmacokinetics
副次的な評価方法安全性導入パート:
RECIST第1.1版に従った実施医療機関の治験責任/分担医師の評価に基づくORR、DCR、DOR
ベースライン時の抗薬物抗体(ADA)の有無、並びにカナキヌマブ及びペムブロリズマブ投与中のADA陽性率
カナキヌマブ、ペムブロリズマブ、及び化学療法薬の濃度及びPKパラメータ
二重盲検、ランダム化、プラセボ対照パート:
RECIST第1.1版に従った実施医療機関の治験責任/分担医師の評価に基づくORR、DCR、TTR及びDOR
ベースライン時の抗薬物抗体(ADA)の有無、並びにカナキヌマブ及びペムブロリズマブ投与中のADA陽性率
カナキヌマブ、ペムブロリズマブ、及び化学療法薬の濃度及びPKパラメータ
EORTC QLQ-C30、EORTC QLQ-LC13及びEQ-5D-5L質問票
予定試験期間2018/12/21~2022/10/21

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより