ステージ4の非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの治験

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治験名

化学療法未治療の4期非扁平上皮非小細胞肺がん患者を対象に アテゾリズマブとカルボプラチン+パクリタキセルもしくはカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブの併用をカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブと比較する第3第相非盲検多施設共同ランダム化試験

治験概要:

化学療法未治療の非扁平上皮非小細胞肺がんに対する治験。ステージ4の患者さんが対象です。
アテゾリズマブとカルボプラチン+パクリタキセル併用もしくは、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ併用を比較して有効性と安全性を評価する臨床試験です。 登録予定数は、1202人。
フェーズは、3相臨床試験。
試験デザインは、ランダム化、多施設共同、非盲検試験。
比較する対象は
試験群:アテゾリズマブ
対照群:カルボプラチン+パクリタキセル併用
対照群:カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ併用
で無増悪生存期間、全生存期間、奏効率などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:アテゾリズマブ

アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:カルボプラチン

カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。

対照薬:パクリタキセル

パクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。パクリタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。

対照薬:ベバシズマブ

ベバシズマブは、血管内細胞増殖因子(VEGF)のVEGF-Aとその受容体(VEGFR)のVEGFR-1、VEGFR-2の結合を阻害する血管新生阻害薬です。
がん細胞は、VEGFによって血管内皮細胞の増殖を刺激することで、新しい血管をがん細胞までのばし、栄養や酸素を取り入れます。また、この血管は、がん細胞の血行転移の経路にもなると考えられています。
ベバシズマブは、血管新生を阻害することでがん細胞が栄養や酸素を取り込めないように兵糧攻めにして、増殖を抑制します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0、1または2
  • 化学療法未治療の4期の非扁平上皮非小細胞肺がん
  • 保管腫瘍組織またはスクリーニング時の生検で組織を採取
  • 測定可能病変がある
  • 主要臓器の機能が保たれている
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 脳転移があり治療を受けていない患者
  • 最近5年間に他の悪性腫瘍の既往歴がある
  • 妊娠中または授乳中の女性
  • 自己免疫疾患の既往歴
  • 特発性肺線維症、器質化肺炎、薬物誘発性肺臓炎、特発性肺臓炎の既往歴、またはスクリーニング時の胸部CTによる活動性肺臓炎の所見がある患者
  • HIV検査陽性
  • 活動性B型肝炎またはC型肝炎
  • CD137アゴニスト、他の免疫チェックポイント阻害剤、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の投与歴がある患者
  • 4週間以内の高度の感染症
  • 重大な心血管系疾患

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称 化学療法未治療のIV期非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象に atezolizumab(MPDL3280A、抗PD-L1抗体)とカルボプラチン+パクリタキセル若しくはカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブの併用をカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブと比較する第III第相非盲検多施設共同ランダム化試験
試験の概要 この非盲検ランダム化試験は、化学療法未治療のIV非扁平上皮NSCLC患者を対象として、 atezolizumabをカルボプラチン+パクリタキセル若しくはカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブと併用したときの安全性と有効性をカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブと比較する
疾患名 非小細胞肺癌
試験薬剤名 アテゾリズマブ
用法・用量 1200mgを3週間隔で点滴静注
対照薬剤名 カルボプラチン
用法・用量 AUC6を21日間隔で4又は6サイクル点滴静注
対照薬剤名 パクリタキセル
用法・用量 200mg/m^2を21日間隔で4又は6サイクル点滴静注
対照薬剤名 ベバシズマブ
用法・用量 15mg/kgを21日間隔で点滴静注
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン ランダム化、多施設共同、非盲検試験
目標症例数 1202
適格基準
  • ECOG PS 0又は1
  • 化学療法未治療のIV期の非扁平上皮NSCLC
  • 保管腫瘍組織又はスクリーニング時の生検で組織を採取
  • RECIST v1.1による測定可能病変がある
  • 主要臓器の機能が保たれている
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 脳転移があり治療を受けていない患者
  • 最近5年間に他の悪性腫瘍の既往歴がある患者
  • 妊娠中又は授乳中の女性
  • 自己免疫疾患の既往歴
  • 特発性肺線維症、器質化肺炎、薬物誘発性肺臓炎、特発性肺臓炎の既往歴、又はスクリーニング時の胸部CTによる活動性肺臓炎の所見がある患者
  • HIV検査陽性
  • 活動性B型肝炎又はC型肝炎
  • CD137アゴニスト、他の免疫チェックポイント阻害剤、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の投与歴がある患者
  • 4週間以内の高度の感染症
  • 重大な心血管系疾患
主要な評価項目 無増悪生存期間、全生存期間
主要な評価方法 RECIST v1.1、 観察
副次的な評価項目 奏効率等
副次的な評価方法 RECIST v1.1
予定試験期間 2015年6月1日~2019年2月1日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより