未治療の進行非小細胞肺がんに対するエヌトレクチニブ、アテゾリズマブの治験

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治験名

B-FAST

治験薬を検討可能な体細胞遺伝子変異が血液検体より検出された、進行または転移性の非小細胞肺がん患者を対象とした様々な標的療法薬の有効性および安全性を評価する第2/3相多施設共同試験

治験概要:

未治療の進行非小細胞肺がんに対する治験。化学療法と放射線療法の併用が適さない切除不能なステージ3B、4の患者さんが対象です。 血液検体を使った次世代シーケンサーの解析で特定したバイオマーカーに基づき、化学療法を比較してエヌトレクチニブ、アテゾリズマブの有効性と安全性を評価する臨床試験です。 登録予定数は、580人。 フェーズは、2/3相臨床試験。 試験デザインは、ランダム化、多施設共同、多コホート、非盲検試験。 試験群:エヌトレクチニブ 試験群:アテゾリズマブ 対照群:ペメトレキセド+シスプラチンまたはカルボプラチン 対照群:ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチン 無増悪生存期間、全奏効率、全生存期間などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。 肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。 特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:エヌトレクチニブ

エヌトレクチニブは、ROS1融合タンパクおよびTRK(TRKA/TRKB/TRKC)融合タンパクを選択的に阻害する分子標的薬です。 ROS1融合遺伝子から合成されるROS1融合たんぱくや、NTRK融合遺伝子から合成されるTRK(A/B/C)融合たんぱくは、増殖因子がなくてもがん化の原因やがんの増殖を活性化させます。 エヌトレクチニブは、これらの融合たんぱくを阻害することで、抗腫瘍効果を発揮します。

治験薬:アテゾリズマブ

アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:ペメトレキセド

ペメトレキセドは、細胞分裂に必要な葉酸に構造が類似している葉酸代謝拮抗薬です。 葉酸代謝拮抗薬の中でも、3つの酵素を阻害し主要な葉酸代謝酵素経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑え強い抗腫瘍効果を発揮します。

対照薬:シスプラチン

シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。 薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

対照薬:カルボプラチン

カルボプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。 薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。カルボプラチンは、シスプラチンの構造を変えることで吐き気や腎臓への障害、神経障害が軽減された第2世代の白金製剤です。

対照薬:ゲムシタビン

ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。 細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。 ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。 ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 化学療法未治療の3bまたは4期の非小細胞肺がん
  • 化学療法と放射線療法の併用が適さない切除不能な 3b期非小細胞肺がんまたは4期非小細胞肺がん
  • 全身状態(Performance Status:PS )0~2
  • 測定可能病変がある
  • 直近の全身性または局所的癌治療から十分に回復している
  • 主要臓器の機能が保たれている
  • 余命12週間以上
  • 妊娠可能な女性患者および男性患者は、許容される避妊方法を使用する積極的意思があること
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 活動性または未治療の中枢神経系転移がある患者
  • 妊娠中または授乳中の女性
  • HIV検査陽性
  • 重大な心血管系疾患
  • 治験薬を投与した場合に許容できないリスクを患者にもたらす、または本治験で得られたデータの解釈に悪影響をおよぼす、併存病態または既往歴
  • 治験実施計画書の他の要求事項の遵守不能
  • 経口薬の嚥下不能
  • 転移または死亡リスクが極めて低いがんを除くスクリーニング前5年以内の他の悪性腫瘍の既往歴がある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称 治験薬を検討可能な体細胞遺伝子変異が血液検体より検出された、進行又は転移性の非小細胞肺癌患者を対象とした様々な標的療法薬の有効性及び安全性を評価する第II/III相多施設共同試験 (B-FAST: BLOOD-FIRST ASSAY SCREENING TRIAL)
試験の概要 未治療の進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象に、血液検体を用いて、二つの次世代シーケンシング(NGS)解析で特定した予測的バイオマーカーに基づいて選択された複数の治療法の有効性及び安全性を評価する
疾患名 非小細胞肺癌
試験薬剤名 アテゾリズマブ
用法・用量 1200mgを3週間隔で点滴静注
試験薬剤名 エヌトレクチニブ
用法・用量 600mgを1日1回で経口服用
対照薬剤名 カルボプラチン
用法・用量 (非扁平上皮型)AUC5又は6を21日間隔で4又は6サイクル点滴静注 (扁平上皮型)AUC5を21日間隔で4又は6サイクル点滴静注
対照薬剤名 シスプラチン
用法・用量 75mg/m^2を21日間隔で4又は6サイクル点滴静注
対照薬剤名 ペメトレキセド
用法・用量 (非扁平上皮型)500mg/m^2を21日間隔で4又は6サイクル点滴静注後に維持療法を行う
対照薬剤名 ゲムシタビン
用法・用量 (扁平上皮型) シスプラチン併用時: 1250mg/m^2 を21日サイクルの1日目と8日目に4又は6サイクル点滴静注 カルボプラチン併用時: 1000mg/m^2 を21日サイクルの1日目と8日目に4又は6サイクル点滴静注
試験のフェーズ フェーズ2/3(第2/3相臨床試験)
試験のデザイン ランダム化、多施設共同、多コホート、非盲検試験
目標症例数 300
適格基準
  • 化学療法未治療のIIIb又はIV期のNSCLC
  • 化学療法と放射線療法の併用が適さない切除不能な IIIb期(進行)NSCLC又はIV期(転移性)NSCLCの診断が組織学的又は細胞学的に確定していること
  • ECOG PS 0~2
  • RECIST v1.1による測定可能病変がある
  • 直近の全身性又は局所的癌治療から十分に回復していること
  • 主要臓器の機能が保たれている
  • 余命12週間以上
  • 妊娠可能な女性患者及び男性患者は、許容される避妊方法を使用する積極的意思があること
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 活動性又は未治療のCNS転移がある患者
  • 妊娠中又は授乳中の女性
  • HIV検査陽性
  • 重大な心血管系疾患
  • 治験薬を投与した場合に許容できないリスクを患者にもたらす、又は本治験で得られたデータの解釈に悪影響を及ぼす、併存病態又は既往歴
  • 治験実施計画書の他の要求事項の遵守不能
  • 経口薬の嚥下不能
  • 転移又は死亡リスクが極めて低い癌を除くスクリーニング前5年以内の他の悪性腫瘍の既往歴がある患者
主要な評価項目 有効性 / efficacy 検証的 / confirmatory 探索性 / exploratory
主要な評価方法 無増悪生存期間、全奏効率 RECIST v1.1
副次的な評価項目 安全性 / safety 有効性 / efficacy 探索性 / exploratory 薬物動態 / pharmacokinetics ファーマコゲノミクス / pharmacogenomics その他 / other
副次的な評価方法 全生存期間など 観察
予定試験期間 2017年12月1日~2022年1月1日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより