進展型小細胞肺がんに対するデュルバルマブとトレメリムマブの治験

治験名

進展型(ステージ4)小細胞肺がん患者に対する一次治療におけるデュルバルマブまたはデュルバルマブ+トレメリムマブと白金製剤ベースの化学療法との併用療法の有効性を検討する第3相無作為化非盲検多施設共同比較試験

治験概要:

ステージ4の小細胞肺がんに対する治験。1次治療として白金製剤をベースとする化学療法に適している患者さんが対象です。
デュルバルマブ+化学療法、デュルバルマブ+トレメリムマブ+化学療法と、化学療法を比較して有効性を評価する臨床試験です。
登録予定数は、988人。
フェーズは、3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、均等割り付け。
比較する対象は
試験群:デュルバルマブ+化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+エトポシド)
試験群:デュルバルマブ+トレメリムマブ+化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+エトポシド)
対照群:化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+エトポシド)
全生存期間、無増悪生存期間、奏効率 などで評価します。

疾患解説:小細胞がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。小細胞肺がんは、喫煙との関連、増殖が速い、転移しやすいという特徴があります。また、悪性度が高い一方で症状は現れにくいことから、進行するまで発見されないことも多くあります。
小細胞肺がんは、進行度によって「限局型」と「進展型」に分けられます。限局型は、最初にがんができた所(原発巣)と同じ側の肺に病巣が留まっている状態で、リンパ節への転移が反対側の縦隔および鎖骨上窩リンパ節までに限られていて、悪性胸水および心嚢水がみられない状態です。進展型は、限局型の範囲を超えてがんが進んでいる状態です。

治験薬:デュルバルマブ

デュルバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:トレメリムマブ

トレメリムマブは、抗CTLA-4抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
がん細胞を攻撃するT細胞の表面に発現するCTLA-4とT細胞を抑制するCD80/86が結合しないようにするのが抗CTLA-4抗体です。これにより、T細胞は活性化したままがん細胞に誘導されます。また、過剰な免疫応答にブレーキをかける制御性T細胞を誘導し、攻撃を抑制します。制御性T細胞に発現しているCTLA-4と抗CTLA-4抗体が結合することで排除することで、免疫抑制を解除します。
抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体との併用療法薬として効果が期待されています。

対照薬:カルボプラチン

カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。

対照薬:シスプラチン

シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

対照薬:エトポシド

エトポシドは、トポイソメラーゼというDNAの複製に必要な酵素を阻害する抗がん薬です。
細胞が増殖する場合、DNAの複製が必要なため、その複製に必要な酵素を阻害することで、細胞死を誘導します。
がん細胞では、活発な増殖が起こっているため、DNA複製に必要なトポイソメラーゼを阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。
トポイソメラーゼにはI型とII型があり、薬剤によってそれぞれ作用する型が分かれます。エトポシドは、トポイソメラーゼII型と結合して、切断されたDNAの再結合を阻害するタイプのお薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 進展型で、脳転移がある場合、無症候性である、または治療済みで治験薬投与開始前1か月以上にわたりステロイドおよび抗痙攣薬なしで安定していること
  • 一次治療として白金製剤をベースとする化学療法レジメンを受けるのに適している
  • Day 1の時点で12週間以上の生存が期待できる
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0~1 の患者
  • 過去に、治療用抗がんワクチンを除く、免疫介在療法を受けていない
  • 年齢:18歳以上130歳以下
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 全身療法を受ける前に胸部放射線療法による前治療歴がある患者または地固め胸部放射線療法を計画している
  • 自己免疫性の腫瘍随伴症候群で全身療法を必要とする、または腫瘍随伴症候群の悪化を示唆する臨床症候がある
  • 結核、B型肝炎、C型肝炎、またはヒト免疫不全ウイルスなどの活動性感染がある
  • 現在または過去に、自己免疫疾患または炎症性疾患がある
  • コントロール不良な併発疾患などがある。例えば間質性肺疾患などが挙げられるが、これらに限定されない

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称進展型(ステージIV)小細胞肺癌(SCLC)患者に対する一次治療におけるデュルバルマブ又はデュルバルマブ+トレメリムマブと白金製剤ベースの化学療法との併用療法の有効性を検討する第III相無作為化非盲検多施設共同比較試験
試験の概要本治験はED-SCLC患者に対する一次治療として、デュルバルマブ又はデュルバルマブ+トレメリムマブとEPによる併用療法後にデュルバルマブ又はデュルバルマブ+トレメリムマブによる維持療法を施行した場合の有効性及び安全性を、EP単独療法と比較して検討する第III相無作為化非盲検国際多施設共同比較試験である
疾患名進展型小細胞肺癌
試験薬剤名デュルバルマブ(遺伝子組換え)、トレメリムマブ(遺伝子組換え)、カルボプラチン、シスプラチン、エトポシド
用法・用量【デュルバルマブ(遺伝子組換え)】点滴静注にて3週間毎に12週間(4サイクル)、その後は4週間毎に病勢進行か中止基準に合致するまで投与する。【トレメリムマブ(遺伝子組換え)】点滴静注にて3週間毎に12週間(4サイクル)投与し、16週目に追加投与する。【カルボプラチン】第1群及び第2群では3週間毎に最大4サイクルまで、第3群では3週間毎に最大6サイクルまで投与する。【シスプラチン】第1群及び第2群では3週間毎に最大4サイクルまで、第3群では3週間毎に最大6サイクルまで投与する。【エトポシド】第1群及び第2群では3週間毎に最大4サイクルまで、第3群では3週間毎に最大6サイクルまで投与する
対照薬剤名カルボプラチン、シスプラチン、エトポシド
用法・用量【カルボプラチン】第1群及び第2群では3週間毎に最大4サイクルまで、第3群では3週間毎に最大6サイクルまで投与する。【シスプラチン】第1群及び第2群では3週間毎に最大4サイクルまで、第3群では3週間毎に最大6サイクルまで投与する。【エトポシド】第1群及び第2群では3週間毎に最大4サイクルまで、第3群では3週間毎に最大6サイクルまで投与する
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン無作為化、均等割り付け
目標症例数
適格基準
  • 組織学的又は細胞学的に確認された進展型で、脳転移がある場合、無症候性である、又は治療済みで治験薬投与開始前1カ月以上にわたりステロイド及び抗痙攣薬なしで安定していること
  • 一次治療として白金製剤をベースとする化学療法レジメンを受けるのに適している
  • Day 1の時点で12週間以上の生存が期待できる
  • 組入れ時に、ECOGが0又は1
  • 過去に、治療用抗癌ワクチンを除く、免疫介在療法を受けていない
  • 年齢:18歳以上130歳以下
  • 性別:両方
除外基準
  • 全身療法を受ける前に胸部放射線療法による前治療歴がある患者又は地固め胸部放射線療法を計画している(緩和治療としての胸部以外の放射線療法は受けていてもよい)
  • 自己免疫性の腫瘍随伴症候群(PNS)で全身療法を必要とする、又はPNSの悪化を示唆する臨床症候がある
  • 結核、B型肝炎、C型肝炎、又はヒト免疫不全ウイルス等の活動性感染がある
  • 現在又は過去に、自己免疫疾患又は炎症性疾患がある
  • コントロール不良な併発疾患等がある。例えば間質性肺疾患等が挙げられるが、これらに限定されない
主要な評価項目
主要な評価方法
副次的な評価項目
副次的な評価方法
予定試験期間

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより