ステージ4または再発の非小細胞肺がんに対するニボルマブの治験

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治験名

PD-L1陽性の一次治療の4期または再発の非小細胞肺がんにおいてニボルマブと治験医師選択治療を比較する無作為化非盲検第3相試験

治験概要:

PD-L1陽性の一次治療の非小細胞肺がんに対する治験。ステージ4期または再発の患者さんが対象です。 ニボルマブと治験医師が選択する治療薬(シスプラチン・カルボプラチン・パクリタキセル・ペメトレキセド)を比較して、無増悪生存期間、全生存期間、奏効率、安全性などで評価する臨床試験です。 登録予定数は、623人。 フェーズは、3相臨床試験。 試験デザインは、無作為化非盲検試験。 比較する対象は 試験群:ニボルマブ 対照群:治験医師が選択する治療薬(シスプラチン・カルボプラチン・パクリタキセル・ペメトレキセド) 無増悪生存期間、全生存期間、奏効率、安全性 などで評価します。

疾患解説:非小細胞がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。 肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。 特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:ニボルマブ

ニボルマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:シスプラチン

シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。 薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

対照薬:カルボプラチン

カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。 薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。

対照薬:パクリタキセル

パクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。 細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。パクリタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。

対照薬:ペメトレキセド

ペメトレキセドは、細胞分裂に必要な葉酸に構造が類似している葉酸代謝拮抗薬です。 葉酸代謝拮抗薬の中でも、3つの酵素を阻害し主要な葉酸代謝酵素経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑え強い抗腫瘍効果を発揮します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0~1 の患者
  • ステージ4または再発の非小細胞肺がん
  • 測定可能病変がある患者
  • PD-L1陽性であった患者
  • 年齢:18歳以上
対象とならない人
  • 承認された分子標的療法で治療可能なEGFR遺伝子変異が陽性の患者
  • 承認された分子標的療法で治療可能なALK遺伝子転座が陽性の患者
  • 未治療の中枢神経系転移がある患者
  • 悪性腫瘍の既往がある患者
  • 活動性の自己免疫疾患を合併しているまたはその疑いがある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。

試験概要詳細

試験の名称 PD-L1陽性の一次治療のIV期又は再発の非小細胞肺がんにおいてnivolumabと治験医師選択治療を比較する無作為化非盲検第3相試験
試験の概要 PD-L1陽性のIV期又は再発の非小細胞肺がんにおいて、nivolumab単剤投与と治験医師選択治療の無増悪生存期間を独立画像判定委員会の判定に基づき比較すること
疾患名 PD-L1陽性のIV期又は再発の非小細胞肺がん
試験薬剤名 nivolumab
用法・用量 静脈内投与
試験薬剤名 Cisplatin、 Carboplatin、 Gemcitabine、 Pacritaxicel、 Pemetrexed
用法・用量 静脈内投与
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン 無作為化非盲検試験
目標症例数 623
適格基準
  • Performance Status(ECOG)が0~1 の患者
  • IV期又は再発の非小細胞肺がん
  • CT又はMRIにより、RECISTガイドライン1.1 版に定義される測定可能病変を有する患者
  • スクリーニング期間中に中央測定機関にて実施された免疫染色検査においてPD-L1陽性であった患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 承認された分子標的療法で治療可能なEGFR遺伝子変異が陽性の患者
  • 承認された分子標的療法で治療可能なALK遺伝子転座が陽性の患者 未治療の中枢神経系転移を有する患者
  • 悪性腫瘍の既往を有する患者
  • 活動性の自己免疫疾患を合併している又はその疑いがある患者
主要な評価項目 無増悪生存期間
主要な評価方法
副次的な評価項目 全生存期間、奏効率、安全性など
副次的な評価方法
予定試験期間 2014年8月1日~2019年9月1日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより