ステージ4のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するペムブロリズマブ+化学療法併用の治験
治験の募集状況は、「医薬品情報データベース 臨床試験情報」ページでご確認ください。
治験名
KEYNOTE-789
TKI抵抗性EGFR遺伝子変異陽性の転移性非小細胞肺がん患者を対象としたペメトレキセドおよびプラチナ製剤にペムブロリズマブまたはプラセボを併用投与する二重盲検、無作為化、第3相試験治験概要:
EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞非扁平上皮がんに対する治験。ステージ4でEGFR-TKI治療後に進行した患者さんが対象です。
ペムブロリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン+シスプラチン併用とプラセボ+ペメトレキセド+カルボプラチン+シスプラチン併用を比較して、無増悪生存期間、全生存期間、奏効率、奏功期間、健康状態などで評価する臨床試験です。
登録予定数は、480人。
フェーズは、3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、並行群間、二重盲検試験。
比較する対象は
試験群:ペムブロリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン+シスプラチン併用
対照群:プラセボ+ペメトレキセド+カルボプラチン+シスプラチン併用
無増悪生存期間、全生存期間、奏効率、奏功期間、健康状態などで評価します。
疾患解説:非小細胞肺がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。
治験薬:ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:ペメトレキセド
ペメトレキセドは、細胞分裂に必要な葉酸に構造が類似している葉酸代謝拮抗薬です。
葉酸代謝拮抗薬の中でも、3つの酵素を阻害し主要な葉酸代謝酵素経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑え強い抗腫瘍効果を発揮します。
治験薬:カルボプラチン
カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。
治験薬:シスプラチン
シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。
主な治験参加条件
対象となる人 |
---|
|
対象とならない人 |
|
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータスPS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
スコア | 患者の状態 |
---|---|
0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | TKI抵抗性EGFR遺伝子変異陽性の転移性非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象としたペメトレキセド及びプラチナ製剤にMK-3475又はプラセボを併用投与する二重盲検、無作為化、第III相試験(KEYNOTE-789) |
試験の概要 | 本治験は、TKI抵抗性EGFR遺伝子変異陽性の転移性NSCLC(非扁平上皮癌)患者を対象に、MK-3475+ペメトレキセド+プラチナ製剤と生理食塩水プラセボ+ペメトレキセド+プラチナ製剤を比較し効果と安全性を評価する試験である。対象患者は1) T790M遺伝子変異陰性で、TKI(オシメルチニブを含む)が無効、2) T790M遺伝子変異陽性で、オシメルチニブ治療歴を有する、3) T790M遺伝子変異の有無にかかわらず、オシメルチニブによる初回治療が無効の患者を含む この試験の主要仮説はペムブロリズマブ+化学療法は生理食塩水プラセボ+化学療法よりも、1) RECIST 1.1に基づき盲検化された中央画像判定機関 が評価した無増悪生存期間(PFS) 、2) 全生存期間(OS)が優れていることである ペムブロリズマブ+化学療法のPFS又はOSが生理食塩水プラセボ+化学療法より優れていれば、本治験の主要目的は達成したとみなす |
疾患名 | 転移性NSCLC(非扁平上皮癌) |
試験薬剤名 | MK-3475、ペメトレキセド、カルボプラチン、シスプラチン |
用法・用量 | ペムブロリズマブ:200mgを各コース1日目に3週間間隔で静脈内投与、・ペメトレキセド:500mg/m2を3週間間隔で静脈内投与、・カルボプラチン:AUC5を3週間間隔(1~4コース)で静脈内投与、・シスプラチン:75mg/m2を3週間間隔(1~4コース)で静脈内投与 |
対照薬剤名 | プラセボ、ペメトレキセド、カルボプラチン、シスプラチン |
用法・用量 | プラセボ:200mgを各コース1日目に3週間間隔で静脈内投与、・ペメトレキセド:500mg/m2を3週間間隔で静脈内投与、・カルボプラチン:AUC5を3週間間隔(1~4コース)で静脈内投与、・シスプラチン:75mg/m2を3週間間隔(1~4コース)で静脈内投与 |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化、並行群間、二重盲検試験、治療 |
目標症例数 | 480 |
適格基準 |
|
除外基準 |
|
主要な評価項目 | 固形がんの治療効果判定のためのガイドライン1.1(RECIST 1.1)に基づき評価された、無増悪生存期間(PFS)。約32か月まで |
主要な評価方法 | PFSを評価する PFSは、無作為化から最初に記録された疾患進行(PD)又は原因を問わない死亡のうちいずれか早い方の時点までの期間とする。PFSは盲検化された中央画像判定機関(BICR)がRECIST1.1を用いて評価する。RECIST 1.1に基づく疾患進行はベースラインの標的病変における径和の増加(最小の径和と比較して、20%以上かつ5mm以上の増加)と定義される。注意:1つ以上の新病変の出現はPDとされる |
主要な評価項目 | 全生存期間(OS)。約59か月まで |
主要な評価方法 | OSを評価する OSは、無作為化から原因を問わない死亡が確認された時点までの期間として定義される。解析時点で死亡が確認されていない患者は、最終連絡が確認された日で打ち切りとする |
副次的な評価項目 | 奏効率(ORR)。約32か月まで |
副次的な評価方法 | ORRを評価する ORRは、RECIST 1.1に基づき評価された完全奏効(CR:すべての標的病変の消失)又は部分奏効(PR:標的病変の径和の少なくとも30%の減少)に達した患者の割合として定義される |
副次的な評価項目 | 奏効期間(DOR)。約32か月まで |
副次的な評価方法 | DORを評価する DORは、RECIST 1.1に基づきBICRが奏効を最初に確認した日から、PD又は原因を問わない死亡のうちいずれか早い方までの期間と定義する |
副次的な評価項目 | EORTC QLQ-C30の全般的健康状態(第29項目)及びQOL尺度(第30項目)のベースラインから12週後及び27週後の変化 |
副次的な評価方法 | EORTC QLQ-C30の全般的健康状態を評価する EORTC QLQ-C30は30の項目からなるがん患者特有のQOL評価法である |
副次的な評価項目 | 真の悪化までの時間(TTD)はEORTCにおける咳嗽、胸痛、又は呼吸困難について評価する |
副次的な評価方法 | TTDは、以下の複合評価項目について、ベースラインから2回目の10ポイント以上の悪化を確認した際に、最初に10ポイント以上の悪化を確認した時点とする。咳嗽[EORTCQLQ- Lung Cancer Module 13(LC13) 第1項目]、胸痛(EORTC QLQ-LC13 第10項目)、又は呼吸困難(EORTCQLQ-LC30 第8項目)。個々に4ポイント尺度で評価され(1=全くない;4=非常に多い)、低いスコアの方が評価がよい |
予定試験期間 | 2018年7月1日~2023年5月1日 |