ステージ3b/4の非小細胞肺がんに対するアベルマブの治験

治験名

白金製剤を含む2剤併用療法後に進行が認められた非小細胞肺がんがある被験者を対象としたアベルマブとドセタキセルを比較する第3相非盲検多施設共同試験

治験概要:

白金製剤を含む2剤併用療法後に進行が認められた非小細胞肺がんに対する治験。ステージ3b/4または再発性の患者さんが対象です。 アベルマブとドセタキセルを比較して、全生存期間、無増悪生存期間、最良総合効果、QOLなどで評価する臨床試験です。 登録予定数は、792人。 フェーズは、3相臨床試験。 試験デザインは、無作為化、平行群間、非盲検。 試験群:アベルマブ 対照群:ドセタキセル 全生存期間、無増悪生存期間、最良総合効果、QOLなどで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。 肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。 特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:アベルマブ

アバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:ドセタキセル

ドセタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。 細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。ドセタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。 タキサン系は水に溶けにくいため、無水エタノール(アルコール)を含んだ液体に溶かして使用されますが、ドセタキセルはアルコールに溶かさずに使用できる薬もあります。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 治験関連手順を開始する前に、文書による同意が得られている
  • PD-L1の発現評価に適した、腫瘍組織のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックまたは未染色の腫瘍スライド7枚が利用可能
  • PD-L1発現状態の評価が可能と判定された腫瘍があり、ステージ3b/4または再発性の非小細胞肺がんで疾患の進行が認められている
  • 以下に定義する許容可能な治療を受けた後に疾患進行が認められている a. 転移性病変の治療として白金製剤を含む1コースの併用療法2サイクル以上を実施中または実施後に、疾患進行が認められた。初回併用療法の実施後に進行が認められなかった場合、継続維持療法または切り替え維持療法の治療歴は許容される。初回併用療法の実施後に進行が認められなかった場合、毒性管理のための治療中の薬剤切り替えも許容される または b. 局所進行性病変の治療として白金製剤を含む術後補助化学療法、術前補助化学療法、根治的化学療法、または化学放射線併用療法の完了後6か月以内に疾患進行が認められた 非扁平上皮非小細胞肺がんでEGFR変異の状態が不明の患者には、検査を実施する必要がある。EGFR変異陽性の腫瘍がある被験者は除外する
  • 全身状態(Performance Status:PS )0~1
  • 推定される余命が12週間超である
  • 十分な血液機能がある。十分な血液機能とは、白血球数; 2.5×109/Lで、好中球絶対数; 1.5×109/L、リンパ球数; 0.5×109/L、血小板数; 100×109/L、ヘモグロビン; 9g/dLであることと定義
  • 十分な肝機能がある。十分な肝機能とは、総ビリルビン; 1.5 × 基準値上限、かつASTおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ; 2.5×基準値上限と定義
  • 十分な腎機能がある。十分な腎機能とは、Cockcroft-Gault式で算出される推定クレアチニン・クリアランス>30mL/minと定義
  • 治験実施計画書に定められるその他の基準が適用される
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 扁平上皮がんの患者は除外する
  • 白金製剤を含む併用療法を実施中または実施後に疾患進行が認められ、全身性の抗癌治療が実施された
  • 非扁平上皮非小細胞肺がんでEGFR変異陽性および/またはALK再構成が認められる患者は不適格とする。ALKおよび/またはEGFR変異の状態が不明な患者には、スクリーニング検査を実施
  • PD-1、PD-L1または細胞傷害性Tリンパ球抗原4などのT細胞副調節蛋白をターゲットとする抗体/薬剤を用いた治療歴がある
  • 抗がん治療の併用が必要である
  • 無作為割付け前4週間以内に大手術を受けた、および/または患者が無作為割付け前4週間以内に受けた手術から十分に回復していない場合
  • 理由を問わず、免疫抑制剤による治療を受けている患者は、治験治療の開始前に当該薬剤を漸減中止すること
  • 脳転移があるすべての患者。ただし、下記の基準を満たす患者は適格とする a. 脳転移に対して局所治療が実施された、かつ b. 脳内の局在性病変に関連する神経学的症状が認められない
  • 免疫賦活薬の投与で悪化する可能性がある活動性の自己免疫疾患がある a. 免疫抑制治療を必要としない一型糖尿病、尋常性白斑、乾癬、甲状腺機能低下症、または甲状腺機能亢進症がある患者は適格 b. コルチコステロイドによるホルモン補充を必要とする患者のうち、コルチコステロイドがホルモン補充のみを目的として使用され、かつ1日の用量がプレドニゾン換算で10mg 以下の患者は適格とする c. 全身曝露量が最小となることが知られている投与経路でのステロイド投与は許容される
  • 治験実施計画書に定められるその他の基準が適用される

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。 ※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称 白金製剤を含む2剤併用療法後に進行が認められた非小細胞肺癌を有する被験者を対象としたavelumab(MSB0010718C)とドセタキセルを比較する第III相非盲検多施設共同試験
試験の概要 白金製剤を含む2剤併用療法後に進行が認められた非小細胞肺癌を有する被験者を対象としたavelumab(MSB0010718C)とドセタキセルを比較する第III相非盲検多施設共同試験
疾患名 非小細胞肺癌
試験薬剤名 Avelumab
用法・用量 10mg/kg の用量で1時間の点滴静注により2週間に1回投与する
対照薬剤名 ドセタキセル
用法・用量 75mg/m2を点滴静注により3週間に1回投与する
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン
目標症例数
適格基準
  • 治験関連手順(通常診療ではない手順)を開始する前に、文書による同意が得られている
  • 18歳以上の男性または女性である
  • PD-L1の発現評価に適した、腫瘍組織のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックまたは未染色の腫瘍スライド7枚が利用可能である
  • 中央検査機関の評価により、PD-L1発現状態の評価が可能と判定された腫瘍を有している。組織学的に確定診断されたステージIIIb/IV または再発性のNSCLCを有し、疾患の進行が認められている
  • 以下に定義する許容可能な治療を受けた後に疾患進行が認められている a. 転移性病変の治療として白金製剤を含む1コースの併用療法2サイクル以上を実施中または実施後に、疾患進行が認められた。初回併用療法の実施後に進行が認められなかった場合、継続維持療法(初回併用療法で使用した非白金製剤を用いた維持療法)または切り替え維持療法(初回併用療法と異なる薬剤を用いた維持療法)の治療歴は許容される。初回併用療法の実施後に進行が認められなかった場合、毒性管理のための治療中の薬剤切り替えも許容される または b. 局所進行性病変の治療として白金製剤を含む術後補助化学療法、術前補助化学療法、根治的化学療法、または化学放射線併用療法の完了後6ヵ月以内に疾患進行が認められた
  • 非扁平上皮NSCLCでEGFR変異の状態が不明の患者には、検査を実施する必要がある(治験実施医療機関での実施とするが、不可の場合は中央検査機関で実施)。EGFR変異陽性の腫瘍を有する被験者は除外する
  • 治験組入れ時のECOG PSが0~1 である
  • 推定される余命が12週間超である
  • 十分な血液機能を有する。十分な血液機能とは、白血球(WBC)数; 2.5×109/L で、好中球絶対数(ANC); 1.5×109/L、リンパ球数; 0.5×109/L、血小板数; 100×109/L、ヘモグロビン; 9g/dL(輸血の実施により血液機能が維持されている場合も可とする)であることと定義する
  • 十分な肝機能を有する。十分な肝機能とは、総ビリルビン; 1.5×基準値上限(ULN)、かつASTおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT); 2.5×ULNと定義する
  • 十分な腎機能を有する。十分な腎機能とは、Cockcroft-Gault式(または治験実施医療機関の標準的な方法)で算出される推定クレアチニン・クリアランス>30mL/minと定義する
  • 治験実施計画書に定められるその他の基準が適用される
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 米国では、組織学的に扁平上皮癌の患者は除外する
  • 白金製剤を含む併用療法を実施中または実施後に疾患進行が認められ、全身性の抗癌治療が実施された
  • 非扁平上皮NSCLCでEGFR変異陽性および/または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)再構成が認められる患者は不適格とする。ALKおよび/またはEGFR変異の状態が不明な患者には、スクリーニング検査を実施する(治験実施医療機関での実施とするが、不可の場合は中央検査機関で実施)
  • PD-1、PD-L1または細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)などのT細胞副調節蛋白(免疫チェックポイント)をターゲットとする抗体/薬剤を用いた治療歴がある
  • 抗癌治療の併用が必要である
  • 無作為割付け前4週間以内に大手術を受けた(理由は問わない。診断的生検は除く)、および/または患者が無作為割付け前4週間以内に受けた手術から十分に回復していない場合
  • 理由を問わず、免疫抑制剤(ステロイドなど)による治療を受けている患者は、治験治療の開始前に当該薬剤を漸減中止すること
  • 脳転移を有するすべての患者。ただし、下記の基準を満たす患者は適格とする a. 脳転移に対して局所治療が実施された、かつ b. 脳内の局在性病変に関連する神経学的症状が認められない
  • 免疫賦活薬の投与で悪化する可能性がある活動性の自己免疫疾患を有する a. 免疫抑制治療を必要としない一型糖尿病、尋常性白斑、乾癬、甲状腺機能低下症、または甲状腺機能亢進症を有する患者は適格とする b. コルチコステロイドによるホルモン補充を必要とする患者のうち、コルチコステロイドがホルモン補充のみを目的として使用され、かつ1日の用量がプレドニゾン換算で10mg以下の患者は適格とする c. 全身曝露量が最小となることが知られている投与経路でのステロイド投与は許容される
  • 急性アレルギー症状管理のため、全身性ステロイド薬を過去に投与した、または投与中の場合は、ステロイド薬の投与が14日間で終了する予定である、または14日間投与後の1日用量がプレドニゾン換算で10mg以下であると予測される場合に限り許容される
  • 治験実施計画書に定められるその他の基準が適用される
主要な評価項目 全生存期間
主要な評価方法 期間:最初の無作為割付から27ヶ月目まで
副次的な評価項目 無憎悪生存(PFS)期間
副次的な評価方法 期間:最初の無作為割付から27ヶ月目まで
副次的な評価項目 EQ-5Dにより評価される生活の質
副次的な評価方法 期間:最初の無作為割付から27ヶ月目まで
副次的な評価項目 欧州がん研究・治療機構(EORTC)のQLQ-C30により評価される生活の質
副次的な評価方法 期間:最初の無作為割付から27ヶ月目まで
副次的な評価項目 米国がん研究所(NCI)有害事象共通用語規準(CTCAE)のv4.03に基づく治療下で発現したすべての有害事象を発症した被験者数
副次的な評価方法 期間:最初の無作為割付から27ヶ月目まで
予定試験期間 2015年3月30日~2021年10月31日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより