ステージ3B/4の非小細胞肺がんに対するデュルバルマブ、トレメリムマブの治験

治験名

ARCTIC

白金製剤を用いた1レジメンの化学療法を含む最低2レジメンの全身療法による治療歴を有する、既知のEGFR TK活性化変異およびALK再配列を有さない局所進行または転移性非小細胞肺がん患者(ステージ3B-4)を対象とした、PD-L1発現に応じた単独療法またはトレメリムマブとの併用療法としてのデュルバルマブと標準的治療を比較する国際多施設共同第3相無作為化非盲検試験

治験概要:

局所進行または転移性のステージ3B/4の非小細胞肺がんに対する治験。白金製剤による化学療法を含む最低2レジメンの全身療法による治療歴のある患者さんが対象です。
デュルバルマブ単独、デュルバルマブ+トレメリムマブ併用とエルロチニブ+ビノレルビンまたはゲムシタビンを比較して、全生存期間、無増悪生存期間、奏効率、奏功期間などで評価する臨床試験です。
登録予定数は、597人。
フェーズは、3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、有効性評価、並行比較、非盲検。
試験群:デュルバルマブ単独
試験群:デュルバルマブ+トレメリムマブ併用
対照群:エルロチニブ+ビノレルビンまたはゲムシタビン
全生存期間、無増悪生存期間、奏効率、奏功期間などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:デュルバルマブ

デュルバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:トレメリムマブ

トレメリムマブは、抗CTLA-4抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
がん細胞を攻撃するT細胞の表面に発現するCTLA-4とT細胞を抑制するCD80/86が結合しないようにするのが抗CTLA-4抗体です。これにより、T細胞は活性化したままがん細胞に誘導されます。また、過剰な免疫応答にブレーキをかける制御性T細胞を誘導し、攻撃を抑制します。制御性T細胞に発現しているCTLA-4と抗CTLA-4抗体が結合することで排除することで、免疫抑制を解除します。
抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体との併用療法薬として効果が期待されています。

対照薬:エルロチニブ

エルロチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシキナーゼ(TKI)を標的とした分子標的薬です。
細胞の表面に発現しているEGFRと上皮成長因子(EGF)が結合することで、チロシンキナーゼという酵素が活性化しシグナルが伝達され細胞が増殖します。
EGFRに変異が起こり常に活性化していると無秩序な細胞の増殖が起きます。
エルロチニブは、EGFR-TKIを選択的に阻害することで、がん細胞の増殖を抑え抗腫瘍効果を発揮します。
EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対するEGFR-TKIは、現在4剤あります。ゲフィチニブ、エルロチニブは第1世代、アファチニブは第2世代、オシメルチニブは第3世代のEGFR-TKIです。

対照薬:ビノレルビン

ビノレルビンは、細胞分裂に必要な微小管という成分に作用して抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。微小管を構成するチュブリンとうたんぱく質の結合を阻害することで、がん細胞の増殖を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。

対照薬:ゲムシタビン

ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。 ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • ステージ3B/4の非小細胞肺がん
  • 白金製剤を用いた化学療法およびこの他に1レジメン以上の全身療法の両方を受けた後に、病勢の進行または再発を経験している
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0または1
  • 12週以上の生存が見込める
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLT4の投与歴がある
  • 脳転移または脊髄圧迫をきたした患者。無症候性で、治療されて状態が安定し、ステロイド剤および抗痙攣薬が不要な場合を除く
  • 現在または過去2年間に自己免疫疾患が確認された
  • コントロール不良な全身性疾患がある
  • 過去の抗がん療法によるグレード3以上の毒性が回復していない
  • EGFR TK活性化変異またはALK再配列を有することが確定している
  • 過去免疫療法薬の投与中にグレード3以上の何らかの免疫に関連した有害事象があるか、グレード2以上の疫に関連した有害事象が回復していない患者
  • 現在または過去に炎症性腸疾患が確認された

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称白金製剤を用いた1レジメンの化学療法を含む最低2レジメンの全身療法による治療歴を有する、既知のEGFR TK活性化変異及びALK再配列を有さない局所進行又は転移性非小細胞肺癌患者(ステージIIIB-IV)を対象とした、PD-L1発現に応じた単独療法又はtremelimumabとの併用療法としてのMEDI4736と標準的治療を比較する国際多施設共同第3相無作為化非盲検試験(ARCTIC)
試験の概要本試験は、PD-L1陽性腫瘍を有するNSCLC患者においてMEDI4736単独投与の有効性及び安全性を標準的治療と比較評価し、PD-L1陰性腫瘍を有するNSCLC患者においてMEDI4736 + tremelimumab併用投与の有効性及び安全性を標準的治療と比較評価する第3相多施設共同無作為化非盲検試験である。本治験には、白金製剤を用いた1レジメンの化学療法を含む最低2レジメンの全身療法によるNSCLC治療歴を有する局所進行又は転移性NSCLC患者(ステージIIIB-IV)の男女を組み入れる。上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ(TK)活性化変異及び未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)再配列を有することが既知の患者は本治験に不適格である(本治験では、プロスペクティブな検査は予定していない)。標準的治療:エルロチニブ、ゲムシタビン又はビノレルビン
疾患名非小細胞肺癌
試験薬剤名サブスタディA:MEDI4736、サブスタディB:MEDI4736 と tremelimumabの併用
用法・用量サブスタディA:MEDI4736 静脈内投与、サブスタディB:MEDI4736および tremelimumabを静脈内投与
対照薬剤名サブスタディA&B:ビノレルビン、ゲムシタビン、エルロチニブ
用法・用量サブスタディA&B:ビノレルビン:28日サイクルのDay 1、8、15及び22に30mg/m2を静脈内投与、ゲムシタビン:28日サイクルのDay 1、8、及び15に1000mg/m2を静脈内投与、エルロチニブ:150mgを1日1回経口投与
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン無作為化、有効性評価、並行比較、非盲検
目標症例数
適格基準
  • 組織学的又は細胞学的にNSCLCと診断されていて、ステージIIIB-IVである
  • 白金製剤を用いた化学療法及びこの他に1レジメン以上の全身療法の両方を受けた後に、病勢の進行又は再発を経験している
  • WHO PS 0又は1
  • 12週以上の生存が見込める
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLT4の投与歴がある
  • 脳転移又は脊髄圧迫をきたした患者。無症候性で、治療されて状態が安定し、ステロイド剤及び抗痙攣薬が不要な場合を除く
  • 現在又は過去2年間に自己免疫疾患が確認された
  • コントロール不良な全身性疾患を有する(活動性出血性素因、活動性B型肝炎やC型肝炎又はヒト免疫不全ウイルスを含む)
  • 過去の抗癌療法によるCTCAEグレード3以上の毒性が回復していない
  • EGFR TK活性化変異又はALK再配列を有することが確定している
  • 過去免疫療法薬の投与中にグレード3以上の何らかの免疫に関連した有害事象があるか、グレード2以上の疫に関連した有害事象が回復していない患者
  • 現在又は過去に炎症性腸疾患(例:クローン病、潰瘍性大腸炎)が確認された
主要な評価項目
主要な評価方法
副次的な評価項目
副次的な評価方法
予定試験期間

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより